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真由美の実家のリビング。

相変わらず、昭和の香りがするちゃぶ台と座布団。

ちょっと古いエアコンが、カタカタと音を立てている。


「……それで。歩いて、ここまで?」


真由美の父親が、眉をひそめたまま言う。


「はい…」


健斗はぺこりと頭を下げる。

どこか緊張していて、昔と変わらない姿勢。


父親はふぅ、とため息をついたあと、新聞をたたむ。


「ったく、あの時……あの卒業の日、ちゃんと連絡よこしてりゃ、話は違ってただろうに」


「……すみません」


「まぁ、事故だったってのは分かってるよ。でもな……」


父親は言葉を切り、ふと台所に目をやる。


すると、エプロン姿の母親が、小さくうなずいた。


「……でもな、今日来たってことは、そりゃもう、本気ってことだよな?」


「……はい」


健斗の声は小さいけど、まっすぐだった。


父親は腕を組んで、じっと健斗を見つめる。

しばらくの沈黙。


「……ったく、最後の最後に来るとか、ドラマかよ……」


ぼそっとつぶやいたあと、少しだけ口元がゆるんだ。


「まゆ、部屋の窓、ちゃんと閉めとけよ。夜冷えるからな」


「……うん」


それだけ言って、父親はふらっと庭に出ていった。


「……ごめんなさい、パパ不器用なの」


母親が苦笑いしながら、急須にお茶を注ぐ。


「でもね、あの子が、あなたが来るって、どれだけ嬉しかったか。……よかったね、間に合って」


健斗は頭を下げた。


「ありがとうございます……」


母親は笑った。


「まゆみを、よろしくね」


「……はい」


その声は、なぜだかすごく、温かかった。

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