⑱
ふたりが、静かに空を見上げていた。
言葉は少ないけれど、心は通じ合ってる。
ようやくたどり着いた再会。
それはたしかに、感動的な――
「……はいはい、ちょっと待ったー!」
どこからともなく響く、ちょっと間の抜けた声。
「……ん?」
「……うわ、出た」
真由美が振り返ると、
スウェット姿で走ってくる裕子。
しかも、ポテチの袋を抱えて。
「なに二人でいい雰囲気になってんのよ! こんな状況で!」
「いやいや、こんな状況だからこそ、ってやつだろ」
健斗がぼそっとつぶやく。
「いやいやいや! もう地球終わるってときにラブロマンス始めないでよ! 見てるこっちは胃もたれするわ!」
「別に見なくていいじゃん……」
「見ちゃうでしょ! 気になるでしょ! 長年のすれ違いが、最後の日にようやく交わるとか、
そんな漫画みたいな展開、傍観者の私には刺激強すぎるのよ!」
真由美は恥ずかしそうに笑いながら、
「……でも、来てくれてよかった」と、小さくつぶやく。
裕子はポテチをひとつまみしてから、
なんとなく空を見上げた。
「……ま、でも。最後に一緒にいられて、よかったね」
健斗と真由美は、顔を見合わせて、うなずく。
「……うん、ほんとに」
「……あたしがいなかったら、今頃キスしてたんじゃないの?」
「裕子!」
「やめろや!」
「ふふふ、妨害成功~。やっぱりラブコメにはツッコミ役が必要なのよ、うんうん」
裕子は満足げにポテチをもぐもぐしながら、
ふたりの横に並んだ。
まるで、最初からこうなる運命だったみたいに。