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「……あのさ、」


真由美がようやく口を開いた。

照れくさそうに、けどどこか嬉しそうに、ちょっと目をそらしながら。


「なんで……こんなとこでなにやってんのよ、バカ」


健斗は、笑った。

ずっと言えなかった気持ちが、もう言葉になる寸前だった。

たぶん、次に続くのは──


「おっ、告白タイムかぁ? どうもどうも、視聴者代表で〜す!」


――ガチャッ!!


裕子が、玄関のドアを元気よく開け放った。


「……っ!」


真由美が思いっきり肩を跳ねさせて、健斗の方を見ていた目線をブン投げて引っ込める。

健斗はというと、わかりやすくフリーズ。たぶん魂が一回抜けた。


「いや〜、いやらしいねぇ〜! 何年越しの再会? 甘酸っぱ〜い! 青春かよっ!」


「ちょ、ちょっと! なんで出てくんのよ裕子! いま、いちばんいいとこ……!」


「“いちばんいいとこ”だったから出てきたに決まってんじゃん。

こっちはこっちで、二人がモジモジやってんの、ずっと窓から見てたんですけどー?」


「うわ最悪、窓から……!?」


「健斗くんも、汗だくだし土だらけだし、

このままじゃ“好きです”の前に“お風呂どうぞ”って言われる流れだよ?」


「……ちょっと黙っててくれない?」


「いや〜、でもよかったね真由美。間に合ったじゃん、地球最後のロマンス!」


裕子はニヤニヤ笑って、ふたりの間にずかずか割って入る。

そして、おもむろに麦茶のピッチャーを突き出した。


「ほら、まず水分補給。感動の前に脱水で倒れられても困るから」


「……ありがと」


「……サンキュ」


健斗と真由美、同時にコップを受け取って、

少し顔を見合わせて、また照れてそらす。


「……青春だなぁ、まったく。

いいなぁ、私も告白されてぇなぁ……」


裕子はわざとらしく空を仰いで、

誰もいない空間に向かって両手を広げた。


「……あと数時間で地球なくなるのに、なんで私だけ、安定の“第三者ポジ”なの……」


そのぼやきに、ふたりが少しだけ吹き出す。

少しずつ、緊張がほどけていく。

少しずつ、ふたりの距離が近づいていく。


空は、ほんのりと赤みを帯びていた。

夕暮れか、あるいは──地球の終わりの色か。



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