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「……やっと、会えたのね」


窓の隙間からそっと覗くと、塀の下、見慣れたふたりの姿。

ああ、あれはもう完全に、恋愛ドラマのクライマックス。

よくあるじゃん。雨の中とか、駅のホームとかで走ってくるやつ。

でもこのふたり、塀の下って。もう、なんなの。


「……はぁ」


私は溜息をついた。

別に嫌なわけじゃないの。むしろ、よかったなって思ってる。

ずっとすれ違ってて、こじらせすぎて、どっちも意地っ張りで。

そのくせ、お互いのことばっか考えてるの、バレバレだったし。


「こっちが胃もたれするわ……青春かよ……」


それでも、よかったね、真由美。

ずっと待ってたもんね。こっそり手紙も残してたし、

卒業アルバムも何度も見返してたの、知ってるんだから。


健斗くんの方だって、

もうこっちに戻ってこないかと思ったのに。

山越えて来たとか、どんな執念よ。

もう、それだけで告白成功していいでしょって思う。


だけど。


「……なんで私は一人で、台所からそれを見守ってるんだろ」


麦茶のピッチャー持ったまま、足が止まったまま。


「ドラマなら、ここで“私もずっと好きだった”とか言って、

わたしまで報われる展開じゃないの?」


自分で言って、ちょっと笑った。


「ま、いいか」


だってあのふたり、

どんなラブレターよりも、どんな映画よりも、

ちゃんと「最後の日」に、想いを伝えあえたんだもん。


「……ったく、間に合いやがって」


口ではそう言いつつ、

私の目も、ちょっとにじんでいた。

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