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──高校生活って、もっと、映画みたいに進展するもんだと思ってた。


でも、あの人との関係は、始まりそうで始まらなくて。

話しかけてくれるでもなく、でもなんか…いつも、ちょっとだけ距離が近くて。

なに?って思うのに、なにも起きないまま、気がついたら三年間、終わってた。


出会いは──入学式の日の、バス停。


両親と一緒に行く予定だったけど、バスが満員で。

私だけがギリギリ乗れて、お母さんとお父さんは次のバス待ち。


そしたら、スーツのサラリーマンがひとり、ふいに降りた。

きっと会社に行きたくなかったんだと思う。

でも、そのおかげで、母が乗れて──

なんかその人がすごく大人に見えて、かっこよく見えて、思わず目で追ってた。


で、ふと、後ろを見ると、

知らない男の子が私の方をじーっと見てた。


──え、なに?って思ったけど、なんかその子もバスを降りて。

「俺、走ってくんで大丈夫っす」って言って、席を譲って。

お父さんが慌てて乗って、私は呆然とその男の子を見てた。


それが、健斗くん。


あの時から、ちょっと気になってた。


でも、あっちは私のことなんか、ぜんぜん気にしてなさそうで。

教室では静かで、でもノートとかきれいで、たまに先生にツッコまれてて──

なんか、面白いなって思ってた。


体育のバレーボールで、同じチームになったとき、

「真由美、ナイスサーブ」って言われて、

その日は眠れなかった。


でも、向こうからはそれ以上、なにもなかった。


だから、私もなにもしなかった。

できなかった。


──卒業の日、きっと来てくれるって思って、制服もきっちり着て、

第二ボタンも、もらえるかもなんて思って──駅で、待ってた。


私のほうを見つけた健斗くんが、

「真由美!」って言ってくれて、

私も「うん」って答えようとした、その時。


スマホが鳴って。

顔が、すごく変わって。

「ごめん」って、言って──走って、行っちゃった。


……なにが起きたのかも、わからなかった。


ただ、そのまま、何もなく卒業して、春になって、夏がきて、冬がきて、また春になって。

ずっと、思ってた。


「いつか、また」って。


でも、「また」って、いつなの?って、思いながら──

気づいたら、「地球が明日なくなる」って。

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