表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
12/24

──高校生活って、もっとこう、キラキラしてると思ってた。


でも実際は、キラキラってより、ジトッとしてたな。汗と部活とテストと、地味な日々。


で、俺はというと──ずっと、彼女の後ろを歩いてた。


真由美は、クラスの中ではちょっと不思議なポジションだった。

可愛いし、明るいし、でも騒がしくはなくて。

男子にモテるってほどでもなくて、でも誰かが密かに好きになってる、そんなタイプ。


俺はその「密かに」の中の一人。

いや、多分、けっこう重症なやつ。


入学してからずっと気になってて、でも気持ちを伝える勇気なんか、なかった。

昼休みに声をかけようと歩き出して、

彼女が女子グループに囲まれて笑ってるのを見て、そのまま通り過ぎる──

そんなの、週に三回くらいやってた。


ある日、忘れ物をしたって理由で、わざと教室に戻って、

彼女の机の横を通って──

「……なにしてんだ俺」ってひとりごちて帰った日もあった。


体育祭も、文化祭も、なにか一緒にできるチャンスはあったのに、

全部「タイミングを逃した」で終わってった。


──でも。


思えば、彼女も時々、俺の方を見てた気がする。


目が合って、すぐに逸らされたり、

廊下で何気なくすれ違ったあと、後ろから足音が止まったり。


もしかして──なんて、ちょっとだけ思ったりしてた。


卒業式の日。


もう、これがラストチャンスだって思って。

放課後、駅前で彼女を待った。


制服の第二ボタンも、誰かに取られる前に、自分で隠してた。

ちゃんと、渡せたらいいなって思って。


で、ようやく真由美が来て──

「真由美!」って声をかけた、その瞬間。


ポケットのスマホが鳴った。


見たことない番号だったけど、出た。

出てしまった。


病院からだった。


両親が、事故にあったって。


それだけで、もう何もかもが、吹き飛んだ。


真由美が何か言おうとしてたけど、聞こえなかった。

「ごめん」とだけ言って、その場を走り去った。


第二ボタンは、そのまま。

伝えたい言葉も、そのまま。


──そして、月日は流れて。

俺はあの日から、何も変えられずにいた。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ