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もう、どれだけ歩いたかもわからない。

たぶん、20キロ以上はあるいた。

足はガクガク、のどはカラカラ、何より腹が減ってた。


だけど、ようやく見覚えのある道が見えて、商店街を抜けて、神社の前を通って、

そして……懐かしい一軒家の前に、たどり着いた。


──真由美の家だ。


足が止まる。

体が、どっと重くなる。

もう、ここまで来たら、言うだけなんだ。

でも……どうしてだろう。インターホンを押せない。


「……さすがに、夜中の3時に押すのは非常識だよな」


ひとりで呟いて、苦笑した。

でも、もし明日が本当に「最後」だったら、非常識もクソもないんじゃないかとも思う。

思うけど……それでも、押せなかった。


この家の中で、真由美は寝てるんだろうか。

それとも起きて、ニュース見てるんだろうか。


いや、もしかしたら、もう避難してるのかも。

──そもそも、俺のことなんて、もう覚えてないかも。


ふと、塀の角に腰を下ろした。

地面の冷たさがジワジワと背中に染みてくる。


遠くのほうで、野良猫の鳴き声がした。

それ以外は、世界が止まったみたいに静かだった。


──ここまで来たのに、何もできない俺って、なんなんだろうな。


目を閉じて、空を仰いだ。


星が、昨日よりも、ずっとたくさん見える気がした。



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