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【連載版】悪役義妹になりまして  作者: 紗雪ロカ


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第24話

 ぽかんとした表情を向けられて、私は慌てたように両手を振りながら取り繕った。


「あ、いや、いきなりこんな事聞いちゃってごめんなさい。でも私ってほら、もと平民の成り上がり貴族じゃないですか? だけど魔力は普通にあるし、魔術の構築もちゃんとできる。だったら平民も広く受け入れて才能を見繕った方が、国の将来の為にもなるんじゃないかなーって思ってみたんです……が」


 レスノゥ様は相変わらずの無表情。だけどシャロちゃんは眉間に皺を作って険しい顔になっていってしまった。空気を悪くしたことに私は眉尻を下げながら謝る。


「ご、めんなさい。その差って何なんだろうってちょっと思っただけで……」

「まぁ、あなたは知らなくても仕方のないことね」


 ふぅと息をついたシャロちゃんが金髪ドリルをブォンッと払う。美しい緑の瞳をまっすぐに向けた彼女は、当たり前の事を言う様にこう続けた。


「この学園で平民が学べないのは当然の事ですわ」


 あまりにもキッパリと言い切る物だから、私は少なからずショックを受けてしまう。やっぱり、シャロちゃんもお父さんであるエングレース学園長と同じ考えなのかな。いやでも、ここから考えを改めさせられないだろうか。

 そんな『プランB』を実行しようとした時、腕を組んだ公爵令嬢はしなやかな手を上げながら思っていた理由とは少し違う説明をした。


「お父さまもいつも言っていますわ、むやみに誰も彼もと知識を与えれば、それを悪用する平民が出てきてもおかしくない。わたくしたちが操る魔術というのは、まだ歴史が浅くそこまでの法規制が整っていないのよ」

「そう、だからコントロールが効く貴族だけに留めている」


 貴族ならプライドやメンツといった責任がある分、国としていう事を聞かせやすい。ゆえにそこまで大それた真似は出来ない。と、続けるレスノゥ皇子の正論に私は目から鱗が落ちる感覚だった。


 た、確かにそうだ……。媒体にプログラムを書き込む魔術は組み合わせ次第ではその方向性をいかようにでも変えられる。時間差・遠隔化・増幅……。目の届く貴族ならばまだしも、全国民がその技術を知る機会を得たら、テロを企む悪党が増殖しても不思議じゃない。どうしてそこに気づかなかったんだろうと、自分の浅はかさにショックを受ける。


(じゃあ、アルヴィス様がやろうとしていることって……?)


 ドクンドクンと心が逸っていく。今現在も、監獄塔で開発が進められている物を思い浮かべた私はゾッとした。私がアイデアを出した魔力電池が実用化レベルになったら、魔力を持たない人だって簡単に発動できてしまうかもしれない……。

 青ざめているであろう私を気遣ったのか、レスノゥ様は心なしか優しい口調でこう続けた。


「本当は、君が言ったような国にできれば一番だと思う。でも今すぐは難しいかな」


 ***


 すぐにでも連絡を取ろうとしたのだけど、『ルヴィ先生』を演じているアルヴィス様はそこからぜんぜん捕まらなかった。もともと3年の臨時講師とかでこちらとは全く接点がないし、じゃあ休み時間にでも突撃しようとすると、若くてカッコいいという理由で女子生徒にキャアキャアと囲まれているのだ。うぐぐ……いつもはあっちから光メッセージが来てたけど、こちらからの連絡手段が無いなんて。


(そうだ!)


 だったら、私もあの魔術を覚えよう。そう思いついた私は、授業が終わるなりシャロちゃんに飛びついた。


「シャロちゃん、あれ教えて!」

「きゃあ!? ちょっと何よプリシラ、何の話?」


 怪訝な顔をする彼女に、光の魔素を固めてメッセージを飛ばす魔術のことを尋ねる。けれども柳眉を跳ね上げたシャロちゃんは意外な言葉を返してきた。


「なぁにそれ、そんな便利な魔術があるならわたくしが教えて欲しいぐらいですわ」

「えっ、まだ使えないんだ。じゃあ教えてくれそうな人はいる?」

「ちょっと、聞き捨てなりませんわね! わたくしの腕前がどうこうではなく、そんな魔術聞いたこともないという意味ですわよ」


 舐め腐ってんじゃないわ! と、憤慨した彼女に連れられて、私は図書室に行き『公共パブリック化された魔術目録』を見せて貰う。確かに、どんなに後ろまでめくってもあの事象を再現できそうな魔術は見当たらなかった。


「うそ……だって、この国の人たちは当たり前に使えるものだとばかり」


 この国に来たばかりの頃、あの魔術を教えてとアルヴィス様にせがんだことがあった。家族に近況を報せたかったのだけど、「読み返せる紙の方がいいんじゃないか?」と濁されてしまったのだ。それもそうかとその時は納得してそれっきりになっていた。

 グルグルと考え込んでいた私は、目録を棚に戻しながらシャロちゃんが続けた言葉に大きく目を見開いた。


「もしかしたら、個人開発の魔術かもしれませんわね。本当にそんなのがあるとしたらですけど」

「……」


 世間には出回っていない、あの魔術を使える人は開発者一人と言うことは、



 ――もう死んでしまいたい



 幼い頃に受け取ったあのメッセージが、頭の中で花火のようにパッと浮かび上がる。

 あの悲痛なメッセージは、アルヴィス様の叫び……だった?

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