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【連載版】悪役義妹になりまして  作者: 紗雪ロカ


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第18話

 それから3日……私はすり鉢状のホールの机にかけながら、気を抜くと頭がグラングランと揺れてしまいそうになるのを必死になって堪えていた。


(ねっむぅぅ……)


「――であるからして、この魔素を定義したのは偉大なる伯爵家のバーリントン氏であり、彼の生まれ育った環境はうんぬんかんぬん」


 教師せんせいの話す内容が理解不能の宇宙語に聞こえてくる。なんか……思ってたのと違う……。授業ではてっきり、魔術を使うに当たって役に立つ知識やテクニックとか教えてくれるのかと思ってたけど、朝から晩までひたすら『偉大なる魔術史における重要人物の経歴』を詰め込もうとしてくるのだ。

 いや、過去を学ぶのも大切だとは思うよ? でも、その人の無駄に長ったらしいフルネームだとか、いかに尊い血筋だとか、好きだった詩集とか食べ物って、魔術を組む際に何か役に立つの? 魔素がハンバーグ好きだったりする? ケチャップかけたら威力が増すの?


「では今日はここまで、次回は各属性を得意とした10人衆についてのテストを行いますからね、名門と呼ばれた彼らの家系図を広く予習しておくように」


 授業終わりの締めの言葉で、飛んでいた意識がハッと戻ってくる。う、うううん、軽んじるつもりはないけど、私とこちらの学園って致命的に相性悪いんじゃ……。貴族の子の為の学校だから、それぞれの家の繋がりをここで学ばせるって事なのかなぁ。


(いけない、そろそろ時間だ)


 勉強道具をまとめた私は、それらを鞄に突っ込んで立ち上がる。校舎を小走りで駆けていくと、いつのまにかタマが足元にポテッと現れていた。そのまま一直線に校舎前の庭まで出ると、少し離れた位置にある木の下のベンチを目指す。


「ごきげんようレスノゥ様。お隣いいですか?」


 今日もレスノゥ皇子は、小さな本を読みながらそこにいた。声をかけるとそこから視線をあげてコクリと少しだけ頷く。本を脇に置くと、いつものようにタマが膝に乗るのでモフモフと抱きしめ始める。私はその横にかけながら、明るく世間話を始めた。


「おかげさまでこの学園にもちょっとは慣れてきました。でももっと実践的な授業とかも積極的に受けてみたいって思ってるんですよ。先輩たちのように研究してみたいなぁ、なんて」

「うん、君も来年はがんばるといいよ」

(じゃなくてー!)


 あわよくば「そんなに意欲があるなら研究室に遊びに来る?」なんて展開を期待してたのだけど、皇子はそれよりも目の前の毛玉に夢中みたいだ。


「タマはどうしてこんなに可愛いんだろう。君もそう思わない?」

「え、えぇ、そうですね……」

『ふみゃぁー』


 実はこの時間を利用して、コンテスト出品に関する探りとかさりげなく尋ねてはいるのだけど、ぽやっとしてるように見えて案外ガードが固いのよね……。重要事項をポロリという訳には行かないようだ。ぐぬぬぬ……。


 ***


 そんな裏心満載で皇子に近づいていたからだろうか。ある日の授業後、私は空き教室に呼び出されてしまった。目の前には金髪縦ロールの超絶美人なご令嬢が居て、そのサイドには似たようなド高貴な令嬢が二人控えている。RPGなら両脇から倒さないといけないポジショニングだなぁ。なんてどうでもいい事をぼんやり考えてしまう。


「あなた、いったいどういうつもりですの?」

「へ?」


 胸の下で腕を組んで顎を反らした本体――もとい美人令嬢は、金髪ドリルをブォンッと払うと眉を吊り上げてズビシィッとこちらを指してきた。


「身分もわきまえず、婚約者のいる殿下にベタベタベタベタと……淑女として完全なるマナー違反ですわよ!!」


 ポカンとしていた私は、身分、とかマナー違反、とかを口の中で何回か転がしてみる。

 えっと、状況を彼女の立場から整理してみよう。魔法学園にとつぜん編入してきた男爵令嬢(元・平民設定)の私が、身分もわきまえず婚約者のいる皇子様に急接近、それにブチ切れて注意する金髪ドリルのご令嬢。あーうん、状況だけ抜き出すと、単語の端々がとっても聞き覚えのある既視感おやくそくのような……。


「……」


 たっぷり間を置いて間抜け面を晒した私は、青天の霹靂のようにその事実に気づいてしまった。


(乙女ゲー舞台の悪役令嬢じゃん!!?)


 えっ、うそ……まったくの無意識だった。げぇっ、私めっちゃピンクブロンドの主人公カラー! お手本みたいなお花畑ムーブしてなかった!? 悪役義妹の次は悪役ヒドインですか!? せっかく断罪回避したと思ったのにザマァが軽率にコンニチワしてくるイヤァァ!!


「ちがっ、私そんなつもりじゃ……」

「知らなかったでは済まされないわよ! シャーロット様がどれだけ傷ついたか分かっているの!?」


 ひたすらあわあわとするしか出来ない私は、詰め寄られてへたりと座り込んでしまう。って、ちょっと待って、このシチュエーションだと次に来るお約束ってまさか――、

 まさにそのタイミングで、教室の扉がガチャリと開けられた。


「どうかしましたか?」


 出たー! 攻略対象! 黒髪ロング眼鏡のイケメン教師! 知的で冷静に見えて実は熱いものを秘めてるのがお約束のパッケージ後方腕組みやれやれ枠ー!

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