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【連載版】悪役義妹になりまして  作者: 紗雪ロカ


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第16話

 早いもので、私がこの監獄研究塔にお世話になり始めてから2か月が経った。

 今日も地上階で、先輩たちと一緒に自由な発想で色々な研究を進めている。ダイニングテーブルで粘土をコネていた私は、新たなる発明品の構想を所長であるアルヴィス様に話した。


「次は全自動で撃退してくれる番犬を作ろうと思うんですよ、これさえあればどんな僻地の一人暮らしでも安心! 一家に一台ガードマン!」

「ふぅん番犬ね。……イヌ……?」


 ある程度形になったところで二人して眺める。ぶちゃあと潰れた丸い物体はどう見てもイヌには見えなくて、なんていうか……ネコ、そう、前世で見たマヌルネコに似てる。


「お前、造形センス……」

「起動!!!」

「押し切りやがった!」


 目覚めよ猛獣! と、魔力を流し込んだ瞬間、爆発したかのようにバーンと粘土がはじけ飛ぶ。悲鳴を上げながら尻もちをついた私は、そこに出現したまん丸な生き物を見て目を見開いた。


『ンなぁう』


 驚いたことに、石膏粘土で作ったぶちゃオブジェは、いつの間にかまんまるでモッフモフなマヌルネコに生まれ変わっていた。一声鳴いた毛玉は、とててと寄ってくると、倒れている私の膝に手をかけて後ろ足で立ち上がる。両脇に手を入れて抱え上げるとゴロゴロと喉を鳴らす振動が伝わってきた。え、えぇぇ? 生きてる??


「せ、成功です。愛玩用のホムンクルス『たま』……です」

「お前な……」


 おかしな事にそれから何度やっても生命体(?)の再現性は出せず、タマは一体限りの幻のホムンクルスとなってしまった。生みの親である私に懐いたのか、気づくとのっそりと足元に寄り添っていたりする。……ちょっと可愛い。


「しかし、この二月でなんて開発スピードだ」


 改めて塔の内部を見回したアルヴィス様は、感心したような呆れたような声で言った。

 それはそうだろう、塔の内部は隊列を組んだお掃除スライムロボが壁まで走って清潔に保ってくれてるし、水洗トイレに洗濯機も完備、厨房を覗けば熱量自在のオーブントースターが鎮座している。現代日本の家電を魔術で片っ端から再現していったらいつの間にかこんなことになっていたのだ。私はやる気満々で拳を握りしめる。


「まだこの塔から出せないのが残念ですね、早く世の中に出してみんなに使って欲しいです!」


 まぁ、その前に動力の問題をどうにかしないといけないんだけど……これらは電力の代わりに魔力で動いている。電池みたいに魔力を溜めて置ける魔石を作り出すのが次の課題かなぁ。でも魔力って放っておくと劣化して空気中に放散されちゃうのよね。難しい。

 その構想をあーだこーだと皇子と話し合う。一息ついたところで彼は問いかけてきた。


「生活に密着した魔術利用……コンテストにはこの辺りを出すのか?」

「はい、そのつもりです」


 上で話をしようと言われたので、階段脇に設置した垂直昇降機エレベーターに腰かけるとふわっと浮き上がる。アルヴィス様の部屋に入ると机を挟んで向かい合わせになり、いつものように作戦会議が始まった。


「生活魔術は発想としては斬新だが、ウケがどうだろうな。審査するのは普段、家事なんかしないような貴族連中だし」

「ダメですか?」


 完成した魔術レポートを見ていた皇子は、柳眉を上げながらこう返した。


「いや、金の匂いはするから喰いつきはいい、か? 対抗馬にもよるな……」

「そういえば、他にはどういった人たちが参加するんですか?」


 帝国主催の魔術コンテストには、誰でも出られる『総合部門』と、18歳以下限定の『新人部門』がある。後者は国のこれからを担う新星発掘の意味合いも強く、注目度が段違いだ。今回、私たちが狙うのもそちらになる。

 そこまで言った私は、なんとなくライバルが分かったような気がして答えを待たずに口を開く。


「ん? でも貴族にしか魔術を学ぶことは許されていないってなると、出て来るのは当然――」

「あぁ、ルーキーに出てくるのは、ほとんどがあちらの国営研究所の学生になるだろうな」


 振り向けば、塔の窓から煌びやかな学園が見える。わー、エリート養成学校と戦うなんて、ますます少年マンガみたい。

 窓枠に肘をついた私は、頭の中で去年の出品リスト資料をパラパラとめくってみた。


「去年の最優秀賞から考えると余裕で勝てそうですけど、念には念を入れたいですね。どうにかして情報を得られないでしょうか」


 何気なくそう言ってしまったのが運のツキだったのかもしれない。返事がないことを不思議に思って振り返った私は、アルヴィス様が何だか見覚えのある表情をしているのにカチ当たる。すなわち、何かを企んで紫の瞳を光らせるという、おなじみのあの表情だ。


「な、なんですか」

「いやなに、少し面白いことを思いついてな。よし、出かけてくる」


 思わず後ずさる私の肩をポンと叩き、その日はそれでお開きになる。



 数日後、再び私を招集した彼の手には、見覚えのある物が掲げられていた。


「そういえばプリシラは、あちらの学園で学びたいと言っていたな」

「え、いや、今さら別にっていうか――ねぇ、まさかとは思いますけどそれ」


 彼が持っていたもの……それは、白い厚手の生地で出来たワンピースだった。その上から羽織るボレロが貴族らしく優雅なデザイン。ぜひ着たい。着たかったよ。国営研究所ライバルのところの制服でさえなければ。


「手はずはこちらで整えた。転入してスパイとして潜り込んで来い」

「え、ええええ!?」

更新が不定期で申しわけありません…おのれ年度末

週末のまとまった時間で書き溜めできるよう頑張ります

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