表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
【連載版】悪役義妹になりまして  作者: 紗雪ロカ


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

12/48

第12話

前回のアンケートありがとうございます。

参考にしながらぼちぼち更新再開と行きたいと思います。

よろしくお願いします!

 馬車で揺られること約半日、朝に出発して帝国の首都に着いたのはお昼を少し過ぎた頃だった。

 見覚えのあるお城の前に、前回は暗くてよく見えなかった巨大な建物がドカンと立っている。馬車から身を乗り出した私はそれを輝く瞳で見上げた。


「わぁぁ、あれが有名な『フロストヴェイン魔術学園』! 今日からあそこで学べるんですね!」


 研究所は全体的に白を基調とした横長の建物で、4階建てのガラス張りが美しい宮殿のような見た目だ。ちょうどお昼時なのか、お揃いの白い制服を着た少年少女たちが、噴水付きの前庭に出てきている。いいなぁいいなぁ、私前世で学校にほとんど通えなかったしスクールライフって物に憧れがあるんだよね。オルコット家は家庭教師だったし。


「え、あれ?」


 ところが私たちを乗せた馬車はその建物を素通りし、お城をグルっと回り込むように移動していく。どういうこと? と、皇子の方を振り向くと、目があった彼はニヤリと笑って手を掲げた。


「あぁ、今のは俺の弟皇子が所長の学園。俺が所長で、お前が所属する研究所は『あっち』」


 その指さす先に見えてきた建物を見た私はカクンと口を開ける。ツタとか苔とか生えまくった今にも崩れそうなオンボロの塔が、城壁ギリギリの位置に建てられているのだ。なんかカラスとかギャアギャア飛び交ってるし、ホラー映画みたいに霞掛かってるあそこが、私の学び舎……?


「詐欺だー!!」

「失礼な、一言も国営の方に入れるとは言ってないだろうが」

「騙してる自覚はあるのかこの悪魔!」


 うっかり飛び出た罵倒も介さず、アルヴィス皇子(腹黒)は停車した馬車から優雅に降りる。ふざけているのか、ふり返ると乙女ゲーのスチルみたいなキラキラした絵面でエスコートの手をこちらに差し出した。


「そうさプリシラ、俺はお前を手に入れる為なら誰に嫌われても構わない……」

「本人を騙すのはもうヤンデレの域なのよ、訴えてやるっ」


 死んでもその手を借りるものかと憤慨しながら飛び降りる。クツクツと面白そうに笑いをかみ殺した彼を睨みつけてから、私たちは歩き出した。塔の周辺には民家もなく、不気味な植物が生える庭園などを横目に進んでいく。


「まぁ、お前にはこっちの方が合ってると思うけどな。弟の方は品行方正なエリート貴族だけを集めているが、俺のところは実力主義だ。自己責任、何でもあり、好きなことを好きなだけがモットー」

「ひぃっ!?」


 塔の入り口に手をかけた瞬間、2つ上の階の窓が凄まじい音を立てて内側から吹き飛んだ。ガラス片がバラバラと落ちてきて黒い煙が濛々と吹き出している。


「……まぁ、最近はやりすぎて睨まれてるけど」

「今からでもあっちに転入って出来ません?」


 ええい、ままよ! こんなでも中は予想外に綺麗……だったら良かったなぁ……どう見ても汚部屋ですありがとうございます。

 地上階は中央に20人くらい座れそうな巨大テーブルが置いてあるんだけど、あちこちにカラフルな謎の液体が飛び散ってるし、うず高く積まれた本がそこら中にタワーinタワーを形成してる。なんかヘドロみたいなのが床にこびりついてるしぃ……。

 円形の塔の内部は、地上から2・3・4階が吹き抜けになっているようで、各階の四方に扉が付いている。おそるおそるくっついて進んでいくと、皇子が上階に向かって呼びかけた。


「みんな、ちょっといいか」


 しばらくすると、その内のいくつかがガチャリと開いて中の住人が顔を出す。だけど皆一様に黒いローブを目深にかぶっていて私はギョッとしてしまう。


「今日から新しく所属することになった新人だ」

「ぷ、プリシラです。よろしくお願いします!」


「……」「……」「…………」


 緊張しながら挨拶する私に視線が突き刺さる。しばらくすると皆ササッと引っ込んでしまった。な、なんなのぉ?


「悪いな、みんな魔素と喋り出すような変人ばかりなんだ」

「えぇぇ……」


 困惑しながら置いていたトランクを持ち上げた私は、ぬちょぉと何かの粘液が糸を引くのを見てぞわわと総毛立つ。これからここで生活しろってこと? この、豚小屋の方がなんぼかマシな腐海の海で……?


「ぬ……」

「ぬ?」

「布! ありったけの布と、ホウキと! バケツと水を下さい!! 掃除させてぇ!!」



 その後、城に報告に行くと逃げたアホ……アルヴィス皇子から道具一式を受け取り、私は怒りの清掃をしていた。


(まったくもうっ、私はっ、メイドとしてっ、来たんじゃなぁぁいっ!!)


 心の中で叫びながら、黒いベトベトにモップを叩きつける。とりあえず散乱してる本を寄せて、ホウキで掃いて、水拭きしてるんだけど、とてもじゃないけど手に負えない。がーっ!

 泣きそうになりながら一息ついたその時、ふと視線を感じて顔を上げる。あんまり階下でバタバタ音を立てていたからか、研究員の何人かが階段の手すりの影から3人、こちらの様子を伺っているようだ。

 あのねぇ、汚してるのはあなた達でしょ? よくこんな掃きだめで生活できますね――と、文句を言いかけるのだけど踏みとどまる。いけないいけない。私はあくまで後輩で今日入ったばかりの新人。かわいく、謙虚に……そうだ!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
いや少なくともべたつくようなとこで研究とかしてる奴らがまともな結果出せるとは(不確定要素が発生するため再現性がない
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ