第11話
「……」
神秘的な紫の瞳をまっすぐにこちらに向けていた殿下は、ふいにフッと笑うとこう言った。
「気にするな、俺も欲しい物があっただけだ」
「?」
何が欲しかったんだろう。お姉さまなら正直ちょっと厳しいような。二人が顔を合わせると笑顔の『圧』オーラでお互いバチバチに牽制し出すのよね。あぁ、正史ならカップルだったのに運命を変えてしまった罪悪感。申し訳ない……。
(でもほら、私が読んだ原作はお姉さまが覚醒して終わりの短編だったし、ここからはフリーシナリオになったんだと思おう)
「めでたしめでたし」の後だって、語られないだけでその世界は続いていくはずだ。
王子様に見初められたシンデレラは、王妃教育に嫌気が差して逃げ出した先で魔法使いと結ばれたかもしれない。
死体趣味の王子にドン引きした白雪姫が、小人たちと蜂起して一大地下帝国を築き上げたかもしれない。
足を貰って広い地上を知った人魚姫は、世界を旅したかもしれない。
つまりはどんな登場人物にだって、作者の手を離れて自由に生きる権利があると思うのだ。この目の前の皇子がお姉さまじゃない別の誰かと恋に落ちるとかね。まぁ、こうなった要因は私にあるわけだし、
「罪滅ぼしじゃないですけど、恋人探しでしたらいつでも協力しますからね」
「……言ったな?」
なぜか少しだけ声色が変わった気がする。だけど私は深く考えずに元気に返した。
「もちろん! どんな子がタイプですか?」
気になったので両手を握りしめて前のめりになる。そんな私をジッと見つめていた皇子は、その端正な顔立ちを崩さず大真面目にこう返してきた。
「家族想いで、愛嬌があって、才能に溢れていて」
「うんうん」
「抱きしめたら折れそうなほど華奢だけど、あざといポーズが似合う巨乳な美少女」
「…………」
それを聞いた私はしばし静止した後、狭い籠の中をじりっと後ずさった。
「欲望に忠実すぎません? どこにいるんですか、そんな男の夢みたいなヘイト女子」
「……そう来たか」
なぜかこめかみを押さえたアルヴィス殿下は、口の端を引きつらせて目を伏せてしまう。どういう意味かと首を傾げていると、彼は「まぁいいか」と小さく呟きこちらに手を差し出した。
「これからよろしくな、プリシラ」
「はい! お世話になります」
何の疑いもなく握り返した私は気づいていなかった。
これから帝国側で待ち受けているのはキラキラした優雅な研究所生活なんかじゃなくて、とんでもなくバタバタで、たくさんの人との出会いがあって、病院のベッドの上に居た時とは比べ物にならないくらいワクワクする日々だという事を。
「ところで鏡の数は足りてるか?」
「何ですか急に」
第1章 終わり
ここまでお読みいただきありがとうございます。
ひとまず読み切り版までの範囲は終えられましたので1章という形で一区切りです。
ここからは帝国側入りして、あちらの陰謀だかに巻き込まれていく予定です。予定。未定。
チラッと見えたキーワードとしては「ヲタサーの姫志望」「聖女セコm」「着脱式金髪ドリル」「かみたまぬるねこ」…なぁにこれぇ。どれだけ拾えるかは謎です。
あ、せっかくリアクション機能ができたのでこの話でアンケート取ってみても良いですか?
Q,この話に求めるものは?
【展開の明るさ】→ニッコリ絵文字
【世直し・痛快】→サムズアップ絵文字
【ギャグ・コメディ】→爆笑絵文字
【ほっこり・感動】→号泣絵文字
【ラブロマンス】→照れ絵文字
※上より順にリアクション左からにそれぞれ対応
(後書きに絵文字NGでした。分かりづらくてすみません!)
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次回更新は少しだけ書き溜めてからになりますが、そう遅くはならないよう頑張ります。
よろしければブクマしてお待ちくださいませ、引き続きよろしくお願いします!(礼)




