第九話 Wait & See 〜リスク〜 都会の夜
最近、ネオTO京の夜には、エンジン付きのウイングスーツを着用て、ビルの谷間を滑空する飛行暴走族が横行していた。
もちろん、これは違法行為だ。
飛行暴走族のチームは年々、凶悪化していて、チーム同士の抗争や麻薬汚染が社会問題となっている。
この夜も、俺が居酒屋『甚兵衛』で飲んでいると、上空から飛行暴走族の爆音が聞こえてきた。
「まったく、うるせえな」
「ケーサツが捕まえろよ」
店の客席では、酔った客が文句を言っている。
そこへ、ケーサツの夏平美雪刑事が、眼鏡をかけた男を連れて入って来た。
「あっ、刑事さんじゃないですか。そちらは彼氏さんですか?」
「違うわよ。彼は同僚」
そう言いながら、夏平刑事は当然のように俺のテーブルに相席する。そし俺に向かって、
「彼は今度、飛行暴走族に潜入捜査をするのよ」
その夏平刑事の言葉を聞いた、眼鏡の同僚刑事は、
「おいおい、夏平君、部外者に、そんな事を話しても大丈夫なのか」
「この人なら大丈夫よ。私の協力者で命の恩人でもあるから」
「そうでしたか。私は槇町といいます。これからは、よろしく」
と、眼鏡の同僚刑事・槇町氏は俺に握手を求めてきた。
その後、三人で飲みながら、少し聞いた話によると、槇町刑事が潜入するのは『蛇刃座刃斗』という飛行暴走族らしい。
蛇刃座刃斗のメンバーは僅か十数名だが、このチームは凶悪な武闘派で、最近は麻薬の売買に手を出しているという。
そして、その後の槇町刑事のことだが、夏平刑事の話によれば、
蛇刃座刃斗に潜入した槇町刑事は、命知らずの飛行技術で、チームのメンバーから一目置かれる存在になっていたらしい。
しかし、潜入捜査官であることがバレて、集団リンチを受け、死亡したという。
その事件で、警察に自首してきたのは、蛇刃座刃斗の手下の未成年三人組だった。
「身代わりの自首に決まっているけど、上層部と検察は、これで終わりに、するつもりなのよ」
夏平刑事は悔しそうな表情で、
「最近の警察は腐っているわ」
と、吐き捨てる。
俺は、その話を聞いた日の夜。繁華街のビルの屋上に忍び込んで、蛇刃座刃斗の暴走飛行を待った。
情報屋の話によると、この近辺が奴らの飛行ルートらしい。
そして、しばらく待つと夜空に爆音が響き、エンジン付きのウイングスーツの集団が飛行してきた。
その先頭を飛ぶ一機は、ヘビの旗をなびかせている。蛇刃座刃斗だ。数は十二機。
「ちょうど、いい」
俺は大型のリボルバー拳銃を構えて、
ドオォン!
ドオォン!
ドオォン!
ドオォン!
ドオォン!
ドオォン!
まずは六機を打ち落とし、素早くリロードした。
残った半数は驚いた様子で、右や左へ進路を変えたが、
ドオォン!
ドオォン!
ドオォン!
ドオォン!
ドオォン!
ドオォン!
アッサリと全機を撃ち落とす。
翌日、俺が喫茶店で朝食を食べていると、夏平刑事が姿を現した。
「あなたね、槇町さんの仇を討ってくれたのは」
「なんの事でしょう。俺は芸能プロダクションのバイトですよ」
コーヒーを飲みながら、俺は、いつものようにトボけて笑った。