第一話 FINAL DISTANCE 非合法ボディガード
お久しぶりです。akiyasuです。久々に投稿を始めました。今後も、よろしくお願いします。
20XX年。ネオTO京。この大都会には超高層ビルが乱立していた。だが、華やかな街に暮らす人々は、それほど幸せではない。
長引く不況の影響でもあるが、社会は殺伐としていて、皆、心に余裕がないのだ。誰もが不平不満を抱えて生きていた。
しかし、そんな時代の中で俺は、アイドルグループ『歌ダ41』の非合法ボディガードをしている。
殺伐とした世相を反映しているのか、最近のアイドルファンには危ない奴が多かった。そんな奴らを手荒く排除するのが、非合法ボディガードの仕事である。
この日も、新曲発売のイベント会場の周辺を見回りしていると、
「ちょっと、そこの、あなた」
と、女性刑事の夏平美雪が声を掛けてきた。
「俺?」
「そう、あなたよ。先週、O阪でストーカー男を射殺したのは、あなたでしょう」
夏平刑事は黒髪のロングヘアを風になびかせ、まるで女優のような美人だが、職業柄、かなり気が強い。
「何を、おっしゃいますか。俺は芸能プロダクションのバイトですよ」
俺は一応、表向きの身分を騙ってトボけて見せるが、
「そんな嘘八百で、私を欺けると思っているの」
「嘘じゃないですよ。プロダクションに問い合わせて下さい」
「どうせプロダクションも、グルなんでしょう」
夏平刑事は俺を、かなり疑っているようだ。しかし証拠は掴まれていない。
「いつか私が、あなたを逮捕してあげるから」
「またまた、ご冗談を」
「そうやって、ヘラヘラしていられるのも、今のうちよ」
夏平刑事は、そう言いながら俺に背を向けて立ち去ったが、それにしても『Eい女』だ。
その直後、スマホに着信があり、俺は遠くへと去り行く夏平刑事の尻を眺めながら、応答した。
「はい、もしもし」
「旦那、情報です」
その電話は情報屋からの密告だった。
「黒覆面が四人、近くのスーパーの屋上の駐車場にいますぜ。白の乗用車でナンバーは……」
黒覆面とはアイドルに危害を加えることを目的とした愉快犯のグループで、
奴らは爆破事件など、かなり凶悪な犯行も犯してきた。俺は大急ぎで、その駐車場へと走る。
「よりによって、黒覆面かよ」
スーパーの屋上の駐車場に到着すると、俺は白の乗用車を探した。
「あった。あれか!」
見つけた白い車の車内には、黒い覆面を被った四人が下を向いて、何やらゴソゴソとしている。
「奴らは爆弾でもイジッているのか?」
こうなれば詳しく確認する必要はない。俺は大型のリボルバー拳銃を構え、
「疑わしきは殺せだ」
と、照門と照星を合わせ、狙いを定めた。
「俺の銃弾に倫理はない」
ドオォン!
ドオォン!
ドオォン!
ドオォン!
四連射。車の窓ガラスが飛び散り、車内の黒覆面の頭が吹き飛んだ。さらに、残り二発を、
ドオォン!
ドオォン!
車体に、ぶち込む。
ドゴオォーン!
ド派手に爆発炎上する白い乗用車。すぐにでも夏平刑事が、大勢の警察官を連れて駆けつけて来るだろう。
早く逃げなければならない。
俺も黒覆面も、警察から見たら同じ犯罪者だ。これが非合法に生きるということだろう。
社会との最後の距離を感じながら、俺は、その場を立ち去った。
第一話を最後まで読んで下さり、ありがとうございました。第二話も、よろしくお願いします。