2話 『quiz』
「それでね!うちの猫すっごく可愛くてさ!見て見て!これ!!可愛いでしょ〜♡………」
JKに手を引かれ、一方的な猫トークに相槌を打ちながら五分ほど歩くと、見覚えのある緑色の看板が目に入った。
『東武ハイスクール』
ここが現実なのか異世界なのか、ますます検討がつかなくなってきた…。
JKが、また喋る。
「今日ね、東大卒の有名な休耕地先生っていう英語のすっごい先生が、公開授業をこの校舎でしてくれるらしいからすっごく私気になってて!
でもわたしっておバカさんだから…一人で行くのはちょっと怖くて…
それでモヤモヤしながら帰宅道を歩いていたら偶然見知らぬ制服を着た君を見つけたってわけ!」
ん?どうやら俺は、制服を着ているらしいな、、
異世界転生ではなく、今流行りのタイムリープなのか?
、、、
いや、ただの21歳の哀れなコスプレだ。
先程までは頭痛もあり、視界もぼやけていたのであまり違和感は無かったが…
コスプレをし、うまいこと女子高生と共に21歳が歩いているこの現状に気づいた途端、俺は流石に罪悪感で少しだけ胸が締め付けられた。
「わたしそういえばあなたの名前聞いてなかった!!!
じゃあ私から!
はーい自己紹介しまーす!
私の名前は安城ヒナタ!ヒナタって呼んで!
ところで、君は?」
マシンガントークからの急な不意打ちはきつい…
「わ、私ですか…あ、梅屋敷拓也と申します…」
「珍しい苗字だね!
うめうめくん!これからよろしくね!」
これが最近の若者か…
瞬時にあだ名をつけてなんの違和感も持たずに呼ぶなんて、、、なかなかこの子はヒエラルキーが高そうだ、機嫌を逆撫でないようにしよう…
などと、妄想をふくらませていたが、長年の浪人生活はやはり毒だ、自然に足が東武ゼミナールの自動ドアを超えていた。
ここで、図らずとも俺は初めて1人の女性を先導し、少しだけ自分が誇らしく思えた…
結局男なんて、いつでも正直なのである。
などと思いながら、くたびれた受付の40代の男性に言われるがまま、おれは体験授業を受けるための記載事項を埋めていった。
やけに慣れた様子で俺が受付を済ますものだから、少しくらいヒナタさんにはどやされるか、と思っていた。
だが、彼女はどうやら緊張でそれどころでは無いようだ!
ずっとソワソワしながら髪の毛を触っている。
---流石に"この地"での立ち回り、スマートさでは俺に軍配が上がったか。
後ろに生徒が来ていたので、そうこうしているわけにもいかず俺は口を開く。
「4階の403号室、授業は高校と違って90分だから今のうちにトイレ等を済ませておくといい…………………ですよ。」
なぜ語尾が気持ち悪いのだろうか、俺は。
「では用を足してきますので、ヒナタさんは教室でお待ちください」
恥ずかしさのあまりヒナタさんを突き放してしまい俺は内心焦っていた。が…
「待って…私もトイレ行くから…一緒に4階上がろ…」
………不意に腕を掴み、そんなことを言うなんてもう列記とした犯罪じゃないか!!!!!!
震えが止まらない。
女性の肌というものに、母親を除いて記憶の中では一切触れてこなかった俺だが、今日はじめて、まさか女性側から接触されることがあるとは…
落ち着け…落ち着け…自分に言い聞かせながら用を済ませ、手を洗う。
そういえば、だいぶ体調も落ち着いてきたな…
そうだ、女性の前である、手を洗おう。
そうした流れで、ふと洗面台にある鏡に目をやる。
「うわぁぁあ!!!」
そこには綺麗な二重とロシア人のような鼻、更には育ちの良さそうな歯が並び、小さな顔と美しい肌を兼ね備えた、見た事もないレベルの高身長イケメンがいた。
更には、あろう事か、高校生クイズでおなじみの、千葉県内トップクラスの進学校の制服を身にまとっていた!!!
おぉ…この世界のゲームマスターよ…
あまりにも"悪ふざけ"が過ぎるだろ…
それとも、3日限定イケメンコースで俺を"からかって"いるのか…?
わけがわからないが、ここは俺の聖地東武ハイスクールだ。
そして俺の偏差値はおそらく当時のままだ。
おまけに、とびきりの容姿までついてきやがる…
この状況、、、わけわからないだろ………
ええいここまで来たのなら仕方が無い。。。
まずはチュートリアルだ!
手慣らしに"東大卒"の休耕地?とやらを、あっと言わせてやろうじゃないか!!!!!
俺は何故か、3年ぶりに心から笑えた気がした。
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