第一章
ここは『神と人外』だけが共存する世界。
これは、とある人外の青年が織りなす、少し並外れた物語。
「はっ、はっ、はあっ…。」
「痛い…。」
転んですりむけた膝が痛む。
この痛みだけで、生きていることを悟り続けていた。
「あいつじゃないか?!撃ち殺せ!!」
どくどくと早くなる心臓を抑えながら必死になって息を切らした。
村がどうなっていようと、決して振り向かずに走り続けて。
明かりもない深夜の森林をかき分けて進んだ。
そのせいか、どこまでも暗闇が続いているかのようにも見えてしまった。
ただ、その恐怖だけが感覚として今も残っている。
あれから、いつほど経っただろうか。
死にたくない一心で、気付けば隣の村まで逃げていた。
幸い、隣の村にはまだ僕の情報が行き渡っていないようで、一安心…とはならないが…。
どうにか心を落ち着かせるために、頭の中で出来事の整理をしようか。
まず、自分の村で何者かが複数人を殺害した事件が起きた。
ただ、全員僕と関わりがある人物だったため、僕が何かしらを妬んで殺害をしたとして疑われた。
そして、関わりのある人物に加えて僕以外の家族も全員殺されてしまい、
関わりがある人物や家族を殺したとして、僕の命は村中から狙われ、何とか村から逃げてきた。
…と、いうことが今までの事の顛末なんだが…。
これも、全て真犯人の思惑通り、ということなのだろうか。
…そういえば、僕の友達は大丈夫なのだろうか?
僕と仲が良かったから、酷いことをされてないといいけど…。
と、その時、女の子の声がした。
「こんにちは!あんた、エボルシオン種よね?
これまた珍しいの発見!」
…第二章へ続く…