12.花の館
「ごきげんよう、はじめまして。現代に生きる星霊姫たち。ビシソワーズ家が末子、スフレです」
女性はドレスの裾を持ちちょこんとカーテシーをする。礼儀正しいこと。こういう館の主たちというならビシソワーズ家は礼儀だけは正しいかもしれない。ただ私とは絶望的に合わないだろうけど。礼儀正しかろうがなんだろうがいきなり世界滅ぼそうとする奴らなんて色々とお断りだ。
「良かった、最初に私の所へ来てくれて。姉様が開けた入口だとここ以外の館に着いてしまう可能性もあったから。やっぱり最後のダンスパーティーでお会いできるとはいってもご挨拶はしたいですから……ね?」
「ここ以外にも着けるルートあったのね。多分ほぼ真っ直ぐ歩いてきたつもりなんだけど」
「あら、女王は案外素直な人ですね。もちろん真っ直ぐ来ればここに到着しますよ。ひねくれ者なら別の館に着いたかもしれませんがね……ふふっ」
「私女王って呼ばれるの好きじゃない。女王だったのはシャトランであって今の私じゃないもの」
「あら、私たちにしてみたら同じですよ……? 不死鳥の魂を持つ創造神の愛し仔。それだけで女王と呼ぶには十分です」
スフレはニコニコと笑っている。底が見えなくてなんだか不気味だ。
というかこの部屋……やけに広くない?
謁見用……というかむしろここでも舞踏会は開けそうだけど。
「ねえ、この部屋何?」
「ここですか? 見ての通りパーティーフロアですけれど」
パーティーフロアねえ……なんか物騒な感じがするのは気のせい?
「ああ、いつまでもお客様をお待たせするのはいけませんね。始めましょうか」
「はぁ? 始めるって何を……紅兎!」
背中がチリッとした。慌てて紅兎を呼ぶ。攻撃が来る。“ヤバい、守らなきゃ”。
「ブラックバーニングバースト」
「「ロストアポカリプス」」
爆発が起きる。さすがに二人がかりでシールドを張ったから後ろの誰にも、もちろん自分にもダメージはいっていない。
突然の攻撃に対処できなかったのかみんなは目を見開いて硬直している。こればっかりは……さすがに戦闘経験の差だから仕方ないけど。
「みなさん、大丈夫、ですよね?」
「だ、大丈夫。ねえ咲闌……」
「はい?」
「翼……」
「ああ……別に出す必要はなかったんですけどね。戦闘態勢入っちゃうとつい癖で」
今の私は白く燃える翼が六枚も出ている。服も普段着に比べたら豪奢な格好にしてたから、見た目だけなら昔のシャトランに近いかもしれない。さっき自分はシャトランじゃないと言ったばかりなのにね。ふっ。失笑してしまう。
「で、いきなり何? 問答無用がここの舞踏会のルールな感じなの?」
「ふふ、失礼致しました。女王のお力をちょっと見てみたかったもので。大丈夫、ここからは違いますよ」
パチン。スフレが指を鳴らすとゾロゾロとメイドがたくさん入ってきた。
全部同じ顔? 人形の類かな。
「彼女たちを全員倒すこと。それが花の館での舞踏会です。上手に踊ってくださいね。全員倒せたら鍵を差し上げます」
なるほど? 小手調べされてるってこと。なんとも馬鹿にされたものだね。私だけでこんな有象無象吹っ飛ばせるのくらいわかるだろうに。
「ああ……ダメですよ、女王。いえ、咲闌さま。貴方にはこの舞踏会の参加資格は与えません。もちろんそちらの闇星霊さんもです」
ふん、そうきたか。それにしても馬鹿にしてることには変わらない。みんなのこと舐めきってるでしょ。
「手を出せないそうなので見てます。でも、大丈夫、ですよね?」
「なんか咲闌怖いんだけど……」
「もちろん怒ってますので」
「大丈夫だよー。あんな型押ししたような感じの奴らなんてちょちょいっと片付けるから♪」
「……じゃ、自信あるようなんで五分でお願いします」
翼をしまってその辺の壁に寄りかかって懐中時計を取り出す。メイドはざっと数えて百人くらい。対してこちらは四人。五分が妥当なところだろう。それ以上かかったらペナルティ課そうかな。当然だけど負けるなんて一ミクロンも思ってないから。
「五分かー。よーし、張り切っていかないとね」
「僕あんまり攻撃に自信ないんですけど……」
「いやいや、やる前からそんなこと言ってちゃダメだって。ね、繭さんも需璃さんもそう思うでしょ?」
「私もあんまり自信があるとは……」
「お姉までそんなこと言わないでよ。そんなんじゃあたしと雨以名で全部やっちゃうよ? 怜音と二人で仲良くペナルティ受けたらー?」
「「頑張ります……」」
こういうのは性格だよなぁ……とはいえこのままでは本当に仲良く二人でペナルティなので頑張ってほしい所存。
「ねーねー、需璃さーん、ジャーンケーン♪」
「え? パー」
「チョキ! ういなの勝ち! じゃあおっさきー♪ アクセルワンダー!」
「そういうことか! 待ちなさいよっ! アヴァランチステップ!」
咄嗟に出る手ってグーパーのどちらかよね……しかも今死遼虹の力使って未来視してたでしょ。絶対勝てるじゃん。いつの間に未来視なんてできるようになったんだか。ということは過去視もできるんだろうね。ほんっと雨以名は密かな努力家なんだから。だからこそトップアイドルなんだろうけどね。
ちょっとしたズルをした雨以名はさっさと敵に突っ込んでいく。需璃さんも後を追う。
うーん、どっちの術もスピードが上がるものだけど、地の身体能力考えると速いのは雨以名かな。勢いで殴ったり蹴ったりできることを考えるとパワーも一時的なら雨以名に軍配かな? 需璃さんの方はパワーもスピードも底上げしてくれるけど、どっちが多くいけるだろうか。
まあこっちの二人はいいとして、残り二人は……突っ込んでいく気がないなら後ろから術使うしかないけど、結構なスピード出てる雨以名と需璃さんに当てずに敵だけに当てられるかどうか。
「てゅろ……力貸して、ね……エデンスジャベリン!」
「あ……出遅れた……サイレントスコア……」
さぁ、五分間の舞踏会、開幕。




