表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
2/2

第3話 「部活動仮入部期間」開始②  出会い

[多目的A]教室


教室が4つ入りそうな位の広さで、奥行きがある。教室前後にあるホワイトボードには、「ようこそ!演劇部へ!」と大きく書いており、隣には、「開始は16:00〜」と書いてある。その周りには様々なキャラクターのイラストが描かれていた。絵のクオリティはやはり高い。絵心が無い竜之介は羨ましく思った。辺りを見ると、「本町西高演劇部」と背中に書かれた黒いジャージを着ている先輩が8、9人いた。男子は4人、女子5人。男子は全員カッコよく見えて、女子は全員可愛く、綺麗に見えた。その人達は、椅子で幾つかの円を作り、何かの準備をしながら話していた。入り口近くに椅子が横一列に20脚程、並べており、奥から新入生が7人座っている。全員女子だった。竜之介は、今になって、あの先輩2人が喜んでいた理由を理解した。教室の時計の針が4時を指した時、ある一人の女子先輩が新入生の前にやってきた。

「それでは、時間になったので始めたいと思います。本日は、演劇部に仮入部で来てくれてありがとうございます。部長の平田花純です。カスミって呼んでください! フフフ……!」

感高い声で話、笑っているのは部長の平田花純。外見はメガネをかけていて前髪なしの少し大人っぽい感じの人。

「これからみなさんには『読み合わせ』と言うのをしてもらいます。簡単に言うと、台本の読み合わせです!」

ただ繰り返しただけだぞと思いながらも、へぇ〜と首を動かした。他のみんなも首の動きは、同じようにしていた。

「それじゃあ早速、分かれてやってみよう! 」

「そんな丸投げにすんなよ(笑)。分かんないのにかわいそうだろ。」

何をどうすればいいかわからないのに丸投げにされた所を、アリス服の先輩が止め、説明してくれた。結局、「読み合わせ」というのは、一つの台本を音読することだった。やりたい役を決め、声でその役の雰囲気を作ると言う意味もあるのだと言う。竜之介たちはそうなのかと納得しながら、話を聞いていた。

「さすが蓮ちゃん! 頼りになるぅ!!」

「お前の説明になってなさ過ぎんだよ。」

「それじゃあ、分かれてやってみよう! とりあえず……円ごとに台本違うから、みんな行きたいとこに行ってやってみてください。」

ひたすら明るい平田部長に、クールに毒づくレン先輩。投げてばかりで大丈夫か、この部長? そんなことを思いながら竜之介はみんなの動きに合わせた。5脚の椅子が円形になっていて、それが4つあった。台本を見て回ったが、どの台本も竜之介はあまり魅力を感じなかった。動物園の動物達の話、ハンバーガー屋の話、銀行の話、部活で起きたいざこざの話。どの台本もタイトルから、下らない感じがして仕方なかった。しかし読み合わせをしてみると、意外に面白いと思い始め、先輩達ともうまく話せて、楽しい時間を過ごした。

 5時になり、仮入部の人たちは下校時刻となった。竜之介含め新入生は、まだいたいと思っていた。その空気を察したのか、先輩達は話し合っていた。そしてレン先輩が新入生の所にきた。

「今話し合ってて、この後、視聴覚室で春大会の練習やるんだけど……もう帰るって言うのも全然良いんだけど……てか本来帰らなきゃいけない時間だし……だから……。」

そう言い渋っていると、レン先輩の後ろから優しい声がした。

「今のだけじゃ、演劇がどんな感じか、まだわからないだろうし、役者とか裏方とか、どんなことやるか見せられてないからさ……どうかな? この後視聴覚室に見にこない? そこなら劇がどんなのか見せれるし。」

こっちに歩いて提案してきたのは、濃い茶色の長い髪に、柔らかい表情、柔らかい笑顔で、おっとりした感じの女先輩。笑っているときの顔が温かく綺麗に感じた。竜之介は彼女と目があっただけで、彼女が強く印象に残り、自分の中に深く刻み込まれた。

 これが、出会いだった。そして、深く刻み込まれたのは、彼女の「《《印象》》」と未来でつけられる「《《深い傷》》」である事を、彼はまだ知らない______。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ