人と成りて~名と新生活~
書庫へ着き、中へと入るギュスターとアレク。
「ここが書庫になります」
本棚が結構ある、所々に木札があり文字が・・・まも・のの・しゅ・るいかな?
「ギュスター、そこの木札は魔物の種類で合っているか?」
「はっ、左様で御座います。一応関連付けして並べておりますがお聞きくださればお答えいたします。」
「分かった。案内ご苦労であった。」
アレクは取り敢えず魔物の種類から最初の本を手に取り開いた。
アークデーモン
旧魔族とも言える者、悪魔族の上位種で強靭な肉体と角や爪などがある。生まれながらその資質を持つ者とデーモン種が年月と戦いからの経験や能力向上により進化するケースもある。個体により得意魔法があるようだが概ね火の系統が多い。肉と言うよりは魂を食らい己の糧とし、中には自ら召喚に応じ対価としてその魂を食らう者も居る。現在そこまで多くの区分は無いが必要になればデーモンの纏めを作成しよう。
アシュラ
神の化身と言われ天界を追放された戦神とも言われる。主に三面に六本の腕を持ち奇妙な武器から火や水や雷と言った魔法を繰り出す者から剣、棍棒を用いて破壊をする者。滅多に見らないため希少種ではあるが魔族と言うにはやや強さが足りないと思われるため魔物と区分。
本を閉じて文字が読める事を確認したアレク。ふと、目に入る著者ギュスター
「書いたのお前かよ!?」
思わず叫びギュスターを見る、当のギュスターは何やら机に向かい紙に手を翳している。その様子を見ていると輝く文字が浮かび上がり紙に刻印すると焼けた匂いと共に本の一ページが出来上がった。成程、インクが無いから熱で文字を書いたと、ギュスターって人族にやたら陰湿な事がなきゃかなり優秀じゃね?
「ギュスター、そう言えば俺って生まれてどれくらいなの?何かあまりこの世界の記憶さしい記憶無いんだけど」
「そうでしょうな、アレク様は誕生されてから三年程ですので」
え?三歳児だったの?見た目八歳児くらいだけど、まぁ魔族だし成長速度も様々か。でも三年でこの強さってチートと言えばチートか、木札の文字を読みながらどんな種族が居るかを見ながら疑問を問いかける。
「で、ギュスターは何でそんなに人族嫌いなの?エルフとか他の種族の時は弄ぶように殺さないよね?」
「それは、私もかつて狂乱の泉に入った・・・いえ、落とされたからですね。私は元々人族で平民でしたがそれなりに能力がある聖職者で王族とも接点を持てるほどでした。しかし、それを良しとしない貴族の誰かが野党を使って木箱の中に閉じ込めたまま狂乱の泉に投げ込ませたのです。そこからはアレク様もご存じの通り様々な幻覚を見ました。どれも人族の傲慢で身勝手な物ばかりでした。人族でしたので通常なら溺れ死ぬのですが私は直前にソウルプリズンとソウルトランスプラントを習得し人族の体から別の所へ魂を移動させ、その魂を移動先の肉体へ閉じ込めたのです。とは言え既に魂の無い器は基本的には骨になりますし狂乱の泉には溺れて白骨化した器は沢山ありましたので魂が定着するまでの時間、泉の底でひたすらに人族への憎悪が強くなったからですね。彼是三百年程前の話しです、聖職者の名残か当時より最強である暴食の王を崇拝しこちらに居る次第でございます」
ギュスターの生い立ちを聞いていたアレクだが
「くそがーーーーーーっ!!人族めが!弄び凌辱し強欲と傲慢な醜い塊めが!!無自覚に身勝手なその身に同じく弄び凌辱し滅ぼす事無く永劫飼い殺しにしてくれるわーーー!」
何かの骸骨さんみたくその暗い眼に赤い光が灯るような気がしながら怒号したギュスター
「いや、すまなかった。悪い事を聞いた、出来ればその怒りを鎮めてもらえるとありがたい。」
内心物凄くビビりながら怒れるギュスターに声をかけた
「ハッ、これはお見苦しい所を大変失礼致しました。私めはここでの用は済みましたので特にアレク様が必要で無ければ退室させて頂きたいと思います。」
「うん、そうだなまた聞きたい事が出来たら声を掛けるから行っていいよ」
「ではこれで失礼させて頂きます」
立ち去るギュスターに安堵の様子でアレクは気を取り直してこの世界の在り方を探るため蔵書を見て回る。
その中に気になる物を見つけた。召喚されし異界の者、内容は人族が一定期間以上複数人の術者を用いて異世界から強大なスキル又は魔法を持った人族を呼び出すと言う物。そして逆らえ無い様に特殊な烙印をする事、通常は烙印された者の所有物になり所有者に対して危害は行えず命令には逆らえ無いのだが特殊な烙印は召喚された国の王が所有者となり命令が無い限り民にも危害が加えれない事である。そしてそれを知っている一部の者は慰み物にもする事も書かれていた。一番興味を引かれたのはこの召喚術が完成して暫くは烙印が無く反乱こそ無かったが逃亡や他国に流れたりしてた事と何処かに村を作った可能性がある事である。残念ながら村の存在を確認出来る物は他の本にも記載は無く、後でギュスターにも聞いたが知らないと言われた。
そして月日は流れ現在アレクは二人の妹と共に過去に召喚されし者が作った隠れ里サンクチュアリを見つけ里の一画に小屋を建てそこで生活している。
朝、まだ寝ている青年の姿に成長したアレク
「お兄ちゃん朝だよー!」
そう言いながら寝ているアレク目掛けて腹部付近にダイブする少女、翼があり背中の開いた服を着ておりスカートからは尻尾も見える。容姿は幼い人ではあるがドラゴニアと言われる竜族の血筋が強く出ているアレクの妹で長女である。
「んー、もう朝か。可愛い妹に起こされる至福、だがもう少し寝ていたいと言うかこのままで居たい」
等と言いながら妹の頭を撫でている
「えへへぇ、イネスもお兄ちゃんとこうしてたいけどガリナがご飯作って待ってるし寂しがるから早く起きてぇ」
「そうだな、ガリナも可愛い妹だから寂しい思いはさせられないな」
起き上がり着替えをしてリビングへ向かう、イネスはパタパタとアレクにおんぶされるようにつかまりニコニコしている。
アレクはテーブルに着き椅子に座る、イネスもパタパタと向かいの椅子へ座る
「兄様、おはようございます。」
テーブルに料理を並べながら次女のガリナがあいさつをする、銀色の長い髪で赤い瞳、黒を基調したドレスを着ている。人族と変わり無いように見えても魔族である。服で見えないだけで体の至る所にアレクと同じ甲殻があり尻尾も見えないようにしている。
ガリナはイネスと違い余り表情を変えず物静かである。背丈は姉のイネスより大きく胸は控えめ。逆にイネスは幼い見た目に反して大きい。竜族は成長が遅いはずなのだが胸だけは成長が早いのか、身長では無く胸に栄養が行ってるのかは置いておこう。
ともあれ食事を済ませ外出の支度を始めるアレク。
「それじゃ俺は出掛けて来るから、二人とも雄には十分気を付けるんだぞ」
「はぁい」
「うん」
可愛い妹達に後ろ髪を引かれながらアレクは街へと向かう。
到着したのは大きな図書館。ここには約千年近くに亘る様々な魔法やスキル等が書かれた書物が沢山あり、色々見ながら使える物があるか探すのが日課である。特殊と言うか強大なスキルや魔法は閃きと言われる経験や独自の性質で収得するのだが扱える資質があれば使えるのである。だが資質によっては威力や効果が低い事もあったり逆に新しい魔法やスキルの閃きのきっかけにもなるので毎日コツコツと気の遠くなる量の本を読みながら色々試しているのである。
諸事情によりエグイ表現等が書けない状態なので暫くこっちはお休みします。こちらが完結する前ですが別の方を書いてきます。