表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
~転生の果てに~  作者: シェイド
2/5

人と成りて~まずは現状確認~


どれくらいの時間が流れたのだろうか?空は暗くまだ虚ろな意識の中フラフラと近くの木に寄りかかり座る。そして、徐々に意識がハッキリするにしたがい現状を思い出す。

まず初めに自分は狂乱の泉に入りいくつもの妹を守れなかった幻覚を見た。覚えているのは妹を失い自分?もまた命を落とす結末ばかりだった。現実ではない、だが妙に自分自身が体験した感覚だけはあるもやもやした気持ちである。

「あれ?」

唐突に今の自分が明らかに前と違う事に気付いた。そう、前は考えると言う事は無かったのだ。夢のようなぼんやりとした視界の中、考える事も無く人を襲い、兄妹らしいと思うと烙印をして他の魔物が殺そうとすればその魔物を殺し後は眺めていた。村や町等襲うにしてもただ単にギュスターに来いと言われたからである。こうして自分で何かを考える事は今まで一切無かったと。

そして疑問も浮かぶ。狂乱の泉に入った者は狂うか叡智を得るかとギュスターは言っていた。今の自分は狂っているのか?それともこうして考える事を覚えるのが叡智なのか?と

そう答えの出ない疑問。ならばと他へ意識を向ける。

「うん、手を見ただけで分かるけど俺魔族だな」

形は人の者だが腕や甲には何やら硬そうな物体が一体化して付いている。更に少し意識すれば爪が自在に伸び縮みし爪先が鋭くなる。だが翼や羽は無いらしい。大分落ち着いたので泉で自分の顔を確認してみる。黒髪に人と言うよりはエルフ?みたいだな、耳尖ってるし。そして重大な事に気付き叫ぶ!

「俺!服着てねえええぇぇぇぇぇ!!」

「裸じゃん!?いや、部分的に何か装甲みたいな付いてるけどさ!?でも裸だよね!?」

等と一人で恥ずかしながら叫んだ。

「うぅ、確かに一部の魔族しか服着てないけどさ」

「取り敢えず布一枚でも被せてくれても良くないですかねぇギュスターさん」

この場に居ないギュスターを恨みながら涙目で恥ずかしがる少年。

やっと落ち着いた少年はさてと立ち上がりどこかへ移動を開始した。

「まずは服だ!あの時襲った村に行けば何かあるだろ。どれくらい時間過ぎてるか分かんないけどあの兄妹も気になるし」

少年は村へ向かって自分の身体能力を確認していた。幼い体に不釣り合いな速度、跳躍力、力

「流石魔族の体、けど特に違和感も無いし何となくで使ってた烙印の法やそう言った多少の知識は思い出せる。問題は・・・誰にも見られませんように」

素っ裸で走ってる少年と言う自分の現状に人としての概念を持った彼には大問題であった。

「しかし俺の精神年齢いくつと言うかあの幻覚のどの自分なんだろ?」

またもや答えの出ない事を考えてる内に廃村へ到着した。

「さて、まずはまだあの兄妹が居るか見にいくか。裸だけど」

はぁと溜息をつきながら兄妹が居た場所へ進んだ。すると何処からか煙が見える。

「生き残り?いや撤退の時の残り火?けど周りのはすでに鎮火してるしあの兄妹か旅人あたりかな」

破損は少なく雨風を凌げそうな小さな小屋から煙は上がっていた。

「さて、誰か居るのは明白だな・・・」

音を立てないようにゆっくりと小屋の扉を開けて中の様子を伺う。

「誰!?」

言葉は解らないが声の大きさから気付かれたらしい。おっと?気付くの早くないですか?と内心思いながらこの声は聞き覚えがあったのでひょっこり顔だけ扉の隙間から顔を覗かせた。

そこにはやはりあの時の妹が弓を手に取って立ち上がって居た。ちらりと隣のベッドを見ると誰か寝ている。恐らく兄だろう。妹は傷も浅く身体的には問題無いのだろう。だが兄の方は腕に矢を受け疲労困憊していたのでここから動けず回復を待ってるのかと察する。

顔を出してみたものの、さて言葉の通じない魔族と人族・・・どうしよう?

異世界転生特有の言語統一機能とか能力は無いのだろうかとそんな事が頭を過った。

そして静かに顔を引っ込めて扉を閉めた。中に入れば連れ去りに戻って来たとか絶対思われるだろうし・・・何より今、俺はぜ・ん・ら・だ!こんな姿で女性の前に出るとか変態でしかない!

兄の容体は気になるがまずは服だ!と心に誓い踵を返して他の家へ服を漁りに向かった。

「予想はしてたけど何もないなぁ、火のせいで燃えカスばっかだしまともな布が無い」

探せど探せど服が見つからない。シーツや布団もボロボロなのしかない。そう言えば確かあの小屋にあった椅子にブランケットあったなぁ。そして気付く、あぁ使えそうな布はあの妹がかき集めてあそこにしかまともな物は無いのだな・・・と。目尻に涙を光らせ少年はガクッと肩を落としたのであった。

グッと拳を握り締め少年は森へと入って行った。

コンコン。兄妹の居る小屋の扉にノックがされる。妹はあの惨劇で自分達に烙印をした魔族の少年が先程扉から顔を出しては静かに去って行き間もない事もあり魔物や魔族がノックをするはずは無いのだが警戒を強めた。少しだけ扉を開けると弓を引きながら扉を蹴り開いた。

そこには先程来た魔族の少年と猪?

猪で体を隠すように魔族の少年が顔だけ見えるようにそこには居た。

「え?何?どうしたらいいの!?」

妹はおおよそ有り得ない状況に困惑した。魔族の少年が猪を持って来てもじもじしてる!?そんな訳の分からない状況。

弓は下ろされキョトンとする妹を他所に魔族の少年は鋭い眼差しになり一瞬で小屋の中へ入り

「しまっ・・!」

焦る妹の危機感とは裏腹に魔族の少年は椅子に掛けてあったブランケットを素早く腰に巻いてふぅと言ってそうな表情をしながら額を腕で擦っていた。

「へ?」

一瞬の緊張から一気に更なる謎な魔族の少年が取った行動と姿に肩が下がり気が抜けた。

とは言え相手は魔族、気を抜いてはいけないと改めて警戒しながら小屋の周りと猪、魔族の少年と目を走らせた。他に魔物や魔族の姿は無い、猪は良く分からない。ベッドには負傷した兄、近くには魔族の少年。どうする?と冷や汗を流しながらこの場をどう乗り切るか必死で考える妹。すると魔族の少年が動き出した。辺りをキョロキョロしながらおもむろにテーブルにあったナイフを掴み柄をこちらに向けて猪を指差した。

「ふぇ、ふえぇん。もう何が何だか分からないよう」

あまりにも想定外で謎な行動をする魔族の少年にどう対応すればいいのか分からくなった妹はついに泣き出してしまった。そんな様子にオロオロする魔族の少年は座り込んで泣いている妹の頭をそっと優しく撫でた。

そうだよな、敵対してる魔族が猪持って来たり人を襲わず猪を捌けなんて・・・見た感じまだ15歳くらいだし捌けないよな。ごめんな。

やや勘違いが生じているが概ね合ってるので良しとしよう

ようやく落ち着いて泣き止んだ妹を見て魔族の少年は猪へと向かい自分の爪で見事に解体・・・出来ずに腹部から血が飛び散った猪の前で吐いていた。青ざめた表情で

「しまった。グロイ、気持ち悪い、今まで色々殺してたのが信じられない」

そんな何を言ってるか分からないが猪を解体しようとして吐いてる魔族の少年に妹は笑っていた。

はぁはぁと息を整える魔族の少年。スーッと息を吸うと今度こそ猪を解体したのである。おーと言ってそうな表情でパチパチと手を叩く少女。すっかり警戒心は無くなったようだ。

だが気付いて無かった。解体前には血抜きが必要な事に!

そんな獣臭さ全開の肉は勿論食べれなかった。気を落とす魔族の少年と苦笑いする少女。

「うぅ」

負傷している兄の声に額の濡れタオルを取りかえる。その表情はやはり心配そうで暗い・・・

魔族の少年も少女の兄を見る。見える箇所は包帯を巻かれ血が滲んでいる、熱もあるようで酷く辛そうだ。しかし、治療系のアイテムも魔法の類も持っていないのでどうしようも出来ない。少女の方も同じ状況なのだろう。弓を使う事から弓使いやレンジャーなのだろう。近くに他の村や町は無く兄を置いて回復アイテムを買いにも行けない。俺は魔族だから人族の村には入れない。略奪行為しか手段が無い・・・残る手はあるにはあるが如何せん言葉が通じないから何処に他の村や町があるか聞けない・・・どうするか?

悩んだ挙句少女を手刀で気絶させ空いてるベッドに寝かせた。彼女も疲れてるだろうし言葉通じないからいいよね?などと横暴な理由で問答無用に行動に移した魔族の少年。

静かに小屋を出て念のため【魔獣召喚】でダークウルフを見張りに出した。

「さて、行きますか」

そして何処かへ走り去る魔族の少年であった。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ