1/305
プロローグ
この世界では、誰もが地位と役割を持つ。
王様、貴族、平民。
生まれに関わる、身分的な地位と役割。
冒険者、戦士、騎士、神官、魔法師。
職業に関わる地位と役割。
地位と役割は便利だ。
たったひとことで、自分をーーあるいは自分の一面を、表現できてしまう。
地位と役割は人に幸福と不幸を与え、
その代わりに相応の行動を人に求める。ひととき、もしくは永続的に。
ひとは、地位と役割を頼り。あるいはそれに縛られる。
このひとの土台にしていましめの鎖は、どこからやってくるのだろう。
親から? 血筋から? 王様から? それとも社会から? 伝統から?
もっと大きなものから?
人の運命に、深く関わるそれ。
誰もそれから逃げることはできずーー
わたしの運命も、例外じゃあなかったの。