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裏 勇者が都市にやってきた

今日は久しぶりのお休みでした~12連勤はきつかった……

ブックマークありがとうございます!評価までしてくれた方がいらっしゃるとはっ!

明日からまた頑張れます!


 迷宮都市エガシュソード、重要な動力源である理力石を産出する迷宮を有するその都市には領主もいるし貴族も住んでいる。

 一応は領主であるリクシドーヤ伯が一番上なのだがここは迷宮都市である。迷宮協力組合の長、迷協長にはリクシドーヤ伯に次ぐ、非常時では伯すらしのぐ権限が与えられていた。

 そんな迷協長クーシー=E=リクシドーヤ、現リクシドーヤ伯の甥にあたる男であるが、都市と外を隔てる門の前に停まった馬車から降りてきた少女に向かって頭を深く下げていた。

 歳は18、迷宮を目指してやってきた若者たちと同様に期待で青い瞳をきらめかせている。金属と皮を組み合わせた動きやすそうな装備に身を包み、腰からは柄の長い長剣、そんな彼女は興味深そうにあたりを見回してからようやく迷協長に気づいて慌てて手を振った。

「いやいやいや、頭を上げてください!勇者って言ったって私はまだ迷宮に潜ったこともないひよっこです」

 勇者の言葉に迷協長は顔を上げてにこやかな表情を作る。

「いえいえ、ご謙遜を。勇者に足る資質を示されたのですから称号を与えられたのでしょう。おや、すみません、うっかりしておりました」

 表情を改めて、迷宮長は勇者の顔をまっすぐにみて、

「ようこそ、迷宮都市エガシュソードへ」

 そう言った後、再び頭を下げたのだった。


 迷協組合の建物へと案内された勇者は応接室へと通されて三人の探索者と顔を合わせた。

 一人は教会の聖印を首から下げた青年。自分よりも少し年上だろうか、顔は微笑んでいるけど少し緊張しているように見える。

 隣に立っているのはローブ姿の青年、魔銀の糸で刺しゅうされているのは理術的意味合いを持つ模様だ。これで理術師じゃなかったら詐欺師か何かだろう。

 最後に小柄な少年のような恰好をした子、動きやすい軽装で一瞬男の子かと思ったけれど、筋肉のつき方からして女の子だろう。自分と同じか少し年下かもしれない。仲良くなれたらいいな。

 三人にざっと目を通して勇者はそんな感想を抱いた。

「私はヤチヨ=ドナ、勇者って言ってもつい最近なったばかりで迷宮については素人同然。いろいろと迷惑かけるだろうけどよろしくお願いします!」

 そう言って笑った勇者、ヤチヨの姿に多少緊張が緩んだのか、聖印を下げた青年は手を差し出した。

「僕はシヨルク、教会から勇者の助けになるようにと言われてる。一応助祭の地位を預かっている者だ」

 ヤチヨはその手をしっかりと握って、

「助祭様なのか、じゃぁシヨルク様って呼んだほうがいいですか?」

 そういっていたずらっぽく笑った。

 その顔を見てつられたように笑顔になった小柄な少女が二人の間に割り込むようにしてヤチヨの手を握り込む。

「様なんか付けなくったって、シヨルクでいいよ。ね、シヨルク?そんでもってボクはディニ、敵の様子を探ったり、罠を見つけたりする斥候役なんだ!」

 ヤチヨは勢いに少し驚いたようだが、すぐに感心して言った。

「そうなんだ、女の子なのにディニってすごいんだ!」

「そうだよ、ボクってばすっごいんだから、で、あっちの静かなのがジーフォス。すごい理術使いなんだよ」

「静かなのは余計だ、お前がうるさいだけだろ」

 こうして、順調な滑り出しを見せた新・勇者パーティは翌日に早速迷宮に挑むことにしたのだが……。


 ここは迷宮の二階層、午前中いっぱいは迷宮へもぐる準備を行い一階層から探索しているのだが、おかしなことに魔物が現れる様子はなかった。

「なんでだろ?一階もそうだったけどここも魔物の気配が全然しない」

 ディニは周囲を警戒しつつ首をひねっていた。

「普段はもっと魔物が出てくるの?」

「うん、探索者が狩り尽くしちゃうこともあるって言えばあるんだけど、一階層や二階層の理力石なんて集めるよりも二級石以上が出てくる五階層からの方がもうかるから、こんな浅いところを狩り尽くすなんて無駄なことはやらないんだ。だからいつも四階層までは魔物の数が多いんだけど、今日はなんかおかしい」

 真剣に悩むディニの姿を見て、ヤチヨは言った。

「おかしなことが起きてるなら今日はやめたほうがいいのかもしれないけど、私は一度迷宮にいる魔物の姿を見ておきたい」

 筒灯の明かりだからだろうか、ほか三人の顔が少し陰って見える。

「だから、間を取ってこうしよう。五階層まで降りてみる。その間に魔物がいたらそこで帰る。魔物がいなくても五階層まで着いたらそこで引き返す」

 何も言わない三人にヤチヨはあわてて付け足した。

「えっと、だって、さっきさ、五階まではお小遣い稼ぎに軽い気持ちで来る人もいるって言ってたじゃない?だからいいかなって、何かあっても三人がいれば大丈夫かなって……ダメ、かな?」

 次第に小さくなる言葉にかぶせたのはシヨルクだった。

「いえ!何も悪くない。その、ちゃんと聞いていてくれたんだなと、思って」

「そりゃ聞くでしょ、私を何だと思ってるの?」

 迷宮内には場違いな明るい笑い声をひびかせて、その日の迷宮探索では結局一匹も魔物に出くわすことはなかったが、このパーティで上手くやっていけそうだという思いを勇者に抱かせたのだった。

前話と同日の、裏 妙に財布が軽くなるでした。

魔物がいなかったのはハッシュが狩り尽くしたからです。

やったねハッシュ、元パーティメンバーに嫌がらせできたよ!

本人絶対気づかないけどね

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