表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
11/12

意外とうまくやれている2

 今日も昼を回る前に迷宮を出ることになった。今は13階層へと直接行っているのだが三日間進みあぐねている。

 奴隷を担いで迷宮を出たその足で治癒院へと向かった。俺が始末しきれなかった魔物により足に傷を負い歩けなくなったのだ。はじめはそのまま担いで迷宮を進むことも考えたのだが戦闘中に逃げることもできない奴隷が魔物に殺されでもしたら荷物が取り出せなくなるし奴隷の200万ルクも無駄になるしと思い返し、今では奴隷が怪我をしたらすぐに戻ることにしている。

 思うところがあり、すっかり顔なじみになってしまった治癒院の司祭様に相談してみた。

「治癒師をですか、そうですね……誰かいないか上の方に尋ねてみます」

「よろしくお願いします」

 その日はいつもより多めに包んで渡しておいた。


 治療を受けての帰り道、奴隷は武器が欲しいと言い出した。

「なるべくご主人様の足手まといにならないように、魔物が来た時に少しでも時間が稼げるようになりたいのです」

「ふむ」

 時間稼ぎならば武器よりも盾の方がいいのではないかと思ったが、奴隷を見下ろして考えを改めた。このように小さな体では盾を掲げたとて軽く吹き飛ばされてしまうだろう。それよりも武器を見せつけ多少でも魔物に躊躇させたほうがもちそうだ。

 そういえば、まだひと月も経っていないがついでに剣の様子も聞きに行ってみよう。

「よし、では武器を買いに行くか」

「あ、ありがとうございます!」

 奴隷は勢いよく頭を下げ、それと同時に昼の鐘の音が町の中心にある鐘突堂から響いた。

「昼飯にするか、そうだな、鍛冶屋までの道に美味いパンの店がある、そこでいいか?」

「はい!」

 以前、夜中に石を吐き出したことがあり、それ以来好みのものを聞いて食事にしようとしていたのだが、奴隷はあまり食べ物の種類を知らないらしく俺が提案し、それにうなずくという形になっている。

 荷物はすべて奴隷に持たせているので、会計の時は後ろから見ているのだが、

「670ルクです」

「はい、ええっと、小銅貨が1ルクで、銅貨が10ルクで、小銀貨が……」

「小銀貨が100ルクで銀貨が500ルクだ。まだ覚えられないのか」

 あまりにもたもたしているのでつい後ろから口を出してしまった。

「銀貨と小銀貨を一枚づつで600ルク、銅貨が7枚で70ルク、合わせて670ルク」

「あ、わ、はい!えと、銀貨と、小銀貨と銅貨……ご、ご主人様、銅貨が7枚も無いです……」

 あまりにも情けない顔で振り返ってきた奴隷に呆れてしまう。

「ならもう1枚小銀貨を出せば700ルクだ、小銀貨は100ルクだから銅貨の10ルクを10枚集めたものだと考えろ。7枚必要なところに10枚出したんだから何枚返ってくるんだ?」

「えと、えっと、10枚と、7枚だから多いのが……3枚?ですか?」

 多少の時間はかかったものの無事に支払いを済ませて鍛冶屋へと到着した。


 店の扉を開くと以前に軽薄な笑みで対応してきた男に出迎えられた。

「いらっしゃい、あ、剣ですか?あいにくまだ出来上がっておりませんで」

 そんなことを言ってきたがはなからそっちには期待していない。

「あぁ、そっちはいい。ほら、何にするんだ?」

 態度の悪い男は放っておいて奴隷にたずねると、店の中をぐるりと見まわしてから店先の箱にまとめて刺さっている剣へと向かっていった。少し離れた後ろで見ていることにする。

 適当に目が付いたのであろう剣の柄に手をかけて引き抜こうとするが動かず、他の物に同様のことを試みてあきらめるということを三度繰り返したのちにがっくりと肩を下ろして俺の方を振り向いた。

「これか?」

 近づいて一番初めに手にかけてあきらめた剣を引き抜いて渡してやる。

「ありがとうございま、す」

 礼を言いながら受け取り、俺の手が完全に離れると同時に剣の重さにふらつく奴隷。それでもしっかりと握りなおして今度は鞘から剣身を抜こうとして腕の長さが足りずに諦めた。

 その姿にふと、同じ師範から剣を習っていた師妹のことを思い出す。先に真剣を持つようになった俺をうらやましがり、その剣をかしてくれと駄々をこねた挙句に剣が長すぎて引き抜けないと泣きべそをかいていたな。

「ご主人様?」

「お前、長剣が使いたいのか?」

「はい」

 俺の質問にかつてないほどの力を込めた目で、奴隷は大きくうなずいた。

 それならばと剣を元の箱に刺し直して店の男へ木剣について尋ねようと顔を向け、店の奥から出てきた店長と目が合った。

「おう、ハッシュか。とっくに剣の手入れは終わってるってのに遅かったな」

「終わってるのか?まだだと聞いたのだが」

 店の男はあわてた様子で店長と俺の顔を交互に見ていた。

勇者パーティ


勇者 ハッシュ=ダナン ステータス異常 人望低下

所持金 0ルク 称号 勇者・すなお・奴隷初心者

装備 探索服 武器 装備していません


奴隷の少女 名前を聞いてあげてください ステータス異常 忠義

装備 子供用探索服 武器 装備していません 道具 黄色い石

空間収納 139730ルク バールのようなもの 迷宮用具一式 理力石多数 今日のおやつ


仲間の名前を入れてください


仲間の名前を入れてください

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ