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【エッセイ】

猫と休日



一匹の猫が、コンクリートの塀の上で、大きな欠伸をした。


猫には、何も考えることが無さそうだった。




お腹が空いたら、その時に今日のご飯をどうするか考えればいい。


ただ、それだけだ。恐らくは。




僕はそんな猫を見て、自分と似ているなぁとしみじみ思ったのだ。




僕は日々をのんびり過ごしている自覚があるし、今日はそれを哀しむだけの元気もなかった。




猫ほど自由に生きていないとは思うけれど、

こうして土曜日の昼間をプラプラと目的もなく歩いているぐらいには、自由だった。




まあ、僕は自由というものは履き違えて考えいる気もするが……





猫をじっと見つめていると、猫はこちらに気づいたのかムクリと立ち上がる。




どうやら警戒させてしまったみたいだ。




(ごめんね、猫さん。別に何かしようってわけじゃないんだ。ただの暇つぶしさ)




僕は、そう心で念じたのだけれど、猫には通じなかったようだ。


猫は僕から離れていく。




(猫も結構大変そうだなぁ、人に見られたら逃げないといけないのか)




(僕が求める安寧な日々の理想とは、すこしズレているのかもしれない)




猫なら、まだ僕の方がまだ安寧な日常を生きているだろう。


何からも生命の危機を感じていない。強いて言えば車に轢かれないように歩くくらいだ。


でも、それだって大した話じゃない。ビクビクとそれを恐れちゃいない。




(安寧と挑戦は、両立しないものだな)




僕の安寧を脅かすのは、僕自身だった。


僕の中にある退屈を嫌う、その感情が悪い。


退屈を嫌った人間は、何かに挑むしかないのだ。



(退屈だ、でも退屈でいいじゃないか。どうにか、そうは思えないかい?)




そう考えている僕は、どうしようもなく退屈な人間に思えた。


そして、今すぐにでも何かを始めたい気が沸き上がってきた。




(あぁ、これは二律背反だな。求めている安寧の中に、僕は居るはずなのに……

それを認めようとはしないもんなぁ)




僕は、家に帰ろうと思った。家に帰って、自分の求める苦しいことをやろうと決めた。


だって、今の僕には、その方がよっぽど安心できる日常なのだから。




(まだまだ、先は長い。いつか、退屈を受け入れてしまおう。そしたら、僕は―――)




想像している未来なんて、ちっぽけで彩が無い。


それでも、何とか納得のできる結末を探している。






猫と休日 -完-

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