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Dragons Heart  作者: 空野 流星
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第三話 黒竜の王、そして王女の真意

「エリカ。」


「んっ、あと10分……」


「寝ぼけてないで起きろ。」


「――はにゃっ!」



 跳び起きると、隣には額に包帯を巻いた翡翠がいた。 彼がどうやら起こしてくれたようだ。



「ぐっすり眠ってる間に城に着いたようだな。」


「そ、そうね。」



 レンガ造りの見慣れない部屋、どうやら城の一室で間違いない。

 眠ったおかげか、薬の効果なのか、体の調子はかなり良い。 痛みも、もうほぼ感じない。



「翡翠はもう身体は大丈夫?」


「あぁ、痛みはもうない。」


「良かった……」


「全く、ああいう無茶はこれっきりにしてくれ。」


「うん、ごめんね。」



 素直に謝罪の言葉が零れた。

 あれしか方法が咄嗟に思いつかなかったとはいえ、翡翠には悪い事をした。



「ほぅ、珍しいものが見れたからそれで許す。」


「ちょっ、どういう意味よ!」


「普段からそのくらい素直になれという事だ。」



 おでこにデコピンを食らう。 地味に痛い……



「いったぁ……」


「おぉ、目が覚めたか。 いいタイミングだな。」



 銀華が扉を開けて部屋へと入ってくる。



「いいタイミング?」


「あぁ、これから謁見の時間だったからな。」


「え、私達も同席するの?」


「そのようだな……」


「さぁ行くぞ!」



―――


――




 王の間へと私達は案内された。



「久しぶりだな、銀華姫。」


「あぁそうだな、クラディス王。」



 あのおじ様がクラディス王かぁ。 フードのせいで顔がよく見えないが、威厳のある渋い声だ。



「親書は読ませてもらった、これは時空龍の総意なのかね?」


「当然だ、我々に近しい存在である貴公らを、このままの扱いにはしておけん。」



 なんだか二人だけで話が展開されている。 正直よくわからない。 翡翠に助けてアピールの視線を飛ばすが、あえなくスルーされた。



「あい分かった。 で、その調停式の日程は?」


「明後日、メルキデスで行われる。 私の父も出席する予定だ。」


「おぉ、あの九垓(くがい)王もか。 ならば――」



 王は家臣に手紙を持たせ、銀華に手渡させた。



「それをブレン殿に届けてはくれまいか?」


「何故私に?」


「銀華姫、貴女はさしずめ親善大使というものであろう。

 だからこそ任せるのだ。」


「ははっ、成程な。 任せてもらおう。」



 銀華は何かを理解したように、笑いながらそう答えた。



「護衛としてアフラムを付けよう。」


「王! 何故そのような!。」



 その命令に当のアフラムが抗議の声を上げた。 近衛隊の隊長である彼に、何故あんな命令をしたのだろう?



「これは全ての民にとって非常に大事な事だ。

 お前以外に頼める者がおらぬ。」


「それは……」


「私の命令が聞けぬか?」


「いえ、そのような事はありません。」



 アフラムは俯きながらそう答えた。



「決まったな――では頼んだぞ。」


「お任せください。」



――




「隊長、城の守りはお任せ下さい!」


「頼んだぞクログ。」



 隊長さんは旅立ち前の事後処理で忙しそうだ。

 私達も買い出しを終え、飛び立つ準備をしていた。



「やれやれ、今度はメルキデスか。」


「ほんと、あの王女のせいで振り回されてるわね……」


「今回ばかりは同感だ。」



 お互い怪我だらけで飛び回る事になっているのだ、いい加減嫌になる。 おのれお兄ちゃんめ、メルキデスに行く前に寄って文句言ってやる。

 あれ、でも何か忘れてるような気がする……



「そうだ二人共、メルキデスに向かう前に風の谷に寄って晧月を拾っていく。」


「あ、すっかり忘れてた……」



 あの人、まだ縛られたまま放置されてるのかなぁ。 というか、かなり怒ってるんじゃないの? ――殺されたりしないよね?



「銀華様、準備が出来ました。」


「おおそうか。 えっと……」


「アフラムです。」


「ええい面倒な、この任務の間はお前を”黒翼”と呼ぶ! いいな?」



 うわぁ、もうそれ別な人の名前でしょ。 あだ名とかそういうレベルじゃない。



「――それが命令と言うならば。」


「面白くない奴だな。」



 なんだか可哀想になってきたよあの隊長さん。 この人に関わったのが運の尽きってやつですな……



「まぁいい、私に続け!」


「ちょっと、またぶつかりそうにならないで下さいよ!」


「大丈夫だ!」



 助走をつけて大きくジャンプし、そのまま龍の姿へと変身する。 またさっきのような事になったら、次は絶対助けないんだからね。



「えっと、”黒翼”さんは私と一緒に翡翠の背中へ。」


「すまないな。」



 白竜と黒竜の種族は時空龍達のように龍の姿にはなれない。 翡翠の場合は、時空龍の血が濃いために変身できるのだ。

 だから私の村では、時空龍の血が濃い者と白竜の血が濃い者とでペアになる習性があるわけだ。



「お願いね翡翠。」


「あぁ、お馬鹿な王女様を追いかけるぞ。」



 この後村に戻った私達は、手厚い歓迎を受ける事となったのは言うまでもない。

~風の谷の伝説~

昔、怪我をした時空龍が村へと落ちてきた。

村人達の介抱虚しく、その時空龍は死んでしまいました。

彼の魂の安寧のため、その亡骸を祀り上げました。

時空龍の文化の一部を引き継いだのもその頃です。

しかし、死ぬ前に時空龍は村人との間に子供を作っていたのです。

この時から村には時空龍の血が混ざる事となった。

長い時を経て、未だにその血を色濃くもつ子供は生まれてきます。

そんな子供達と本来の白竜の血筋の子供達を相棒とし、血を残していくために永久の誓約のしきたりはあるのです。

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