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Dragons Heart  作者: 空野 流星
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第十八話 戦争を終わらすための力

「これから作戦の概要を説明する。」



 皆、草原に整列してアフラムの話に聞き入っている。 作戦前で誰もが緊張した面持ちだ。



「この作戦の目標は二段階ある。 まずは敵の主砲である巨蛇(おろち)の破壊だ。 これを破壊しなければ首都に踏み込む事は不可能だ。」



 巨蛇(おろち)、あの巨大な魔導兵器の存在は危険だ。 その威力は時空龍の魔法障壁を易々と砕き、強靭な鱗を簡単に貫いてしまうらしい。 実際、兄達の部隊が壊滅したのも巨蛇(おろち)の攻撃によるものだ。



「そして巨蛇(おろち)の破壊には、エリカ殿の力が必要不可欠だ。 我々の目的は、彼女の有効射程まで確実に護衛する事だ。 同調(ポゼッション)の力ならば確実に巨蛇(おろち)を破壊出来る。」


巨蛇(おろち)は一射毎にチャージに時間がかかる、それを利用して彼女が辿り着くまでの時間を稼ぐ。」



 守られる側はいい気分ではない。 彼らは皆、私の盾になるのだから……

 それとは逆に、周りの士気は最高潮である。


巨蛇(おろち)破壊後は第二フェーズに移行する。 私と銀華の地上部隊でメルキデスに潜入、麗明の首を取りに行く。 作戦は以上だ。」


「一つ確認だけど、巨蛇(おろち)破壊後は私も地上部隊に合流していいのよね?」


「それは構わないが、その時の状態にもよるだろう。 同調(ポゼッション)はかなりの魔源(マナ)と体力を消耗すると聞いているからな。」



 実際、まだ同調(ポゼッション)を試していないため、どの位の時間をどの程度の力で戦えるのかは未知数だ。 対峙した兄の力は絶大だったが、すぐに息切れしていたようにも見えたのも事実だ。 あれが、身体の弱い兄の影響の可能性もあるわけだし……



「まぁ、やってみないと分からないだろうけど。 確実に巨蛇(おろち)は破壊してみせるわ。」


「一番辛い仕事を任せて済まないな……」



 今更死ぬのが怖いなんて言わない――だって、もう後戻りは出来ないから。



「今日の戦がロキアの未来を決める! 皆の奮戦に期待する!」


『オォ――!!』



 ――天に向かって雄々しく拳を突き上げる人々。 それが私には、歪で気持ち悪かった。



―――


――





「心の準備は出来たか?」


「何言ってるの、そんなの今更でしょ?」


「昨夜、あれだけ泣いてたのによく言えるな。」


「うるさい! 翡翠だから弱みを見せただけよ!」


「――そいつは嬉しいな。」



 次々と龍達が飛び立って行く。 青空は覆い隠され、日の光は遮られる。 これだけの数なのに、銀華の話ではかなり少ないと言っていた。 しかし、この数でさえも押し切ってしまう魔導兵器が待ち構えているのだ。



「私達、やれるよね?」


「当たり前だ、今の俺達に不可能なんてないさ。」



 そう言って勇気付けてくれる。 そうだ、今なら彼に全てを委ねられる。 私にはもう彼しかいないのだから。



「じゃあ、やろっか?」


「――緊張してるな、深呼吸してみろ。」


「うん。」



 両手を広げて大きく深呼吸をする。 ……ほんの少しだけ肩が軽くなったような気がする。



「少しはマシな顔になったな。」


「――ありがと。」



 不器用なりに彼も心配してくれているのだ。 まぁ、不器用なのは私も同じなんだけどね。

 私は翡翠の頬に軽くキスをして手を握る。



「行こう、翡翠。 私達の青空へ!」



 ゆっくりと瞳を閉じて意識を集中させる。 身体が暖かなモノに包まれる感覚がする。 ――それと同時に突然の浮遊感が襲ってくる。



「きゃっ……」


『大丈夫だよエリカ。』



 翡翠の声が聞こえてくる。 耳からではなく、脳に直接響くような感覚だ。

 私は閉じた瞳をゆっくりと開いた。



「あっ……」



 普段とは違う視界がそこには広がっていた。 私が右手を動かすと、龍になった翡翠の右手が動く。 それはまるで、私が翡翠の身体になってしまったような感じだ。



「これが同調(ポゼッション)なの?」


『俺はいつもと変わらないが、そうなのか?』


「そうなの、まるで私が翡翠の身体を動かしてるみたいなんだけど。」


『俺達の思考が完全にシンクロしているって事なのか?』


「とりあえず、飛んでみよ!」


『あぁ!』



 翼に力を入れる。 初めてのはずなのに、まるで今まで何度もやってきた行為のように簡単に動かせる。 翼の羽ばたきに合わせてゆっくりと身体が浮き上がる。



「う、浮いてる! 私達浮いてるよ!」


『そんなのいつもの事だろう?』


「感動が全く違う!」


『ふふっ、そうだろうな。』



 力強く翼を羽ばたかせて一気に上昇する。 更に宙返りをして軽く旋回、風を切る感覚がとても心地よい。



「慣らしはこんなものかな。」



 いつもと比べ物にならない量の魔源(マナ)を感じられる。 これなら確かに戦える!

 私は布陣の後方に並び、メルキデスの方角を見据える。



「行くわよ、巨蛇討伐作戦開始!」



 私の指示と同時に、全員が咆哮を上げて進軍を開始した。

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