非日常から非日常へ
いつも通りの帰り道だった。
……だったのだが、ふとした思いつきでいつもは通らない道から帰ることにしたのが事の始まりなのだろう。
黄昏時で薄暗くなってきた道の先に少女が突っ立っていた。
なんだろう?と思ってよく見ると、彼女は数体のスイカのような丸いナニカに囲まれている。
そのナニカは誰も触れていないのに、ひとりでに動いているようだ。
……妖の類いか。こんな道中に堂々と現れるのは珍しいが、俺は家の事情でこういった怪物にはなれている。あの雰囲気は……かなり凶暴なモノだな。よし!そうとなれば、さくっとカッコよく救出してあげて、いつも通り家に帰るのが一番だ。
俺はいつものように妖気を体に満たしていく。全身に力がみなぎってきたところで
「そこまでだ、妖怪め!地獄の河まで沈んでな!」
決まったぜ。俺の決め台詞!
これは、悪い妖怪を退治してやるという情熱と、俺の一族の秘密を暗示させる最高の決め台詞だ。
小学生の時、これを思い付いて大興奮したなあ。
などなど思いながらも体はしっかり戦闘モードだ。まずは始めに張り手で少女の手前の二体を吹き飛ばす。
丸い妖怪、近くで見ると本当に動くスイカだった、が蒙スピードで吹っ飛んでいく。
そして、勢いそのまま左右にいたスイカオバケを叩き潰した。手が果汁まみれになったが気にしない。
(残り二体!)
少女の後ろにいたヤツにもスイカ割りをしてやろうとした瞬間、
「それは私のものですよ。」
俺の顔に網がかかっていた。なんだ?
見るとスイカオバケに囲まれていた少女が虫取網で俺の頭を捕まえていた。
「へ?」
思わずおかしな声が出てしまったが、そんなことより!
「グェーッッ!」
少女の背後からスイカオバケが奇声を発しながら飛びかかってきた!
「危ない!」
俺が叫んだ直後、少女は俺から網を外し、そのままクルッと後ろを振り向く。直後、そのオバケスイカ二体は虫取網の中でユラユラ揺れていた。
「……え?」