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姉貴が異世界に嫁ぐと言い出した

「祐哉、あんたの知り合いに銀髪、碧眼の外国人っていない? 」


いきなりそんな言葉を放ってきた相手は俺の姉貴。もう三十路を手前にして浮いた噂の一つもない女が何をとち狂ったのかそう話かけてきた。大学の四回生となり、就職先を決めた俺は深夜のバイトのおかげで昼に起きて昼飯を食っていた最中。


「そんな知り合いいるか」


「だよね……困ったなぁ……」


スマホを片手に家のリビングで休みの日はゴロゴロしてる女が何を思ってそんな事を聞いてきたのかは知らないが一つだけ思う。


ー女捨ててるー


稼いだお金は全て漫画や2次元の趣味に捧げるような相手が何を考えているかは知らない。部屋の壁に張られた2次元コスプレーヤとの2ショットをまずどうかしろと思う。


「彼に似た人に結婚の挨拶してもらおうかと思ったんだけどな」


「ごふっ……」


冷たい視線を血を分けた相手に向けながら味噌汁を飲んでいた祐哉はその発言に味噌汁を噴き出す。


「汚いなぁ……あんた自分で掃除しなさいよ 」


嫌そうにこちらを見てくる姉に眉根を潜める。


“誰のせいだよ!”


恋人もいない癖についには2次元の相手を恋人と見なすようになったのか。 だから思わず、本音が漏れる。


「妄想もいい加減にしろよ。妄想女」


女を拗らせて恋人もいなかった相手がいきなり結婚するって言い出したらそんな反応だろう。俺の反応は悪くない。なのに姉貴と来たら、ノーカンで拳を飛ばして来やがった。


「何しやがる!」


「ゆー君、お姉ちゃんは異世界に嫁ぎます」


拳を降りかぶった姉貴がうふふと口元だけを緩める。


「銀髪、碧眼の超イケメンなんだよ!」


そう言って妄想を垂れ流す女は至極幸せそうに微笑んだ。


「でもね、一番は私を好きなってくれた優しい人」


そう言って微笑む姉貴は今まで見た事もないぐらい。確かに恋する女の目をしていた。




「ま、ひとまず異世界の人間と結婚すると仮定して」


「仮定じゃないの。私はロイの居る世界に嫁ぐ」


とりあえず、異世界に嫁ぐと妄想を語りだした姉と向き合って座った祐哉は朝食後のコーヒータイムの暇潰しに話を聞く。もちろん、机は掃除した。


「ロイとはね……期末テスト当日に路地裏であってね」


「路地裏……」


どんな状況かは分からないが姉貴は路地裏でその銀髪、碧眼のイケメンと出会ったらしい。


「最初はいきなり裏口から出てきた私を不審者だと思って問い詰めて来たけど私も期末テストで焦ってたから名前も聞かずに帰って来て」


その後も姉貴が頬を染めてノロケ話をするのを聞き流す。とりあえず、俺の義兄は異世界の人間になるらしい。銀髪碧眼の義兄。うん……考えるのはよそう。そんな俺の反応をよそに姉貴は彼のいいところを教えてくれる。


でもな……これだけは言わせて欲しい。俺は自分の部屋に突然現れる怪しい女なんか怖くて恋人には出来ない。目にしたことのない義兄に尊敬の念を抱いた瞬間。だが、一番の疑問は姉貴の異世界トリップが本当かどうか。疑いの目を向ける俺に姉貴は何を思ったのかそうよね!と元気に立ち上がる。


「祐哉に見せるわね」


分かりやすいように廊下からリビングに入ってくる扉を開けて一旦、外に出る。


「行ってくるね」


「ああ」


扉越しの会話の後、扉は開くがそこに姉の姿はない。思わず、ゴクリと喉を鳴らした後。


「ただいま~。ロイが仕事だからすぐ帰って来たよ」


どういう原理かは知らないが姉はやっほ~と手を振ってたっていた。


「……とりあえず、姉貴が幸せになるんならいいんじゃない?」


もうまだ見ぬ義兄への賛辞でお腹がいっぱいなったので俺はきっと大丈夫だと遠い目をした。



そして……現在……


「あ、祐哉」


無駄に元気な姉の声が俺の耳に届く。あれから一年。

慣れないネクタイを緩めながら、母親と台所に立つ姉を見てしばらくの間衝撃的な過去を思いだしていた永津祐哉は嘆息する。


「ただいま」


「おかえり~。今日はあんたの好きなハンバーグだからね」


そう言って幸せそうに笑う姉貴はもうすぐ異世界に嫁ぐ。




いつもお読み頂きましてありがとうございます。誤字・脱字がありましたら申し訳ありません。


さて、永津家はどんな時に動じるのか


異世界に嫁ぐ身内をもったらがコンセプトの小説です

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