梅原克文『二重螺旋の悪魔』
高校では文芸部に所属し、小説家になるという野望を実現させようとこつこつやっていた。そんなときにであって私の世界観を大きく変えたのが、梅原克文の『二重螺旋の悪魔』である。『二重螺旋の悪魔』で一人称文体を知り、比喩表現のひろがりを知った。
内容がぶっとんでいる。DNAのなかにあるイントロンを解読すると、太古に封印された化物がそこから現われる。人間のDNA情報のなかに、化物が封印されているのだ。クトゥルフ神話になぞらえてGOOと、化物を呼ぶ。遺伝子操作監視委員会C部門調査員・深尾直樹は放たれた化物を、スタン・ロッドで退治してゆく……ざっくり言うと、そんなストーリー。人間のなかにGOOと戦うための機能が隠匿されていて、それによってUBという超人になる。
上下巻あるのだが、上巻と下巻で世界がまるで一変してしまう。下巻がマクロになりすぎて、上巻の話がミクロになってしまう。「最終軍」だとか、中二病の心を刺激してやまない。
三回か四回は読んだと思う。そのたび、読んでいる途中に思うのだ。「ああ、こんなに読んでしまった。もうすぐ終わってしまう。読みおわりたくない」と。まさしく、極上のエンターテインメントだ。
私も、そんなふうに思わせてしまう小説を書きたい。『二重螺旋の悪魔』は、文句なしにおもしろい。読まないのは損失であると断言する。