DQ & FF
『ドラゴンクエスト』と『ファイナルファンタジー』のどちら派かというのは、私の世代には不可避の命題であるだろう。ドラクエは3から、FFは2から始めた。ドラクエは8をやらずに9までやり、FFは7までやった。だからどちら派と問われれば、ドラクエ派である。FFはある時期から、映像表現に傾斜していったような印象がある。
いちばん好きなドラクエもFFも、最初にプレイした3と2だ。そのあとの4と3もやりこんだが、ゲームの自由度という点でいちばんだった。
最初にやったRPGが、ドラクエ3だった。札幌に住む祖母が、狸小路の行列にならんで買ってくれたのだ。勇者は三人の仲間を「つくる」。アリアハンの、ルイーダの店で。せんし。ぶとうか。そうりょ。まほうつかい。しょうにん。あそびにん。職業と性別を選択して、名まえをつける。物理攻撃のせんしと、回復役のそうりょ。それに魔法攻撃のまほうつかいをパーティーにするのが、定石であった。せゆそま。
遊び心が芽ばえると、ぶとうかとしょうにんとあそびにんを加えたりする。けれどそうりょだけは、絶対に外せない。ぶとうかはせんしにくらべてまもりに不安があるが、すばやくてかいしんのいちげきがでやすい。しょうにんはモンスターをたおしたあと、さらにゴールドをひろったりしてお金が貯まる。あそびにんはその名のとおり、戦闘の最中にふざけたりするお荷物だ。
けれど、あそびにんはすごかった。レベル20でダーマ神殿に行くと、「さとりのしょ」なしでけんじゃに転職できるのだ。けんじゃはそうりょの回復魔法と、まほうつかいの攻撃魔法を両方おぼえてくれる上級職である。子供向きではない設定ではあった。
転職をすると、レベル1にもどる。パラメータが半分になる。くりかえせばくりかえすほど、強くなる。やりこみ系というやつの走りである。
つぎにやったRPGが、FF2である。リアルタイムではクリアできず、20歳をすぎてからWiiの旧作で購入してクリアした。まったく子供向けにつくられていなかった。なにしろ、レベルがないのである。レベルはないが、パラメータは上がる。戦闘でダメージを受けることで、HPが上がる。子供向けでないのは、パラメータが下がりもすることだ。物理攻撃ばかりに傾くと、黒魔法白魔法をあつかうための「ちせい」と「せいしん」が衰える。その逆を行けば、「ちから」が落ちる。オールラウンダーをつくりあげるのが、困難を窮める。まったく子供向けではない。
さらには、熟練度システム。武器や魔法の熟練度が上がってゆく。剣・槍・盾・弓・ナイフ・斧・メイス・素手の種類があり、みぎてひだりてでどの武器をつかうのかをえらべる。剣の熟練を上げてきたキャラクターが、より威力の高い槍を装備したところで活用できない。両手に剣を装備して二刀流にしても、攻撃力がそのまま二倍になるわけではない。攻撃回数というものが増えることで、あたえるダメージが倍増する。攻撃回数や命中率に関わってくるのが、熟練度である。盾を装備しても、守備力が上がるわけではない。上がるのは回避率。このあたりも玄人好みの設定である。
魔法も同様、つかうごとに魔法のレベルが上がる。どの魔法を強化するのかをえらべる。ファイアならファイア、サンダーならサンダー。ケアルならケアル、プロテスならプロテス。魔法をつかうごとに魔法レベルが上がる。魔法レベルが上がると効果は増すが、消費MPも増える。
アルテマという、究極の魔法がある。白魔道師のミンウが命を散らして結界を決壊させて、ようやく入手できる。これを得なければストーリーは進展せず、最後のボスもたおせない。その重要な魔法を竜騎士のリチャードに習得させたところ、リチャードがパーティーから永久に離脱。子供の私はそうして、クリアを断念した。つくづく、子供泣かせのゲームであった。
私がファンタジーというものに触れた最初の経験が、『ドラゴンクエスト』と『ファイナルファンタジー』であった。まだ小説は書きだしていない。けれど、空想癖は旺盛であった。休み時間、ノートに創造したモンスターの絵を書いていた。攻撃力や防御力をそこに書きそえる。書いたそれを級友らと見せあうインドアな遊び。物語らしい物語があったわけではなかったろう。その拙い遊びがまちがいなく、私のいまに繋がっている。