リボルト#15 相容れない三つの意志 Part2 三つ巴の悪戦苦闘
※このパートに暴力描写及び暴言が含まれております。ご注意ください。
「千里の一本槍・大地震動!」
拳をハンマーのように、俺は地面を強く叩きつける。すると足場が揺れて、恋蛇団の連中がガクガク震えて体が思うままに動かない。
「くらいやがれ、土具魔!!!」
このチャンスを逃さまいと、俺は土具魔のいるところにジャンプして奇襲を仕掛ける。だが殺人鬼である土具魔には、きっとこれぐらいじゃ俺の攻撃が通せないだろう。
案の定、奴はまたしても全身が炎に変化し、上空から俺を襲いかかる。
「甘いぜ秀和! 俺様の自慢の黒炎に焼かれるがいいぜ!」
しまった、そう来たか! 一体どうすれば……
「危ない、秀和!」
「カン!」
金属の衝突音と共に、盾を構えた哲也は俺の前に姿を現した。
「大丈夫かい、秀和?」
「ふう~、助かったぜ。サンキューな、哲也」
「まったく、君はいつもこうだ。気持ちは分かるが、すぐに感情的になると、敵に弱点を晒すことになるぞ?」
「ああ、分かった。気をつけるぜ」
やっぱり仲間と一緒に戦うと、心が暖かくなるぜ。親切にアドバイスもしてくれるしな。どこかのどいつと違って。
「へっ、まさか戦場に盾を持ち込むとは、そんな殺傷力のないガラクタで何ができる!」
恋蛇団の雑魚の一人が、哲也が装着している盾を見て見下ろした態度を取る。
「まったくその通りだぜ! よしっ、そいつの盾をぶっ壊して、反抗できなくなったところで一気にぶっ潰してやる!」
もう一人の雑魚が、トゲ付きのハンマーを弄びながらおもむろに哲也に接近してきやがる。完全に狙われてるな、これ。
てめえら、あんまり哲也をバカにするんじゃねえぞ。っていうか、確かアメコミのキャラクターの中にも、盾を使うヒーローがいるんじゃないのか?
「やれやれ、どうやら僕も舐められたものだね。いいだろう、ちょうどまだ試していない機能もあるし、ここで使ってみるとしよう」
冷静な哲也は怖じ気付かず、いつものようにメガネを押し上げると、ハンマー持ちの雑魚に向かって接近する。
「はっ、逃げずにこのオレに勝負を挑んだのか! その勇気は褒めてやるぜ! さて、オレのハンマーがつええのか、それともてめぇの盾が……」
「悪いが、その必要はないさ」
そう言うと哲也は早足でハンマー持ちの雑魚との距離を縮め、盾を奴の腹にぶつけた。
「ぐおっ!?」
ハンマー持ちの雑魚の悲鳴と共に、奴の背中に大きな槍が二本飛び出ている。そして次の瞬間に、赤い液体がそいつの体から迸った。
「ななななな……一体なにがどうなってんだ!?」
さっき哲也の盾を見下ろした雑魚も、仲間の異状を見て驚きの色を隠せなかった。
「別に、ただ盾の中に伸縮できる槍を二本仕込んでおいたのさ」
哲也は盾を装着している腕を引っ込めると、ハンマー持ちの雑魚は声も出ずにそのまま倒れ込んだ。
まさか盾の中に槍を仕込んだとは、小春もなかなか考えてるじゃねえか。もしかして俺の資質を意識して作ったのか?
「おい、てめえら何見てやがる! さっさとあいつらをやっちまえよ!」
哲也の盾を見下ろした雑魚は、情けない声で後ろにいる仲間たちを呼び集めた。するとすぐさま30人ほどの敵が集まり、俺と哲也を目がけてこっちに突進してくる。
「「「おおおおおおー!!!!!」」」
雄叫びを上げる敵たちは、俺たちを殲滅しようと武器を掲げている。
「へっ、ずいぶんとすげえ攻勢じゃねえか。だが雑魚がいくら集まったところで、雑魚は雑魚に変わりはねえ」
「そうだね。せっかくだから、二人で協力して倒さないか、秀和?」
こんな状況でも哲也は余裕のある表情を崩すことなく、俺にこんな提案を出す。
「ああ、そいつは悪くないぜ。さっさとやるか!」
「それじゃ、三つ数えたら行くぞ!」
「よし……1、2……」
俺は耳を立てながら、攻撃する準備に入る。そして哲也は盾の裏にあるベルトを外した。
「……3!!」
合図と同時に、哲也は盾を俺に投げ付けてきた。そして既にP2を足にチャージした俺は、それを上げて盾をキックする。
「千里の一本槍・回旋盾撃!」
即興で新しい技の名前を思いついた俺は、全力をぶつけて盾を遠くまで蹴り飛ばす。
するとどうだろう。帯電した盾がフライングディスクのように飛んでいき、敵の一人に当たっては、その反動によりまた別の敵に当たる。
盾が何度もその動作を繰り返し、やがて敵の集団が全滅した。
「よっしゃ、大ストライクだぜ!」
予想以上の成果を目にした俺は、喜びで思わずガッツポーズを取る。
「おお、さすが秀和くんと哲也くん、すごい連携だね!」
傍らで俺たちのファインプレーを見ていた菜摘は、明るい笑顔を見せながら拍手している。どうやらちゃんとトラウマから立ち直ったみたいだな、よかった。
「何、当然の結果さ。親友というのは伊達じゃないからね」
哲也は片手を上げて、落ち着いた笑顔を浮かべている。
「ですが、あの盾はあそこまで落ちていますね……わたくしが拾って参りましょうか?」
気が利く千恵子は、遠くまで落ちている盾を指さしながら哲也に質問する。
「いや、その必要はないさ、千恵子くん」
そう言うと、哲也は袖にあるボタンを押した。なんと地面に落ちているはずの盾が、急に哲也を目がけて飛んできた。途中で盾が何人かの雑魚にぶつかり、まさに一石二鳥だった。
「わあ、すごい! 一体どういうことなの、これ?」
不思議なことに驚く菜摘は、哲也に質問をする。
「簡単なことさ。袖の中には磁石を仕込んであり、ボタンを押すと電気が流れて盾を吸引するようになっているんだ」
「電気が流れる仕組みなの? それじゃ……」
菜摘は自分の腕に付けている時計を見ると、思わず心配そうな顔をしている。そうか、先生に逆らうと電気が流れるんだっけ、この時計。
だがそんな菜摘の不安を追い払おうと、哲也は笑顔を浮かべながらこう答えた。
「心配はいらないさ、菜摘。磁石は特製のゴムに包まれているから、電気が流れても痺れることはないんだ」
「そっか、それならよかったぁ」
安堵した菜摘は、ほっと胸を撫で下ろした。
「……ところで、恋蛇団のリーダー格は? 僕はさっき奴の攻撃を防いだはずだが」
「あっ、そうだった! どこに行きやがった!?」
哲也の指摘にを聞いた俺は、自分が大事なことを見落としていたことに気付き、慌てて回りを見渡す。
「はぁっ、まさか俺様の存在をまだ覚えてやがるとは……本来なら気付かないうちにトドメを刺すつもりだが、まあいいぜ、どのみち貴様らに勝ち目はねえっ!」
土具魔の野郎は再び全身に黒い炎を纏い、こっちに突進してきやがる。
しかも今回は前と違って、恋蛇団とは別に対処しなければならない相手がいる。
「いい加減にしてください! これ以上無意味な戦いを続けるのでしたら……こちらにも考えがあります! 神薙さん!」
「ええ、分かっているわよ」
神薙と呼ばれたあのゲームが大嫌いな青い髪の少女は、すかさず手中の札を掲げた。すると水で出来た大きな魚は、こっちに迫ってくる。
くそっ、ただでさえ土具魔だけでも厄介だというのに、これじゃ八方塞がりじゃねえか!
だが、こんなところでビビる俺じゃねえぜ! 自慢の資質で、邪魔する奴らをまとめて……
「ちょっと~、あたしたちのことを忘れてないかしら?」
うん? この声は……!
俺たちの前に現れたのは、白黒の制服を身に包んでいる十守先輩たちだ。
「ムム、あの水の魚をやっちゃいなさい!」
「はい、マスター!」
十守先輩の指示を受けたムムは、またしても例の指揮棒を手に取り、神威隊が放った水の魚を操ろうとする。
「スプリング・タクト!」
ムムの掛け声と共に、水の魚がUターンして神威隊に向かって突進する。
「ば、バカな……! あいつらは水を操れる能力を持っているだと!?」
「アバアバ! こっちに来ないでアバ!」
自分の攻撃が逆手に取られて驚いたのか、神威隊の連中が慌てふためく。ふう、何とか助かったぜ。
だが後ろにはまだ土具魔がいやがる。そっちもちゃんと対応しねえと……!
「よっしゃ! 正々堂々勝負だ!」
十守先輩とは違って、今度はとても勇ましい男子の声が響き渡る。どうやら正人たちも、俺たちを加勢しに来てくれたみたいだな。
「けっ、邪魔しやがって……いいぜ、貴様ごと燃やし尽くしてやるっ! ヒャーハッハッハッ!」
それでも土具魔はたじろぐことなく、依然としてあの禍々しい黒炎を纏いながら迫ってくる。
そんな土具魔を見て、正人は深呼吸をするとこう言った。
「本当はこれを使いたくなかったんだけど……やるしかない!」
そして、彼はおもむろに自分の右腕の袖を捲った。それはどう見ても人肌には見えない、鉄の腕だった。すでに分かっていたことだが、実際に見たのは初めてだ。
一体彼の身に何があったのだろうか。詳しいことは気になるが、今はそんなことを考えている余裕はない。
「この前はやり損なったけど、さあ、オレとお前の炎、どっちが強いか試させてもらうぜ!」
次の瞬間に、正人の機械腕から眩しいほどの赤い炎が噴出した。メラメラと燃え上がっているそれが、自分の強い闘志を示している。
「はっ、そんなちっぽけな炎が、この俺様に勝てるわけがねえだろうがぁ!」
相変わらず尊大な態度を取る土具魔は、正人の炎を見ても避ける様子はなかった。
だが正人も正人で、負けじと片足で地面を踏み込み、肘を曲げて攻撃する体勢に入った。
正人の赤い炎と、土具魔の黒い炎。両方は今、正にぶつかり合おうとしている!
この光景に見入った俺たちは、掩護することすら忘れていた。
頼む正人、あの野郎に一発を喰らわしてやれ!
「絶世の黒……」
「赤爆炎拳・凰火撃!」
土具魔が攻撃を仕掛ける前に、正人は素早く前に出て、奴の顔面に見事な右フックを決めた。
「ぐわあああああ!??」
高速で移動していた土具魔は突然の外力によって軌道が大きく変わり、明後日の方向に向かって空中で回転している。
へっ、何とも滑稽な姿だ。ざまぁ見やがれ。殴ったのは俺じゃなくて実に残念だぜ。
「あなた方……何故あのような野蛮な方々の肩を持つのです!」
「そうよ! あなたたちはあいつらに騙されて、利用されているのよ! ことが済んだらあなたたちは用済みになって、見捨てられるに違いないわ!」
びしょ濡れになった神崎と神代は、相変わらず人聞きの悪いことを言いやがる。こいつらはどうしても、俺たちを悪者に作り上げたいらしい。
だがそんな虚言で動揺するほど、真実の標は甘くない。
「よく言うわね、あんたたち。まだあの子たちに出会ってから一日しか経ってないでしょう? それだけで彼らの全てが分かるとでも言いたいかしら?」
神崎たちの言葉に呆れている十守先輩は、白目で彼女たちを見ながら反論する。
「あなた方も、彼らに出会ってからまだ四日しか経たないのではありませんか! 私たちと何が違うというのです!」
頑固な神崎は、反発して十守先輩に口答えする。
「あらあら、張り合っちゃって。少なくともあの子たちは、私たちのことを信頼しているのよ?」
普段意味不明なことしか言わない静琉先輩も、珍しくいいことを言ってくれた。
「ふん、あんなのただの表向きよ! 今はいい子ぶってるかもしれないけど、裏切られたら痛い目に遭うわよ!」
神代は強がって、威勢のいいことを言っている。顔が引きつっていることも知らずに。
そしてこの瞬間、突然一枚のカードが神代に向かって飛んでいく。それも燃え盛る炎を帯びている奴だ。
「ちょっと、危ないじゃない! 一体誰がやったのよ!」
急な出来事に、神代は慌てている。彼女はキョロキョロして、カードを投げた犯人を探そうとしている。
カードを投げて攻撃する人物は、あの子しかいないよな。
「……先輩たちのこと、悪く言わないでください。これ以上勝手なことを言ったら燃やしますよ?」
いつもの冷静さを失い、碧は震えた片手でカードを握り潰しながら、とてつもなく物騒なことを言い出す。
「わわわ、こんなに怒っている碧さん、初めて見たでありますー!!!」
傍らで碧を見ている可奈子は、目を見開いて驚きの声を上げている。
「アバアバ、さては図星だアバ! だからこんなに怒ってるに違いないアバ!」
空気を読めない神宮寺は、いつものように調子に乗って挑発する。だがそれは火に油を注ぐ結果にしかならなかった。
「どうやら、もっと痛い目に遭わないと気が済まないみたいですね……!」
碧は足に付けているカードケースから、一気にカードを5枚も引いた。そしてそれらを一斉に、神威隊のいる方向へ飛ばした。
「火神の炎!」
碧の怒りのこもった声と共に、5枚のカードが一箇所に集まり、やがてそれらが炎の巨人へと変化する。
「な、何ですかこれは!」
「う、嘘でしょう!? 神を呼び出せるのは、私たちの他にもいるっていうの!?」
「感心している場合か! こっちに来るぞ!」
迫り来る炎の巨人を見て、神威隊は狼狽えている。逃げようとするも、いかんせん周りの人がかなり多く、思い通りに移動できない。
「バァァーーン!!!」
空中から落下した炎の巨人が、その巨大な拳をハンマーのように地面に叩きつけた。巻き上がる爆風と煙、そして巻き込みを喰らって吹き飛んだ周囲の人たちが、その威力の凄さを物語っている。
「よし、やったか!?」
「おい、その台詞はタブーだろう!」
興奮気味の聡が発した心ない一言を、俺は思わずつっこむ。これを言ったらほぼ100%で敵側が無傷になることを、何故分からないんだ!?
そして案の定、神崎はシールドを張っていたため、神威隊の連中がほこりを被っただけで、大したダメージは受けなかった。
「ほら聡、お前が余計なことを言うから!」
「オレのせいかよ!」
苛立つ俺は聡を窘めるが、聡はまったく納得できないといわんばかりに俺に反発する。
「できれば戦わずに、もっと平和な手段でこの無意味な戦いを止めようと考えていましたが、どうやら無駄なようですね……!」
神崎はギロリとこっちを睨みつけながら、歯を食い縛っている。まるで憎い敵を噛み殺そうとしている野獣のようだ。
「このぉ……!! もし殺人が犯罪じゃなかったら、とっくにあんたたちを殺していたわよ!」
神代も犯罪者を見ているような恐ろしい目線で、俺たちを見据えている。
ふん、ようやく本音が出たか。所詮神の意思とか世界の均衡とか、あいつらが自分の行動を正当化するための言い訳にすぎないようだな。
それに、さっきは俺たちの表情が醜いとか言ってたくせに、今は正に同じことをやってるじゃねえか。ブーメラン発言もいいとこだぜ。
「はぁ……どうやら『指導』が必要なようね。いくら女の子だからって、容赦はしないわよ?」
そんな正気を失っている神威隊を見て、十守先輩は指を鳴らしながら応戦体勢に入る。
「あらあら、張り切ってるわね十守は。一体どんなプレイを見せてくれるのかしら?」
静琉先輩は手中のムチを弄びながら、意味深な目付きで十守先輩を見つめる。
「……静琉、あんた何か勘違いしてない? あたしが言ってる『指導』はそういう意味じゃないわよ?」
またしても静琉先輩の脱線発言に、十守先輩は冷や汗を流す。やれやれだぜ。
「土具魔さまぁ~! 土具魔さまぁ~! ご無事ですか!?」
突然、ヒステリックで甲高いくそビッチの声が響き渡る。何とも耳に障る声だ。
「チッ、どきやがれ!」
「きゃあっ! ああ~ん♥」
殴られて機嫌が悪いのか、土具魔は駆けつけたくそビッチを押し退けた。とんでもねえ野郎だぜ。
しかもくそビッチもくそビッチで、何故か喜びの笑顔を見せている。とんでもねえドMだぜ。
「貴様ぁ~! よくも俺様の顔を殴りやがったな!」
土具魔は狼のように、牙を剥き始めた。おお、怖い怖い。
「そうよ! 土具魔さまは、ワタシの大切な旦那さまなのよ! よりによって顔を殴るなんて……ユルセナイワヨ……」
くそビッチは赤い瞳をレーザーのように光らせ、土具魔を殴った正人を視線で殺そうとしている。
「オレはただ大切な仲間たちを守りたいだけだ! 何もやましいことをしていない!」
正人は一歩も動かず、真っ直ぐに自分の気持ちをぶつける。何とも主人公らしい言葉だ。
「けっ、仲間だとっ? またそれかよ! 秀和といい貴様といい、そんなものは何の役に立つというんだぁ?」
「何だと?」
「仲間だの友達だの、あんなのただの邪魔にしかならねえんだよ! 奴らを守ろうとすれば、思い通りに動けねえし、ミスをしたら尻拭いまでしなきゃならねえ! だが一人だけなら、失う怖さもなく気楽に動けるぜ! ヒャーハッハッハッ!」
土具魔はこの前にゴールデン・オアシスで俺に言ったことを、またしても自慢げに口にしやがる。恥ずかしいと思わないのか、こいつ。
「お前、そんなこと言って恥ずかしくないのか!」
わあ、まさか正人が俺と同じことを考えてたとは。やっぱり気が合うよな。
「別にぃ~? 俺様に何があったわけじゃねえし。正直こいつらがどうなっちまっても、俺様が知ったこちゃねえよ」
土具魔は気持ち悪そうに首を傾げて、ドスの利いただみ声で答える。
まったく隠す気はねえな、こいつ。ある意味その正直さには感服するぜ。
でもよく考えてみると、そりゃそうか。こいつを恥ずかしい思いをさせるには、顔を殴るか、奴の計画を阻止するかのどっちだからな。
「おい、そこの乱っていう女の子、彼はこんなことを言ってるけど、いいのか?」
土具魔の真意を知った正人は、くそビッチに彼女の気持ちを確認する。
「ワタシを名前で呼ばないでちょうだい! ワタシの名前を呼んでいいのは、土具魔さまだけよ!」
「まだ質問に答えていない! あいつは、お前のことを仲間として見ていないんだ! このままだと彼に裏切られたり、見捨てられたりしてもおかしくないぞ!」
これだけ言われれば、さすがにあのくそビッチも幻滅するだろうと思っていたが、現実はいつも俺の想像を遙かに越える。
「それでもいいわぁ!」
「えっ?」
「ワタシの体も心も、ぜぇ~んぶ土具魔さまのものよ! それにワタシのような優れた人間を、土具魔さまが見捨てるはずなんてないわよん!」
まるでヤクでもやってるかのように、くそビッチは急にうっとりした顔になり、体がゾクゾクと震え出す。
うわっ、感じ悪すぎてマジ引くぜ。俺の彼女はこんな変人じゃなくてよかったな。
「あらダーリン、こんなバカ女の戯れ言に付き合う必要がありまして? そろそろ一発殴って黙らせてやりましょう!」
高飛車な雅美は、退屈そうに欠伸をしながら正人に戦いを続けるよう提案する。
「ナニよ、アンタ……むっ! その誇らしげにデカいチチを腕で持ち上げるポーズ……なんて憎たらしいわ!」
胸の強調するような雅美の姿勢が、またしてもくそビッチの目に入り、彼女を怒らせる。
「ワタシより優れた存在……すべて消し去ってやるわ! あああああァァァ!!!」
一人で勝手に発狂したくそビッチが、周りを顧みず一直線に雅美に向かって走っていく。女の嫉妬心って怖いな。
「全く……困った方ですわね。少しはお仕置きが必要のようですわ」
それでも雅美は慌てることなく、冷たい目線でくそビッチを見据えている。そして彼女は目を閉じると、何やら呪文のような言葉を呟いているようだ。
するとどうだろう。なんと彼女が着ているドレスにちりばめられている宝石たちが、ランプのように光っているじゃないか。
「うっ……! ナニよこれ……!」
その輝きに照らされたくそビッチは、目が眩んで身動きが取れなくなる。
そしてこの隙に雅美の宝石たちは少しずつドレスから離れていき、空に浮かび上がる。
次の瞬間、彼女は目を見開いた。
「白銀の巨人!」
迸る光と共に、宝石でできた大きなゴーレムが空から降臨し、大地を揺るがす。
「す、すげえ……!!」
「何て眩しい光……とても美しいですね」
それを見た俺と千恵子は、思わずその存在に見とれる。
だがくそビッチにとっては、それは決して心地よいものじゃなかった。
「あぁ、なんて忌々しい光……! 目が見えない……!」
まあ、無理もないか。ずっと暗闇に生きている者には、その素晴らしさを理解できるはずがないだろう。
「やってしまいなさい、ギガス! 心の歪んだあの下劣な存在に、渾身の一撃を!」
雅美がくそビッチを指さすと、ギガスと呼ばれたゴーレムはおもむろにその大きな拳を動かし、くそビッチを攻撃する。
ゴーレムの拳が動くにつれて、周りに一陣の風が起きる。それに気付いたくそビッチは初めて自分の身に襲いかかる危機を探知したが、時はすでに遅し。
「うぎゃあああああああー!????」
滑稽なやられ声を発しながら、くそビッチは空中に飛ばされる。
そういえば土具魔の野郎も、この前に静琉先輩に空に飛ばされたんだっけ。本当に似たもの同士だな、こいつら。
「よっしゃ、やったぜ!」
「へっ、ザマないね! 他人の心を翻弄するようなやつはこうしないと!」
この歴史的な瞬間を目撃した聡と直己は、スマホで写真を撮りながら喜びの声を上げている。
そしてこのままくそビッチは地面に落ちるかと思いきや、ギガスはもう片方の手で空中にいるくそビッチを掴み、地面に叩きつけた。しかもその着地点は、ちょうど俺たちの目の前だった。
「う、うぐっ……」
満身創痍のくそビッチは、ものすごく苦しそうに唸っている。そんな彼女を見て、心にかつてない喜びを覚える。
「秀和さん、千恵子さん、そして菜摘さん」
突然、雅美の声が聞こえる。何か言いたいことでもあるのか?
「雅美? どうしたんだ?」
「貴方たちは、そこに伸びているドブネズミに散々酷い目を遭わされたのではなくて? その仇を討つチャンスを差し上げますわよ」
雅美は意味深な笑みを浮かべ、俺たちにこう言った。
……なんていい奴なんだ、ここまで空気を読んでくれるとは。
「でかしたぞ、雅美! 礼を言うぜ」
「いいですことよ。わたくしも、他人の恋を邪魔するような輩が大嫌いですわ! おーほっほっほっほっほ! それでは、失礼しますわ」
例の高笑いと共に、雅美は去っていく。そして、俺は目の前にいるこの下劣な獲物を軽蔑な目で見下ろす。
昨日の出来事を思うと、腹が立ってならない。本当ならここでこいつを思う存分ぶん殴ってやりたいが、こんな奴の汚い体で自分の手を汚すのはまっぴらごめんだ。
それに、俺よりこいつを懲らしめたい人がいるはずだ……
俺はP2で電気の帯びたチェーンを作って、くそビッチの首に巻き付ける。そして奴を引きずって、千恵子と菜摘の足元に投げ捨てた。
「よう、千恵子、菜摘! こいつを連れてきた、復讐するなら今のうちだぜ! 思う存分痛め付けてやれ!」
それを聞いたくそビッチは、慌てて土具魔に助けを求めようとする。
「お、お助けください土具魔さま! このままではワタシは……!」
「……俺様の知ったこっちゃねえよ」
「そ、そんなぁ……!!」
土具魔に突き放され、くそビッチは絶望した目付きになる。
「はっ、ついに仲間にも見捨てられたな! いや、あいつは最初から、てめえを仲間として見ていなかったんだな!」
くそビッチの絶望の表情と土具魔の冷たい態度が、俺の喜びをいっそう強くさせる。
だが、生存本能に支配されるくそビッチは、まだ諦めていなかった。
「ですが土具魔さま、アナタは人を殺すのが好きなんですよね!? ヤツらが油断した今は、絶好のチャンスなんですよ! ワタシのためじゃなくても、アナタ自身のためにはメリットがあるはずですよぉ!」
慟哭にも近いその声が、くそビッチの絶望感を物語っている。
よくもまあ、さっきは「見捨てられても大丈夫」みたいなことが言えるな。結局意地を張ってるだけじゃねえか。
それはそうと、くそビッチの言うことは一理ある。もしかするとくそビッチは俺たちの油断を誘い、その隙に土具魔は俺たちを襲ってくるかもしれない。気を付けないとな。
だが俺の予想外に、土具魔はこう答えた。
「俺様はさっき、『こいつらがどうなっちまっても知ったこちゃねえ』って言ってたよなぁ? 確かに俺様は人殺しが大好きだけどよぉ、だがもし俺様は今こいつらを攻撃すれば、『言ってることとやってることが違う』なんて笑われるかもしれねえぜ? 貴様は俺様のプライドが傷ついてもいいってんのか、あぁん?」
土具魔はその恐ろしい眼を光らせ、人を喰うような目でくそビッチを見下ろすと、俺と同じようにくそビッチを蹴った。
「ひ、ひぃ! 申し訳ございません、土具魔さま!」
くそビッチは傷だらけの体を引きずり、ビクビクと土下座しながら土具魔に謝る。
普段ならこれは見るだけで心が痛くなるようなDV光景だが、相手が恋蛇団ならただのコントにしか見えない。
「で、どうする? 君たちはこいつに辱められた恨みを晴らさなくていいのか?」
ずっと一人で復讐を楽しんでいた俺は千恵子たちのことを思い出し、彼女たちの方を見やる。
「さ、さすがにやりすぎなのでは……?」
「そ、そうだね、何だかかわいそうだし……」
千恵子は菜摘は同情の目で、くそビッチを見ている。
あー、なんて優しいんだ二人とも。君たちに出会えた俺は本当に幸せ者だな。
だが恩知らずのくそビッチは、せっかく手にしたチャンスを自ら手放す。
「ナニ同情していい子ぶってんのよ、この偽善者! くそアマ! 男タラシ! デカチチ!」
血眼になったくそビッチは、これまでにない汚い罵言を吐く。実に耳に障る声だ。
「てめえ、まだ懲りねえのか……!!」
もちろんそれを聞いて、俺は怒らないはずがない。激怒により俺のP2が活性化して、両手に迸る稲妻が普段より輝きを増す。
だが、俺の前に千恵子と菜摘が姿を現す。
「ん? 二人ともどうして……」
背中を向けられているため、表情こそ見えないものの、彼女たちからすごいオーラが感じ取れる。
「聞き捨てになりませんね……男たらしとはどういうことですか? わたくしの彼氏は一人だけですし、何より秀和君と愛し合っているのです!」
「私をバカにするのは別にいいけど、千恵子ちゃんと秀和くんまで偽善者呼ばわりするのは許せないよ!」
二人の側面に回ると、彼女たちの眼差しは普段よりかなり鋭くなっており、まるで獲物を捕らえた野獣のようだ。どうやら彼女たちも、くそビッチの暴言に怒らせられたようだ。
ふんっ、黙っていればよかったものの、どうしても酷い目に遭わねえと気が済まねえみてえだな。
「準備はよろしいのですか、菜摘さん?」
「うん、いつでもいけるよ、千恵子ちゃん!」
まるでリハーサルでもしておいたかのように、千恵子と菜摘は視線を合わせて、くそビッチに攻撃を仕掛けようする。
「花鳥風月・二の舞! 玉露!」
「サイクロン・スコール!」
千恵子は刃に水流を纏わせ、それを丸い玉に変形させると、剣を大きく振って水の弾を発射する。
一方菜摘は例の丸のこを発射せず、それを腕に装着しているディスクに取り付けたままで竜巻を出している。
水の弾が竜巻に吹かれて、無数の雫に分裂し、くそビッチに向かって降り注ぐ。
「ちょ、ナニこれ……い、いや……いやああああああ!!!」
疲弊しているくそビッチは抵抗する術もなく、されるがままに竜巻に飛ばされ、雫に打たれる。
だが多くの人の怒りを買ったくそビッチには、これぐらいの罰はまだ軽い方だ。
そう、ずっとあいつに恨みを抱いている人は、まだ一人いる。それは……
「胸がデカくて悪かったわね、この下劣なヘビが」
ものすごく機嫌が悪そうな美穂は、しきりに釘ボールを上に投げながら、くそビッチを見下ろしてこう言った。
「もう二度と、その汚い口が利けないようにしてあげるわ」
憎き敵にトドメを刺すべく、美穂は釘ボールをくそビッチのいる方向へ放り投げ、手をかざした。
すると釘ボールは美穂の超能力により体積が増大し、重力を受けてくそビッチを押し潰そうとする。
「ドンッ!」
重い物音と共に、くそビッチは巨大な釘ボールの下敷きになり、跡形もなく消え失せた。
その光景を目撃した俺たちは興奮してかつてない笑みを浮かべるが、仲間意識をもったく持っていない土具魔にとってはどうでもいいことだった。
「でぇ、虐殺プレイはもう堪能したか? 貴様らはいつも俺様をサイコパスだの殺人鬼だの呼ばわりしてやがるが、貴様らも人のことが言えねえじゃねえか!」
まるでこのような事態を予想したかのように、土具魔はまたしても上から目線で俺たちを批判しやがる。
だが、これで俺たちが動揺するとでも思ったら大間違いだぜ。
「俺たちをてめえと一緒にすんじゃねえよ! あのくそビッチが俺たちを愚弄したから殺意を煽っただけで、ただ殺人を楽しんでいるてめえとは違う!」
「あーあ、またそれかよ。目的が違っても、本質的には同じなんだよぉ! 言い訳をしても無駄だからなぁ!」
俺の反論をものともせず、声を張り上げて異議を唱える土具魔。
ちくしょう、こういう奴に限って頭が悪いと思っていたのに、何でそんな哲学者の一面を持ってるんだ? 実にムカつくぜ。
しかし、土具魔の理論はそこで終わることはなかった。
「そもそもなぁ、貴様らがここまで団結できたのも、何もかも俺様たちのおかげなんだぜ!」
「何だと!?」
何言ってんだ、こいつ。俺たちが団結できたのはこいつらのおかげだと? バカバカしいにも程があるぜ。
「へっ、貴様のことだから、絶対納得いかないだろうと思ってたぜ。いいだろう、この俺様が親切に教えてやるぜ!」
それにこいつ、俺の考えてることをよく分かってやがる。そこはまたムカつくぜ。一体何なんだ、こいつは?
「よく思い返してみろや! 貴様らがこうして俺様たちに喧嘩を売ってきたのは、自分の仲間たちが侮辱されたってことでいいんだよなぁ!?」
「何を分かり切ったことを。こんなのって当たり前じゃねえか」
「だが俺様たちがいなけりゃ、貴様は今頃何をしていた!? 修羅場の後始末に悩んでいるに決まってるぜ!」
「ふざけやがって……! あれはてめえのくそビッチが引き起こした事態じゃねえか!」
「だが貴様が浮気してることに変わりはねえだろう? たとえ乱があんなことをしなくても、あのようなことはいずれ起きるだろう」
「くっ……」
惑わされるな、秀和! あいつの言ってることは、全部デタラメだ……!
なのに、何故俺はまた返す言葉が見つからないんだ……? やはりあいつの言ってることが正しいからか?
「へえ、脱兎組のリーダーが浮気してるんだ! 最初はロクな人に見えないけど、やっぱ大したことないんだよね」
「二股とは、なんてうらやま……いや、憎たらしいヤツだ! 燃やし尽くしてやる!」
「おい見ろや、あの青い髪の美女! すげえ上玉だぜ……いくら払えば寝てくれるんだぁ?」
「あの金髪の子、見た目はあんなに派手なギャルみてえなのに、案外気が弱そうだぜ……うまくいけば落とせそうかもなぁ、へっへっへ!」
土具魔のせいで、俺の黒歴史が恋蛇団の連中の耳に入ってしまった。詳しい事情を知らない奴らは、勝手に都合のいいように解釈し、俺たちをいやらしい目で見やがる。
俺がバカにされるのはもう慣れたけど、千恵子と菜摘までバカにするのは許せねえぞ……!
「土具魔……どうやらてめえもあのくそビッチと同じ目に遭いてえみてえだな!」
怒りに満ちた俺は、稲妻を落としてさっき悪口を言っていた連中を懲らしめてやった。
「ほぉら、すぐそうやってムキになりやがる! やっぱり俺様の言ってることは正しいみてえだな、おい!」
「デカい口を叩けるのも今のうちだぜ。てめえを倒せば、すぐに今まで話してたことを撤回させてやるぞ」
いらつく俺は、指を鳴らしながら土具魔を脅している。いくらあがこうと、今日こそ俺はこいつを叩き潰すっ!
「まあ、話は最後まで聞けや。実は世の中は、俺たちのような『悪いやつ』をある称号で呼んでいるぜ」
「ふんっ、この期に及んでまだ戯れ言を……まあいいぜ、言ってみろよ、その称号とやらを」
「そいつはなぁ……『必要悪』だぜ!」
「はぁ?」
土具魔はウザいドヤ顔を浮かべ、両手を広げると肩を竦めた。そのやけにムカつくポーズのせいで、俺は奴に対する憎悪感がさらに増大した。
「さっきも言っただろう、貴様らがこうして団結できるのは、全ては俺様たちのおかげなんだぜ! 現に貴様らは自分のことを棚に上げて、全ての罪を俺様たちに擦り付けているのだからなぁ!」
この野郎……まるで俺たちが本当の悪人みてえな言い方をしやがって!
だがこの時、反論の糸口が見つからない俺の代わりに哲也が動き出す。
「どうやら、君は『必要悪』の意味を履き違えているようだね。いや、自分の悪さを正当化している、と言ったほうが妥当かな」
「あぁん? 何だそこのメガネは? 貴様はこんな弱っちいやつに頼らなけりゃならねえほどダメになっちまったのかよ、秀和! はははははっ!」
土具魔の大笑いに反応して、他の雑魚どもも一斉に笑い出す。マジムカつくぜ。
「いいかい、秀和。彼が言っている『必要悪』は、『よくないことだけど、組織や社会などにとって必要とされること』という意味なんだ。お酒やタバコなどはこれに該当するんだ」
「なんだ、俺が嫌いなものばっかりじゃねえか。こんなものせいで、どれだけ無実な人間が死んだことか」
「ああ、確かにそれらは他人に迷惑をかけているが、完全に禁止すると悪い人たちに悪用され、かえって大きなデメリットをもたらすかもしれないから、やむなく世間に流通させているんだ」
「ああ、そういうことか。それはなんとなく納得できるな。で、土具魔が言っているアレは……」
「恐らく彼が言いたいのは『仮想敵』だろうね。『必要悪』の意味を履き違えたのか、それとも自分の悪さを正当化しているのか。まあ、後者の可能性が高いと思うがね」
「まあ、どっちにしても、あの野郎の汚名は拭えないけどな」
「ああ、確かにそうだね。さて、そろそろあのお喋り好きな奴を本格的に黙らせようか」
「そうだな。いい加減、あいつの屁理屈に聞き飽きたぜ」
俺は腕を動かし、憎き土具魔をぶっ倒そうと張り切る。
だがその時、予想外のことが起きた。
「ううう……いったいワァ……」
なんと巨大な釘ボールに潰されたはずのくそビッチが、おもむろにこっちに向かって歩いてくる。
「おう、乱じゃねえか。よく無事で済んだな」
「無事じゃありませんよ、土具魔さま! 危うく死ぬところだったわ……」
自分の頭を揉んでいるくそビッチは、まるで何事もなかったかのように愚痴を零す。
「う、ウソでしょう! あんな攻撃を受けてまだ生きてるなんて……」
信じがたい事実を目の前にして、美穂は思わず驚きの声を上げる。傍らでそれを見ている千恵子と菜摘も、驚愕で目を見開く。
「へっ、どうやら貴様らの全力もここまでのようだなァ! さて、そろそろこのバカげた戦いを終わりにしようぜ、乱!」
「ええ、もちろんそのつもりです、土具魔さま!」
俺たちはまた悪戦を強いられるのかと思いきや、事態は思わぬ方向に発展する。
「でも死ぬのは……アナタの方よ!」
突然、くそビッチは服に忍ばせておいたナイフを取り出し、何故か土具魔の胸に刺した!
これは一体、どういうことなんだ!?
聡「えええええ!? ここに来て仲間割れかよっ!?」
直己「まさかあの子はスパイだったのか! うん、ありえない話じゃないよな」
千恵子「よかったですね、秀和君。これでやっとこの戦いに終止符が打てます」
秀和「いや、あの土具魔のことだ。ナイフ一突きでくたばるような奴じゃねえ」
菜摘「何事もポジティブに考えようよ、秀和くん! たとえ死ななくても、大きなダメージを受けることに変わりはないよ!」
秀和「いやまあ、確かにそうだけど……」
土具魔「ぐわああああああ!!! 何をしやがる、このくそアマァが!」
乱「アァ、なんてステキな叫び声……もっと聞かせて……♥」
土具魔「何を言ってやがる、くそアマ! 早く土下座して謝りやがれ、今でも遅くねえぞ!」
祭「……なんて見苦しい姿でしょう。戦いの最後は死という結果しか残らないことを、何故理解できないのですか?」
美世子「しかも仲間にナイフで刺されるなんて、この世も末だわ」
静琉「ねえ十守、あなたはどう思うかしら?」
十守「簡単なことでしょう。男の方にDVをされ続けて、女の子がついにかっとなってナイフを刺した……ただの夫婦喧嘩じゃない」
碧「それなら、あの女の人がずっと感謝するのがおかしいのでは……?」
十守「上辺の現象に惑わされちゃダメよ、碧。きっとあの女の子は、反撃のチャンスを伺ってたのよ」
碧「そ、そういうことなのでしょうか……?」
十守「まあ、きっとそのうち分かるよ、そのうちね」
雅美「いかがでしたか、皆様? ドブネズミを痛めた気分は?」
秀和「こんなじゃ全然もの足りねえぜ。次は火炎放射器でも使って燃やしてやるか」
雅美「それでしたら、ダーリンが付けている腕をお貸し致しますわ。きっと満足して頂けると思いますわ」
秀和「マジか? 1ダースをくれ」
正人「おいおい、さすがにそれはやりすぎだろう……」
秀和「あのな……もし雅美が菜摘と同じ目に遭ったら、まだ同じことが言えるのか?」
正人「そ、それは……」
秀和「だったら口を挟まないでくれ。頼むから」
雅美「そうですわよ、ダーリン。他人の恋を邪魔するような輩は、ちゃんとお灸を据えませんと」
正人「雅美まで……まあ、程ほどにな? ミディアムレアまでにしてやれよ」
秀和(ミディアムレアまでならいいんだ……)




