表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
反逆正義(リベリオン・ジャスティス)Phase One——Ten days in heaven(or in hell)  作者: 九十九 零
第3章 兎蛇の戦編・激化する衝突
93/120

リボルト#13 傷ついた兎と砕けたダイヤモンド Part6 沸き上がる怒りの執念

 まずはどこから手を付けるか……そうだ、ここはやっぱり機械に強いあいつに頼まないとな!

 そう思うと俺は足を運び、人が一番多いであろうロビーに移動した。


「おい聡! いるのか!?」

「うわっ、ビックリしたぜ! なんだよ、いきなり大声出して!」

 ゲームに夢中になっている聡は俺の声に慌てふためき、危うくゲーム機を落とすところだった。

 ったく、こんな真剣な時にもゲームをする余裕があるとは……まったく緊張感がねえぜ。

「仕事だ。ちょっとお前の部屋を借りるぜ」

「おっ、またオレの力が必要な時が来たかぁ!?」

 自分の存在感を感じて、聡は嬉しそうにソファから立ち上がる。

「ああ、その通りだ。だからゲームなんてやってねえで、さっさと動け!」

「分かってるって! ったく、少しは落ち着けよ、リーダー!」

「お前こそ落ち着きすぎてるぜ。仲間があんなことされてるのに、何とも思わないのか?」

「思ってるさ! けど焦ってもどうにもならねーだろう?」

「いや、確かにそうだけど……お前がそんなことを言うとは思わなかったぜ」

「オレを見くびるなよっ! ってかそんなことより、早く行こうぜ!」

「ああ、そうだったな。それじゃ案内を頼んだぜ」

「おう、オレについてこい!」

 こうして俺は聡に案内され、彼の部屋に入った。


「うわ、相変わらずめちゃくちゃ散らかってるな、ここ」

 部屋の中で乱雑に置かれている部品を見渡して、俺は思わず愚痴を零す。

 だが聡は恥じるどころか、自慢げに自分の怠惰(たいだ)に言い訳をする。

「オレはこのほうが落ち着くんだよ! キレイすぎると逆に寝つけねーからなっ!」

「気持ちは分かるけど、たまには片付けろよな?」

 まあ確かにいくら散らかっても、慣れてくると自然にものの場所が頭に刻み込まれるけど、さすがにこの具合は普通じゃねえな。

「んで、仕事ってなんだ? ちゃんとやりがいがあるヤツなんだよな?」

 聡は仁王立ちになって、俺に依頼の内容を尋ねる。

「ああ、もちろんだぜ。百華のこと知ってるか?」

「ももか? えっと、あの車椅子の子のことか?」

「へー、よく覚えてるじゃねえか。彼女の車椅子を、戦闘用のものにアップグレートしてほしいんだ」

「ほほーう、ずいぶん面白そうじゃん! で、具体的にはどうすりゃいいんだ?」

 俺の話に食いついた聡は、嬉しそうな顔を浮かべる。

「レバーで動かしたり、バルカン砲を仕込んだり、ターボエンジンで加速したり、そういう感じの奴を付くって欲しいんだ」

「オッケー、なるほど! けどさ、バルカン砲はどうすりゃ手に入れるんだ?」

「忘れたのか? 俺たちには、ちょうどいい武器庫があるじゃねえか!」

 俺はそう言いながら、親指で窓の外を指さす。これなら聡も分かってくれるだろう。

「そうか、レッド・フォックスの連中から借りればいいのか! おまえ、なかなかいいアイデアを考えたじゃん!」

「あったりめえだ! 俺を誰だと思ってやがる!」

 テンションが高くなって興奮した俺は、思わずアニメのセリフを口にする。くうー、何だかすげえ気分がいいぜ。


「よっしゃ、早速始めるとするか! ちっと時間がかかるけど、気合いを入れて明日の朝までに間に合わせてやるぜ!」

 聡は鉛筆を手に持って、白紙に設計図を描こうとする。ウキウキしてるその様子からだと、きっと真剣にやってくれるに違いないだろう。

 こいつ、普段は不器用に見えるけど、いざという時はちゃんと役に立つじゃねえか。

「ああ、分かった! それじゃ俺はバルカン砲を用意してくるから、頑張れよ!」

「おう、期待してろよ! あっと言わせるようなヤツを作ってみせるぜ!」

 熱気を帯びた言葉に感染したからか、体が熱く感じるのが分かる。そんな思いを胸に抱きながら、俺は一旦聡と別れて、レッド・フォックスのもとに移動する。

 もちろん、ただ一人だけの装備を強化してもあまり意味がない。他のみんなの分も、ちゃんと品質改良(アップグレード)しとかねえとな。

 俺はもう一度ロビーに足を運び、ある人物を探す。


「小春、いるのか?」

「あら、秀和さんではありませんか。どうかしましたか?」

 俺に声をかけられ、小春はキレイな笑顔で返す。あまりの美しさに、一瞬千恵子と見間違えるところだったぜ。

「ちょっと頼み事があってさ。手伝ってくれないか?」

「ええ、もちろんですとも。何でしょうか?」

「小春は確か、アイテム開発担当だよな? 俺たちの装備を強化してほしいんだ。恋蛇団(ウロボロス)の連中に、力の差を徹底的に見せつけてやりたいんだ」

「あら、それはいいですね。是非協力させてください」

 小春は快く、俺の依頼を引き受けてくれた。話が分かる人でよかったぜ。

「そうだ、あとバルカン砲が一門ほしい。そっちにはあるか?」

 大事なことを思い出した俺は、正人に質問を投げる。

「それならあるぜ! こんなこともあろうかと思って、車に一門乗せといたぜ! いや~、運がよかったな、秀和!」

 正人は爽やかな声を発しながら、俺の肩を叩く。

「マジか!? そいつは助かるぜ!」

 それを聞いた俺は、思わず興奮して大声を漏らす。


「ちょっとお待ちなさい! そんなものを何に使いますの?」

 突拍子もない話に戸惑った雅美は、目を見開き俺に問いかける。

「それはな、百華の車椅子を強化しようと思って、こいつが必要だってわけ」

 だが俺の答えを聞いた友美佳は、驚きの色を隠せなかった。

「えええええええー!??? あんた正気なの!?」

「そりゃもちろん、正気だけど」

「ふざけるんじゃないわよ! 百華のような、体が不自由な子を戦わせるつもり!? もし何かあったらどうするの!?」

 友美佳は、友達を大切に思う気持ちは誰よりも強い。だから親友である百華に危ない目に遭わせたくないだろう。

「まあまあ、そう怒るなって。友美佳だって、恋蛇団の連中がどれほど残酷な奴らか分かってるはずだろう?」

「だから、なおさら百華を戦わせるわけには……!」

「いやいや、逆に考えるんだ。もし万が一、百華が一人になるようなことがあったらどうするんだ? 自分を守る方法を、一つぐらい身に付けてもいいと思うぜ?」

「そんなことはさせないわよ! あたしが百華を守るから!」

 友美佳は俺の意見に反論しようと、必死に怒鳴っている。


「大した度胸だ、そこは褒めてやる。だが、100パーセントは保証はできるのか?」

「で、できるわよっ!」

「言うだけなら誰にだってできるぜ。俺だって、みんなを守ると誓ったんだぜ? ところが、現にこんなことが起きちまったんだ。それに奴らの手口は、決してこんなものだけじゃない。それでも君は同じことが言えるのか?」

「そ、それは……」

 俺の言葉に圧倒され、ついに友美佳は口をつぐんだ。

「これで分かったか、そんな甘えた気持ちじゃ戦いに勝てやしないんだぜ」

「ううっ……ねえ百華、狛幸くんがあんなこと言ってるけど、いいのかしら?」

 (わら)にも(すが)る思いで、友美佳は百華に意見を求めはじめた。

「ええ、大丈夫でございますよ。ワタクシはその方が、面白いと存じますので」

「お、面白い!? あんた、どんだけ楽天家なのよ……」

 百華の予想外の答えが、またしても友美佳を驚かせた。


「さて、お話もまとまったみたいですし、それでは皆さん、車に参りましょうか」

「ああ、そうだな! よし、行くか!」

 小春に案内され、俺たちはレッド・フォックスの移動部屋に着く。

「では、まずは何から始めましょうか?」

「そうだな……まずは菜摘だ。彼女の戦法は罠を設置するものだけど、あれだけ多くの道具が入ったバッグを持ち歩くのは戦闘には不向きだ。もう少しコンパクトな感じにできればなぁ……」

「なるほど、小さくて運びやすくて、でも多種類の罠を設置できるようにしたいと、そういう感じですね」

 小春は頷きながら、スマホで俺の要望を記録する。

「ああ、そうだ。次は哲也だ。彼の武器は盾だが、タックルだけじゃ与えられるダメージには限度がある。もっと殺傷力のあるものがほしい」

「はい、了解しました。他には何かございますか?」

「千恵子にもっと威力のある刀を作ってくれ。ライトセイバーみたいな奴を頼む。広多の鎌を、自由に伸縮できるようにしてくれ。それから……」

 俺は自分が思いついたアイデアを、一つずつ小春に伝える。

「これでよろしいでしょうか?」

「ああ、そうだ。少し大変だろうと思うけど、これもみんなの戦力を強化するためだ。頼む」

「はい、任せてください」

 これだけ無茶な依頼をすればきっと怒られるだろうと俺は思っていたが、小春はそういった様子がまったくなく、いつも通りに微笑んでいる。

 しかし、妙は眉をひそめた。


「ちょっとちょっと! 一気にこんなにたくさんの注文をしたら、小春ちゃんの体が持たないよ! これは衣装作りとは違うんだから!」

「そ、そうだったな……小春、どれぐらいかかるか分かるか?」

 心配した俺は小春に所要時間を尋ねるが、返ってきた答えは俺の予想を遙かに超えた。

「そうですね……明日なら、いえ、早ければ今夜に完成できそうです」

「うそっ!? 早すぎない!?」

 小春の答えを聞いた妙は、思わず驚きの声を上げた。俺も驚愕のあまりに、口が無意識に開いてしまう。

「はい、何とかしますから」

 またしても小春は余裕の笑顔を見せて、口癖のあの言葉を口にする。一体何をどうするというのだ?

「それでは作業に取りかかりますので、一旦外に出て頂けますか?」

「そうだな、邪魔するのもよくないし……それじゃ後は任せたぜ、小春!」

「はい、ご安心ください。必ず最高のものに仕上げますから」

 こうして俺たちは小春と別れ、移動部屋の外に出た。

 寮に戻る途中で、千恵子は俺にこんな質問をした。


「あの、秀和君……」

「ん? どうした?」

「少し気になることがあるのです。先程小春さんにあれだけ装備強化の依頼をたくさん出しましたが、秀和君はご自身の装備は強化しなくてもよいのですか?」

「そうだな……俺はこの千里の一本槍さえあれば十分な気がするけどな」

「まあ、さすが秀和君、大した自信ですね」

「いや、でも念のために一旦隠れ家(セーフハウス)に行ってくるぜ。ユーシアの強化も(おこた)るわけにはいかないからな」

「そうなのですか。では、わたくしは先にお昼の準備をしておきますね」

「悪いな、いつも気を遣わせちまってさ」

「何をおっしゃるのですか。わたくしたち、仲間ではありませんか」

 この言葉を言った時の千恵子の声は、どことなく優しかった。

 その眼差しも、普段と違って見える。そう、まるで愛する人を見守るような感じだった。

 そうだ、俺は一人じゃない。こんなにもステキな仲間たちがいるのだから。彼らを守るためにも、俺はしっかりしねえとな。


 こうして俺は聡の部屋、レッド・フォックスの移動部屋と隠れ家の三カ所を何度も往復し、作業の進み具合を確認していた。

 あまりにも夢中になりすぎて昼飯のことを忘れていたため、心配していた千恵子はご飯を弁当箱に入れて、わざわざ俺のところに持ってきてくれた。何だか申し訳ないことをしたな。

 いや、逆に考えるんだ。みんなは俺のことを信頼してくれて、こうやって色んなサポートをしてくれてるじゃないか。本当に申し訳ないと思うのなら、自分を責めるよりもっと意味のあることをするべきだ。

 恋蛇団とブラック・オーダーの連中をぶっ倒して、自由を取り戻すんだ! それに菜摘を弄んだ借りもちゃんと返さねえとな!


 気が付けば、外は既に夕方になっている。夕日に染められたオレンジ色の空は、どことなく重々しい雰囲気が漂う。

 そう、まるで壮絶な戦いを告げるかのように。それに戦いが起きれば、きっとまた誰かが血を流すことになるだろう。

 こう見えても、俺は争い事があまり好きじゃない。だが俺たちの誇りを汚すようなことをされたら、このまま黙っちゃいられねえ。

 首を洗って待ってろよ、恋蛇団……!!

 さあ、復讐の時間だ!

次回予告


秀和「よっしゃ、装備も一新したことだし、明日は早速殴り込みだ!」

聡「おう、やってやろうぜ! オレたちの実力を侮ったことを後悔させてやるじゃねーか!」

直己「麗しい乙女(はな)を泣かすなんて、マジ許せねーぜ! おれの自慢のパンチで、ぎゃふんと言わせてやるっ!」

広多「貴様ら、また呑気なことを……まあ、やる気があるだけでましか」


千恵子「菜摘さん、もう大丈夫でしょうか?」

美穂「無理しなくてもいいのよ、菜摘」

菜摘「ありがとう、千恵子ちゃん、美穂ちゃん。もう大丈夫だから、心配しなくていいんだよ」

美穂「それならいいけど……今度アイツらに会ったら、アンタの仇を討ってやるからね!」

千恵子「わたくしもご協力致します。あのような悪行、見過ごすわけには参りません」

優奈「そうよそうよ! あの赤い目の子、本当にありえないんだから!」


秀和「待ってろよ恋蛇団……今度こそ叩き潰してやるぜ!」

???「お止めください! これ以上の暴行は許しません!」

秀和「……? 誰だお前は?」

???「『お前』とは失礼ですね。私の名前はか……」

作者「おっと、これ以上はいけない! 君の出番はまだだから、ここで終わらせてもらうよ!」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ