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反逆正義(リベリオン・ジャスティス)Phase One——Ten days in heaven(or in hell)  作者: 九十九 零
第3章 兎蛇の戦編・激化する衝突
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リボルト#12 陥落する黄金の楽園 Part5 乱戦の末

 土具魔の全身は黒い火焔と化し、俺に迫ってきやがった。近付いてきた瞬間に、奴の両手はまるで野獣の爪のように俺を切り裂こうとする。

 俺はとっさに両手のひらに稲妻を纏わせ、奴の両手を捕まえて攻撃を停止させた。そのあまりにも強い力に、俺の両手がその衝撃に抵抗できず、震え続けている。

「秀和! 今助けに行く!」

 そんな苦戦中の俺を見て、哲也は慌ててこっちに走ってきて俺に加勢しようとする。が、しかし……

「おい! テメェの相手はこのオレだぁ!」

 空から凶牙の恐ろしい雄叫びが響く。声がした方向を見ると、なんと凶牙は空から急降下して、哲也に向かって蹴りを繰り出している。その足には、とてつもない気圧を感じる。

 自分が標的(ターゲット)にされていることを知り、哲也はすかさず盾を構え、凶牙の攻撃を防いだ。しかし凶牙の操る風がかなり強く、彼は何メートルも後ろに飛ばされてしまった。

「哲也!」

 大切な親友のそんな姿を見て、俺は思わず視線を移して心配の声を上げた。

 だがすぐには、土具魔の(あざけ)る声が俺の耳に流れてきやがる。

「おいおい、今は他人の心配してる場合かよぉ?」

 認めたくねえが、確かに奴の言う通りだ。さっきと違って、今は3対3だ。先ほどのような、1人だけに集中する戦法が効かなくなる。

 それに、最悪なのはこれだけじゃない。


「オラオラ! これでも喰らいなっ!」

 今度はあのじゃじゃ馬だ。しかもいつの間にか床にヒビが入って、その裂け目から鉄の針がどんどん溢れてきやがる。みるみるうちにこっちに近付いてくる。

 このまま土具魔を牽制すれば、その鉄の針を利用することである程度奴にダメージを与えられるが、そうなると俺も巻き添えを食うことになるだろう。

「おい、どうしたぁ? このままだと、あのドデカい針に刺さっちまうぞぉ~?」

 それにあの土具魔のことだ。きっとこうなることも奴の想定内だろう。俺が奴を牽制できたと思わせておいて、鉄の針が近付いてくる瞬間にまた火焔になって消えることもありうる。そうなればダメージを喰らうのが俺だけだ。

 くそっ、ここは一旦奴から離れるしかねえか……!

 俺は両手を放して、後ろに下がった。土具魔に痛い目にはあわせられなかったが、幸いこっちも傷付かずに済んだ。

 なるほど。他の奴の攻撃も、こっちに影響が及ぶってわけか。今まで以上に面倒くさいことになりそうだが、実戦ってこういうものだって割り切ったほうがいいかもな。


「へっ、結局放すのかよぉ! やっぱり貴様はチキンだなぁ!」

「わりぃな、俺はヒレカツのほうが好みなんだ」

「食べ物の話をしてんじゃねえよぉ、バカがぁ!」

 よし、奴の集中力が散漫になった今のうちに……!

 俺はもう一度稲妻を足に纏わせ、ダッシュで土具魔との距離を縮めた。

「ん!?」

 どうやら奴は俺のこの行動を予想できず、目を丸くして驚いたようだ。これはチャンス!

「はああああ!!」

 俺の右手の拳は稲妻を迸らせ、ズズズと唸っている。そしてこの拳は、外れることなく土具魔の腹に命中し、それを深く凹ませた。

 へっ、実にいい気分だぜ。昔を思い出す……いやいや、なに考えてんだ俺は! もうあのイヤな頃を忘れるって決めたんだろうが!

 だがあの不快な声が、またしても俺に付きまとう。


「はははははっ! どうだ秀和、あの頃を思い出すだろう? もっとオレと一緒に楽しもうぜ!」

 イヤに爽やかな声で笑っている凶牙は、まだ空を自由自在に飛んでいる。その足元にはスケボのようなものがあるが、雲のように風になびいているみたいだ。

 平たく言えば、いわゆる「金斗雲(きんとうん)」みたいなやつだ。それが奴の資質(カリスマ)ってわけか。

「いい加減にしやがれ、凶牙! 俺はてめえと遊んでる暇はねんだよ!」

 ちっ、ただでさえ忙しいってのに、これ以上邪魔が入ってきちゃたまったもんじゃねえぜ……!

 こうなったら手加減はしねえ。俺は千里の一本槍を連発して凶牙を撃ち落とそうとするが、奴の超スピードには追いつけない。

 ったく、まるでハエ叩きを持って飛び回るハエを追ってるような気分だぜ。

「おいおい、あんま無茶すんなよ? P2(ピー・ツー)が足りなくなっちまうぜ~?」

「この野郎、調子に乗りやがって……!」

 俺を見下ろしながら挑発する凶牙のいやらしい笑顔は、俺の神経を逆なでする。

 こうした状況で、自分以外にも戦っている仲間がいることをすぐ忘れてしまう。

 突然、凶牙の真下から衝撃波が現れ、奴がそれをマトモに喰らって落ちた。

「あまり自分の世界に浸ると、周りが見えなくなるって話を知らないのかい、今籠?」

 地面に伏せている凶牙を見下ろして、哲也は理論的な言葉を口にした。

「光橋哲也ァ! またしてもオレの邪魔をしやがってぇ!」

「そっちこそ先に、秀和の邪魔をしたじゃないか。彼の親友として、それを見過ごすわけにはいかないからね」

 凶牙の恐ろしい顔を目の前にして、哲也はまったく動じることなく、いつものようにメガネを押し上げた。

「ぶっ殺す……決めたぜ、今すぐぶっ殺してやる!」

「ふんっ、かかってくるといいさ。そんな非理性的な言動、すぐに身を滅ぼすことになるぞ?」

「脅かしてもムダだァ! おりゅああ……ぐわっ!?」

 勢いよく前進し始めた凶牙は、急にうめき声を上げた。なぜなら奴の首筋は紐に引っかかり、顔を仰向けて倒れた。

「ふふーん、首締めトラップ大成功~!」

「だから言ったじゃないか。身を滅ぼす、とね」

 凶牙のそんな間抜けな姿を見て、菜摘と哲也は笑顔を浮かべた。

 だがパーティの参加者は他にもいることは、忘れてはいけない。


「ふーん、相変わらず下劣な罠を使うじゃんか、菜摘」

 中学の頃に菜摘の罠戦術に引っかかったことがある召愚弥は、軽蔑(けいべつ)の目で菜摘を見据えている。

「こ、これは戦術だよ! 人聞きの悪い言い方をしないで!」

 そんな痛い視線を浴びている菜摘は、慌てて自分のやったことを説明した。

「まあ、どうでもいいか。とにかくあんたがあたくしにくれた痛みを百倍、いや千万倍にして返してやらねえとな、ゴラァ!」

 女の子とは思えないその荒い言葉遣いは、まるで戦車のように威圧感を放っている。そして彼女は片足を高く上げると、その靴の鋭いかかとは刃みたいな銀色に光った。

「さあ、踊ろうぜ! 死の円舞曲(デス・ワルツ)!」

 召愚弥は言い終えると足を地面に下ろし、かかとが衝撃により火花を散らす。そしてその火花はまるで生きているかのように、こっちに飛んできやがる。

 だが、危険はどこからでもやってくる。

「くらいやがれぇ! トルネード・スラスト!」

 いつの間にか体勢を立て直した凶牙は、またしても空を飛びながら、俺たちに突進しやがる。

 俺たち三人は背中合わせで、迫ってくる敵を見つめている。

「ど、どうすればいいの、秀和くん?」

 この絶体絶命の状況で、菜摘は慌てた声で俺に質問する。もちろんそれはもう考え済みだけどな。

「簡単なことだろう。凶牙が接近してくる瞬間に奴の攻撃を避けて、召愚弥にぶつけさせようぜ」

「まさに一石二鳥だね。僕はその作戦に賛成さ」

「じゃあ、決まりだね!」

 そんなことを言ってるうちに、凶牙は既に俺たちの目前にいた。

「ぶつぶつ何言ってんだぁ! おとなしくそこでやられろ!」

「残念だが、そうはいかねえよ」

「なっ……!?」

 俺たちは間一髪で凶牙の攻撃をかわした。そして奴はこの予想外の事態に対応できず、あまりに速すぎるスピードでブレーキが効かないため、召愚弥に衝突した。


「おいコラァ、頭を人の服の中につっこむんじゃねえ、このドスケベがぁ!」

「テ、テメェこそ、そんな動きにくそうな長いドレスを着やがって……! ぐわぁ! 殴るんじゃねぇ!」

 凶牙の頭部が召愚弥のヒラヒラ衣装に包まれ、ハーレム系アニメではよくあるラッキースケベシーンが現れた。もちろんその結果として、凶牙は召愚弥の連続パンチを浴びることになる。

「へっ、ざまぁ見やがれ」

 俺は小声で二人の災難を笑うと、振り向いて親玉の土具魔を探し始める。が、その途中でとんでもない光景を見た。


「くっ……! なんて強い力なのですかっ……!」

「さっさとくたばりなさいよ、この男タラシがぁ!」 

 少し高いところに、千恵子が例の赤目少女・蘭青 乱と戦っているのが見える。千恵子の刀と乱の針がぶつかる度に発する金属の音が、戦いの激しさを物語っている。

「あれ、あの子が変装した妙ちゃんなんじゃ……」

 まだ状況を飲み込めていない菜摘は、目を丸くして二人を見ている。

「どうやら、そっちは本物みたいだな」

 全身の神経を引き締めている俺は、険しい声を出して菜摘の質問を答えた。

「ああ。トランクケースも持っていないしね」

 同じくこの場面を目撃している哲也は、自分の推理を口にして俺の意見に賛成した。

 そんなことより、もっと心配するべきことがある。昨日あいつが出した黒い霧に包まれた時に、千恵子が変わり果てたあの姿は今にもはっきりと覚えている。

 もう二度と、千恵子をあんな姿にはさせたくない。いや、させるわけにはいかないんだ!

 そう思うと、俺は千恵子の応援をしようとすぐに体を動かそうとするが、そううまく行かないのが現実だ。


「おい! 忘れたのかよぉ、この俺様の存在を!」

「ぐわっ!?」

 やべえ、こいつを忘れてた!

 横から突進してくる土具魔による衝撃があまりにも強く、俺はどうすることもできず遠くまで飛ばされた。

「へっ、いい表情だぜぇ! もっと苦しめぇ!」

 不意打ちに成功した土具魔は醜い笑顔を浮かべ、俺に接近してきやがった。すると次の瞬間に奴は片足を上げ、倒れている俺の体を踏みつけようとする。

 くそっ、こんな時にどうすれば……!

 ちょうどその時に、突然ケツに何か固い感触が感じる。俺は条件反射でそれに手を伸ばした。

 はっ、これは……! そうだ、これを使えば……!

 俺は腰にかけているポケット・パートナーを外し、それを土具魔のいる方向にかざす。


「出番だ、ユーシア!」

「は、はいっ!」

 俺の声に応じてユーシアは姿を現し、まるでこの場の状況を知っているかのようにしゃがみながら、真剣白刃取りのポーズで土具魔の足を受け止めた。

「けっ、切り札を隠し持っていやがるとはなぁ……まあ、俺様にとっちゃ殺せる奴がまた一人増えたけどなぁ! はははははっ!」

 そう言うと、土具魔はまたしてもその醜い笑顔を歪ませ、ユーシアに掴まれている足に火を付けやがった。

「ひゃあ! あ、熱いです……!」

 もちろんユーシアはそれに抵抗するはずもなく、慌てて自分の手を放した。

 彼女は人間じゃないから焦げ跡が残らずに済んだが、もし生身の人間だったらどうなるか、想像もつかねえ。

「くはははは! いいザマだな、おい!」

 狼狽えるユーシアを見て、まるでコメディでも鑑賞しているかのように大声で笑いやがる。

「てめえ、何がおかしいんだよ!」

 その隙に立ち上がった俺は、土具魔のその醜い顔を睨みつけながら怒りの声を上げた。

 しかし土具魔はまったく動揺せず、更に俺を怒らせるようなことを口にしやがった。

「おいおい、そんなムキになってどうすんだよ? ただのデータの塊じゃねえか!」

「うるせえ! てめえに何が分かるんだよ! こいつはな、俺にとっちゃただのデータじゃねえ! 大切な仲間の一人なんだ!」

「マスター……」

 俺の反論を聞いて、ユーシアは感動の表情を浮かべた。その目に浮かぶ光るものは、もしかして涙だろうか? どんなだけハイテクなんだよ、ポケット・パートナーは。

「へっ、これだから貴様は弱えんだよ! 真の強者は、常に一人で勝利を勝ち取るんだぜ!」

 独り善がりな土具魔は、再び全身に黒い炎を纏わせて自慢しようとする。さらに奴は血眼になり、口元を大きく歪ませるとうなり声を上げて俺を威嚇しやがる。

「それにしても、よくここまで『捨て駒(なかま)』とやらに縋れるものだな! いつ死ぬかも分からねえくせに、奴らを失えば貴様はただ泣くしかねえ!」

「だったら、なおさら守らなければならねえ! 大切な仲間たちを失わないようになぁ!」

 それでも俺は動揺せず、強い決意を見せた。

「へっ、どうやら痛え目に遭わなきゃ気が済まねえみてえだなぁ! いいだろう、この俺様が直々に、貴様ら全員を地獄に送ってやるよぉ!」

 そう言うと、土具魔は地面を踏み付けた。その手のひらの上にあるバスケットボールの大きさもある火の玉をからすれば、何やら大技を放ってくるみたいだ。

 だが逆に言えば、今の奴は隙だらけだ。今のうちに奴に大ダメージを与えねえと!


「ユーシア! あいつに撃ち込め!」

 俺は土具魔を指さして、ユーシアに攻撃の指示を与える。

「はっ、はい!」

 ユーシアは応答すると、彼女の前で赤いカバーの分厚い本がまるでワープしたかのように現れた。

「おいおい、ずいぶんとでけえ本じゃねえかぁ! まさかそいつで俺様を殴るつもじゃねえだろうなぁ?」

 土具魔はまったく怯える様子がなく、依然として火の玉を増大させている。

「へっ、もちろんそんな地味なものを使うわけがねえだろう! ユーシアの本当の強さを教えてやるぜ!」

 俺は後ろを見やり、そこでユーシアは分厚い本をめくっている。すると次の瞬間に、彼女はその中から大きな銃を取り出した。

「えっ……えーい!」

 カチンと引き金を押す音がすると、銃口から「トゥトゥトゥ」と騒がしい音がする。黄金に光る銃弾は、土具魔に向かって飛んでいく。

「おいおい、そんなピーナッツみてえなもので、この俺様にダメージを与えられるとでも思ってんのかよぉ!」

 陰険な笑みを浮かべる土具魔は手を動かして、火の玉の位置を調整しつつ銃弾を防いだ。高速で回り続けるそれが、まるで俺たちを嘲笑うかのように銃弾をことごとく飲み込んだ。

 まあ、もちろんそんなことも想定内だ。ユーシアに銃を撃たせるのはあくまで牽制にすぎず、俺が背後から奇襲を仕掛けるのが本意だぜ。

 土具魔がユーシアに注意力をそらされている今のうちに、俺は奴にバレないようにゆっくりと接近し始めた。すると俺は難なく奴の後ろに回ることに成功した。

 よし、まだ気付いてないみてえだな。奴の背中に大きな傷跡を残してやれ!

 そう思うと、俺の右手の稲妻が目の前にいる憎き敵を貫かんばかりに吼えている。

 だが俺は奴に突進して攻撃を仕掛けようとしたその瞬間に、土具魔はその陰険な顔をこっちに向けてきやがった。


「はっ、この俺様が気付かないとでも思ったのかぁ!? これでも喰らいやがれ!」

「ぐわっ!?」

 土具魔の野郎はすかさず手のひらを開き、そこからベースボールの大きさもある弾を飛ばしてきやがった。それが俺の腹に命中し、全身も衝撃により後ろに飛ばされた。

「秀和!」

「秀和くん! 大丈夫!?」

「あ、ああ……まだ生きてるぜ」

 心配する哲也と菜摘の声に、俺はかろうじて返事した。

「はっ、この俺様の攻撃を受けてまだしゃべれるとはなぁ……だが次の攻撃を耐え忍べると思うなよぉ!」

 よく見ると、土具魔がためていた火の玉が異常なほどに大きくなり、俺のような長身の人間を完全に包み込むことも不可能じゃない。

 やべえ、一体どうすりゃいいんだ……!

 仰向けに地面に倒れている俺は、無意識に天井を目にした。そこで俺の目に映ったのが、一番高いところにあるデカいシャンデリアだ。

 突然俺の頭の中で、とんでもないアイデアが浮かんだ。かなりクレイジーだが、ここは一か八かだ!

 俺は再びポケット・パートナーを手にして、土具魔に聞かれないように口をマイクに近付けて、こう呟いた。


「ユーシア、天井のシャンデリアを見てくれ」

「天井のシャンデリア……ですか?」

 俺の指示を受けたユーシアは攻撃を止め、天井を見上げ始めた。それに彼女は土具魔の後ろにいるため、この仕草に気付いてない。

 よし、最後はこのチップをスロットに入れるだけだ……!

 俺は例の衝撃波爆撃ショックウェーブ・バーストのチップを上にある「H」のスロットに入れ、次の瞬間にユーシアの口から大きな衝撃波が噴出し、天井に向かって飛んでいった。

 もちろん、土具魔はその大きな物音に気付かないはずがないが……

「へっ、どこ撃ってんだよぉ、このバカがぁ!」

 弾道がずれたため、奴はユーシアの攻撃がずれたのかと思って油断したようだ。

 ふんっ、バカはてめえのほうだぜ……!

 光速で飛ぶ衝撃波はすぐさまシャンデリアに当たり、安定感の悪いそれがバランスを失い、重力によって墜落してきた。

 巻き添えを喰らう前に、早く逃げねえと!


「おい、逃げんじゃねぇぞぉ! 大人しく俺様の獲物に……」

 走り出した俺を見て、土具魔は攻撃を仕掛けようとするが、火の玉が飛んでくる前にガラスの割れる音が絶え間なく広間で響き渡った。

 振り向くと、そこには床に落ちたシャンデリアの残骸が散らばっている。割れたガラスの破片が反射する光は、まるでダイヤモンドのような輝きだ。

 その下敷きになった土具魔は、周りに血が溢れ出て、小さな池を作っている。

 そんな奴を見て、俺は何の罪悪感も感じず、まるでゴミを見るような目で見下ろしている。むしろ心のどこかで、快感すら覚えたのかもしれない。

「土具魔さまぁ! 土具魔さあああああ!!!」

 この無惨な光景を目撃した赤目少女は、ヒステリックに叫び出した。ふんっ、同情してやるまでもねえな。

 あばよ、サイコパスめ。てめえの犯した罪はこれ以上の苦痛に値するが、そろそろこの戦いに終止符を打つ時が来たようだな……

乱「土具魔さま! 土具魔さまああああ!!! アナタたち、よくも土具魔さまをぉぉぉ……!!!」

秀和「ふん、自業自得だ。こんな奴が生きて喜ぶのは、てめえくらいのものだ」

菜摘「ふう~これでやっと終わったね! それにしても、意外と楽勝だったね」

哲也「ああ、おかしいぐらいにね。さっきはあんな攻撃を受けてもすぐに起き上がれたのに……」

ユーシア「もしかすると、まだ生きているのではないでしょうか……?」

秀和「おい、変なフラグを立てるなよ……まあ、こう簡単に勝てるとは思ってないけどさ」

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