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反逆正義(リベリオン・ジャスティス)Phase One——Ten days in heaven(or in hell)  作者: 九十九 零
第3章 兎蛇の戦編・激化する衝突
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リボルト#12 陥落する黄金の楽園 Part1 大暴れ、準備万端だぜ!

アバン


秀和「さーて、いっちょやるか!」

哲也「あんまり理性的な作戦とは思えないけど、ずっとやられっぱなしでいられないからね」

聡「おっ、待ってたぜ! やっとアイツらをコテンパンにしてやれるのか!」

広多「ふん、腐った連中どもを、この手で葬り去ってくれる」

正人「どんな強いやつが待っているのか~ワクワクするぜ!」

拓磨「やれやれ、お前は相変わらずだな。後で泣いても知らないぞ?」

壊時「オラオラオラァー!!! 全員まとめてぶっ飛ばしてやらぁー!!!」

俊介「落ち着け壊時。戦いに衝動は禁物だぞ?」

直己「喧嘩ばっかり考えるなんて、みんな燃えすぎだなぁ~まあ、おれはカワイ子ちゃんとおしゃべりでもするか……うがっ!」

リボルト#12 陥落する黄金の楽園

The fallen golden paradise


 今日はこの人間地獄に来てもう5日か。朝ご飯を済ませた後にロビーに来た俺は、心のざわめきが止まらない。

「……やっとてめえを始末できる日が来たな、このイカレ野郎め」

 目の前に映る憎たらしい土具魔の笑顔を見ていると、胸の中はまるでマグマが溢れているように熱く感じる。

「てめえのようなクズ野郎がいるから、何人、いや何匹の無実な命が落とされると思ってんだよ!」

 まだ昨日出会ったばかりだったが、その強烈なインパクトや傍若無人な態度を思い出すととても腹立つ。

「確かにてめえは強い。けどな、こっちだって決して弱くねえからな! 昨日は二度も攻められたけど、今日は倍返し、いやそれ以上にしてやるぜ!」

 俺の決意が、怒りとともに強まっていき、握り締める二つの拳が震えている。

「待ってろよ……今すぐてめえを始末してやるからな! はぁあ!」


 そう言うと俺は腕を大きく振り被り、両手に握っているダーツを丸いボードに貼ってある土具魔の写真に向けて投げつける。

「せい! とりゃ! 当たれ!」

 増幅していく俺の憤怒が掛け声となって爆裂し、ダーツに託して土具魔の憎たらしい顔を貫こうとする。

 手中のダーツを全部投げ終えると、俺はボードに近付けて自分の誇らしい戦果を確認する。

 不愉快なオーラを放つ両目と汚い鼻の穴、いやらしく歪むその唇と、ちぎりたくなるその二つの耳が、全部命中した。

「よし、やったぜ!」

 ふん、実にいい気分だ。


「おっ、朝からやる気満々だな」

 後ろから響く元気な声の源を探すべく、俺は振り向く。そこには正人と、他の仲間たちが扉のところにいる。

「まあな。あのクズ野郎を始末できると思っていると、興奮が治まらなくてな」

「奇遇だな、オレもだぜ! まだあいつらと一戦を交えたことがないから、相手はどんなやつなのか、考えるだけでワクワクするぜ!」

 正人はその言葉を口にする時、自分の指を絡めながらガタガタと鳴らしている。その瞳から、強い相手を求めるような武道家の輝きを放っている。

「そ、そうか……いい相手に出会えるといいな」

 自分と完全に違う方向で興奮している正人を見て、俺は苦笑しながら無難な返事をした。

「だが、その前に……」

「その前に?」

 正人の何かを期待しているような目付きから、俺は彼が何を考えているのかなんとなく分かる気がした。


「オレとウォーミングアップしとこうぜ! ついでにどっちがつええか試せるしさ!」

「やっぱりな」

 予想通りの返事を聞いて、俺は再び固い表情になる。思った以上の熱血漢だな、こいつ。

「やめとけ。体力の無駄遣いになるぞ」

 突如どこからともなく、人込みの中から聞こえる冷たい一言。もう少し前だったら俺は言葉の内容から広多だと認識していたが、まだ慣れないその声を聞くと、声の持ち主は別人だと分かる。

 言うまでもなく、その人はーー

「おいおい、その言い方はないだろう、拓磨」

「お前のために言っているんだぞ、正人。いや、お前だけじゃない。この作戦のためにも、ここにいる全員のためにもな」

「何だよ、急に大げさなことを」

 物々しい拓磨の言葉に、不満の色を示す正人。

「まだ分かっていないようだな、正人。いいか、もしお前が体力を無駄に消耗してまた任務の途中でくたばったら、皆にも迷惑をかけることになるぞ……あの時のようにな」

 腕を組んで昔のことを語っている拓磨の目から、冷ややかな視線を感じる。

 そして楽天家の正人も一瞬だけいつもの笑顔が、まるで別人になったかのように暗くなる。よほど深刻な事件だっただろう。


「だまらっしゃい、拓磨さん! 勝手なことをおっしゃらないで頂きたいですわ!」

 そばでこの会話を聞いた雅美は、人込みをかき分けると突然姿を現し、怒りの大声を上げた。

「本当のことを言っただけだ。それを否定することは、自分に嘘をつくことになるぞ」

「くっ……! 生意気ですわね……」

 拓磨の反論が痛いところをついたのか、雅美はただ捨て台詞を吐くしかなかった。まるで弾丸のように鋭いぜ。

 だが、正人のポジティブパワーは想像以上に強かった。あまりにも立ち直りが早すぎて、さっきの暗い顔を浮かべた彼とは思えない。


「まあまあ、もう昔のことだし、いちいち気にすることないって! そんなことを考えてるより、あいつらのアジトを潰しに行こうぜ!」

 爽やかな言葉を残しながら、正人はさっさと走り出して、ロビーを出た。

「やれやれ、本当に懲りない奴だな。まあ、あいつのことだし、こうなると分かっていたけどな」

 正人の背中を眺めている拓磨は、頭を横に振りながらそう言った。

「違いますわよ」

「ん? どういう意味だ?」

 弱く震える雅美の声に、拓磨が反応する。

「ダーリンだって、あの事件で傷付いていらっしゃるはずですわ。ただ触れられるのが怖くて、避けようとしていらっしゃるのですわ……」

 同じく正人を見守っている雅美の両目には、薄く涙の光が浮かんでいる。

「あの事件」の正体が気になるが、さすがこの状況で質問するのもまずいな。

 いや、もう少し頭を使うんだ、俺。これぐらいのことならある程度の推理ができるはずだ……!

 そうか、そういえば昨日正人と握手した時あの感触は、明らかに普通の人間のと違った。鋼鉄のような堅さを感じたが、不思議に人肌の温もりを感じた。

 なるほど、そういうことか。あの右腕はハイテクを使った義手、と認識しても問題なさそうだ。もちろん、本人が言うまでこのことには触れないでおこう。他人のいやな思い出を思い出させるのは、性に合わねえしな。

 このままこの場の雰囲気が静まり返るかと思いきや、美穂の明るい声で新たな会話が始まった。


「朝から賑やかね~。あっ、ところでさ」

「どうしたの、美穂ちゃん?」

 話が見えない菜摘が、美穂に視線を向けて質問する。

「なんでみんなそんな厚着をしてんの? アタシみたいに半袖のシャツとショートパンツだけでいいのに!」

 自慢しているように聞こえる美穂の声が耳に入り、俺たちは条件反射で彼女にいる方向を見やる。

 するとどうだろう。彼女が身に包んでいるのは、丈が短く腹が丸見えの黒いちびTと、股上の浅いホットパンツだ。おまけに靴はサンダルなので、白くて長いおみあしがその魅力を惜しみなく披露する。


「……そんな格好で大丈夫か?」

 目のやり場に困りつつ、俺は白目で美穂を見つめながらツッコミを入れる。

「な、なにか問題でもあるのよ? 他のクラスの連中に変装するじゃなかったの?」

 予想外の反応にがっかりしたのか、彼女は不満そうに頬を膨らませると俺に問い詰める。

 そんな彼女の質問に、俺はこう答えた。

「大ありだろう。俺たちはこれから、荒野を越えないといけないんだぜ?」

「だから?」

「まだ分からないのかよ。荒野には砂塵やほこりがたくさんあるから、そんなに肌を出したら肌荒れになるぞ」

「えっ、ウソッ!?」

 変わり果てた自分の姿でも想像していたのか、美穂は頭を下げて自分のみずみずしい肌を見ると、それを素早く腕で隠した。

「まあ、念のためだ。その変装をするのは、荒野を越えてからにしとけ」

「あっぶな! ちょっと着替えてくるわね!」

 そう言うと、美穂は慌てて自分の部屋に移動し始めた。

「いってらっしゃい、美穂ちゃん~」

 彼女を見守っている菜摘は、微笑みを浮かべながら明るい声で言った。

 そしておよそ10分後、着替えを終えた美穂は階段を降りてきた。今度はどうだろうか?

 上着にはファー付きのデニムジャケットを羽織った。ショートパンツはそのままだが、素足は黒いオーバーニーソックスに覆われ、靴も荒野でも動きやすい茶色のショートブーツを履いている。

 さっきと大して変わらなかったが、まあまだマシな方か。


「さあ、さっさと行くわよ!」

 これなら文句はないでしょうと言わんばかりに、美穂は得意げな顔を浮かべながら俺たちに行動を促す。

「まあそう焦るなよ。その前にまずはこれを付けておけ」

 余裕な言葉を放つ俺は、カゴからゴーグル、マスクとスカーフの防塵アイテム一式を取り出して、美穂に渡した。

 もちろん彼女が着替えていた10分の間には、俺たちは既に準備済みだけどな。

「あらっ、気が利くじゃない! これを付けたら日焼け止めを使わなくても、ある程度日焼けを抑えられるわね♪」

 白い肌を自分の命同然に思っている美穂は、嬉しそうな顔をして俺が渡したアイテムを受け取った。

「まあ、()れるのがイヤだけどね」

 菜摘は苦笑するも、ゴーグルを頭の上から付けた。

「さて、そろそろ行こうか」

 度数付きのゴーグルを押し上げた哲也は、冷静かつクールな声を掛けた。それを聞いた俺たちは、おもむろにロビーを出て行く。

 入り口の扉を出ると、そこにはバイクに乗っている正人たちがいる。


「おっ、やっと来たな! もう待ちくたびれたぜ!」

 俺たちの気配に気付いた正人はこっちを振り向くと、ウズウズと嬉しそうな表情を浮かべた。

「わりぃな、ちょっとファッション好きな子に手こずってさ。そっちは準備ができてるか?」

「ああ、いつでもいいぜ! さあ、早く乗ってくれ!」

 正人の爽やかな声にやる気を誘われて、俺たちは迷わずに側車(サイドカー)に乗り、ヘルメットを付けた。ヘルメットって結構重いイメージがあったけど、意外と軽いな、これ。


「それじゃみんな、気を付けてね!」

「あらあら、みんな凄く元気そうね~遠慮せずに、どんどん悪い子たちをおしおきしちゃってきてね~」

 真実の標(トゥルース・ルーペ)二大幹部(チーフ)は、後ろで俺たちを見守りながら別れの言葉を送ってくれた。

「先輩たちは一緒に来てくれないんですか?」

 とても強そうな二人が付いてきてくれないことに心細く感じつつ、俺は訊く。

「それはね、加勢してあげたい山々なんだけど、ちょっと色々事情があってね~ほら、ムムとネネの改良とかとかさ」

「それなら、開発部の二人に任せればいいのでは?」

 さすがは哲也、俺より先に鋭い質問をするとはな。

「使うのはあくまで私と十守だから、調整した後にテストをしておかないとね」

 だが先輩も先輩で、これぐらいの質問で言葉に詰まることはなかった。

「まあ、いざとなったらそっちに飛んでいくから、心配はいらないわよ!」

 十守先輩は得意げに髪を掻き上げると、頼もしそうにウインクをした。本当に大丈夫だろうか。

「それに碧ちゃんも一緒だし、大丈夫よ」

 静琉先輩も右手を頬に当てると、クスクスといつもの大人しい笑顔を浮かべた。

「まあ、先輩たちがそういうなら」

 とりあえず、ここは納得しとこうか。


「皆さん、頑張ってくださいね~♪」

「アタシたちの分まで、あいつらをコテンパンにしちゃって!」

 ムムとネネは、明るい声で熱い声援を送ってくれた。どこまで離れていても、心はずっと一緒だな……って、この話はまだ早いか。

「おうよ! ぜってーアイツらを跡形もなくぶっ飛ばしてやるぜ!」

「いきなり物騒なことを言わないでください、先輩。格好悪いですよ」

 拳を鳴らしてやる気を見せる壊時に、碧は傍らで白目で見つめる。


「お兄ちゃん、気を付けてね!」

「ああ、ちょっと行ってくるよ。花恋(かれん)も気を付けてな」

「うん!」

 見覚えのない幼い女の子が、俊介に別れの挨拶をする。ちょっと訊いてみるか。

「俊介、その子は誰だ? やたら親しそうだけど」

「ああ、彼女は花恋。俺の妹だ」

「へー、妹がいるなんて知らなかったぜ」

「まあ、話す機会もなかったしな」

「それもそっか」

 俺と俊介が会話しているうちに、急に正人の声が入ってきた。


「よーし、そんじゃ出発するぜ! 打倒、恋蛇団(ウロボロス)!」

「おー!」

 正人の声に続き、一部の仲間たちが大声で応答した。

 そしてバイクのエンジンが咆哮を上げて、この戦いの勝利を予言している。

 徐々にバイクが動き出し、俺たちを新たな戦場に運んでいく。

 待ってろよ、恋蛇団(ウロボロス)、そして加御栖(かおす)土具魔(どぐま)……! てめえらが笑っていられるのも、今のうちだぜ!

正人「おいおい、まだ着かないのか~?」

拓磨「やれやれ、せっかちだなお前は……これはロケットじゃないんだぞ?」

哲也「喜ぶのはまだ早い。ここから先は『奴ら」が出てくるぞ」

聡「へっ、かかってこいよ! こんなザコ軍団じゃ、肩慣らしにもならねーぜ!」

広多「気を抜くな。あの化け物たちが作り上げたものだ、どんな攻撃を仕掛けてくるか分からないぞ」

壊時「はっ! どんな敵だって、殴られればくたばるのは同じだぜ!」

俊介「まずは、殴れるぐらいの間合いを詰められればの話だけどな」

直己「カワイ子ちゃん~♪カワイ子ちゃん~♪」

秀和(土具魔……首を洗って待ってろよ……!)


菜摘「なんだか私たち女子は、完全においてけぼりだね……」

千恵子「なんて凄まじい熱気……わたくしにはまだまだ理解できない領域ですね」

美穂「ファイト~男子クンたち! 帰ってきたら、アタシがご褒美をしてあげるわよん♪」

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