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反逆正義(リベリオン・ジャスティス)Phase One——Ten days in heaven(or in hell)  作者: 九十九 零
第3章 兎蛇の戦編・激化する衝突
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リボルト#11 忍び寄る黒き霧 Part4 闇黒の増援たち

 黒い渦巻きの中には、いくつかの人影が蠢いている。輪郭(シルエット)しか見えないが、前回より数が増えたのは明らかだ。やっぱそいつらも、少しは本気になったのだろうか。

 いや、待てよ。俺は何ぼーっとして見入ってんだ? 奴らが隙だらけの今こそ、総攻撃を仕掛けるチャンスじゃねえか! 卑怯と思われるかもしれねえけど、勝手に俺たちの領域に足を踏み入れた奴らが悪いからな! よし、そうと決まれば……


「おいみんな! 今のうちに技をぶち込むぜ!」

「ハッ! 敵の登場シーンに奇襲を仕掛けるとは、おまえもなかなか悪いヤツだな、秀和!」

 俺の意外の提案を聞いて、片手にスマホを持っていながら腕を組んでいる聡は俺をからかったが、その満面の笑みから俺に賛成していることが窺える。

「だがこのノリは……キライじゃねーぜ! 行くぜ、スパイク・チャクラム五連発!」

 聡のスマホから緑色に光る刃の付いた輪っかが五つ、黒い渦巻きに向かって飛んでいった。

 これだけでは奴ら全員を倒せる、なんて甘い幻想を抱かなかったものの、ある程度牽制できるんじゃないかと微かに期待した自分がいる。


 しかしまたしても、俺たちは残酷な現実を突きつけられた。聡が発射した輪っかたちが渦巻きに触れたとたん、どれも明後日の方向に向かって飛んでいった。

「ぬなっ!? ど、どーなってんだこりゃ!」

「ふん、この聖なる結界(サンクチュアリ)を壊そうとする(やから)なんかに負けるほど貧弱じゃないのよ、我ら恋蛇団(ウロボロス)は」

 聞き覚えのある声に、俺は思わず立ち竦む。先ほどとんでもない隕石を落としてきやがった、まだ名前も知らない危険人物の小柄女子だ。

 そしてその薄い輪郭も少しずつ見えてきて、奴は姿を現した。片手に魔導書のような分厚い本を持ち、もう片手は偉そうに腰に当てている。その不敵な笑みは、何度見てもムカつくぜ。体は小さい癖に態度は随分とデカいな、おい。


「あれ、なんか前より高くなってないかしら、あのちびっ子は?」

 美穂の指摘に、俺はふと目線を変えた。確かに5センチぐらいは高くなったみたいだな。一体どういうことだ?

 次の瞬間に、俺の頭に浮かぶ疑問を答える叫びが聞こえた。

「なんでアンタがワタシの上に立っているのよ、テスラァ! まったく役立たずね……」

 重体の割に元気そうに叫んでいる赤目少女は、血走った赤い目で小柄少女に向かって怒りをぶつけている。

「おっと、これは失敬。あまりにも『低すぎて』見えなかったものでね」

 それに対してテスラと呼ばれた小柄少女は、何事もないかのように平静に応答している。「低すぎて」の部分を強調したことから、あいつは完全に赤目少女を馬鹿にしているよな。目も見下しているし。


「うっとうしいわね! アンタの方がずっと背が低いくせに……」

 予想通りに赤目少女は声を上げ、必死に異議を唱えた。やっぱりこの烏合の衆は、チームワークや仲間への思い遣りというものがないみてえだな。

 だがそんなツッコミが出来る余裕も束の間。赤目少女は力の限りに立ち上がろうとするその時、あのおぞましいダミ声がまたしても聞こえてきやがる。

「よう、また会ったな、イナズマ野郎」

 出たな、イカレ野郎め。思ったより早い再会じゃねえか。こんな近い距離であのムカつく顔を見ると、思わず俺の闘争本能が動かされるぜ。

「何しに来やがるんだ、イカレ野郎。お呼びじゃねえんだぜ?」

「どんな時間に何をしようが、俺様の自由なんだぜぇ! それにさぁ、貴様らは俺様の女に随分と熱い『オモテナシ』をしてくれたじゃねえか!」

 相変わらず野獣のように凶猛な振る舞いをするイカレ野郎は、とんでもないことを口走りやがった。もちろん俺の最初の反応はこれだ。


「はぁ?」

 イカレ野郎の意味不明の発言を聞いて、俺は思わず瞠目(どうもく)する。他のみんなも、白い目でそいつを見つめている。

 しかし、訳も分からずにやってきた謎の赤目少女の存在を思い出した俺は、すぐさまこの状況を理解した。

 なるほど、そういうことか。俺たちに言いがかりを付けるために、わざとこのいかにも弱そうで滅茶苦茶にヤバい少女をここに送り込んだってわけか。どこまで汚えんだ、恋蛇団(ウロボロス)の連中は。

 もちろんここまでは俺の憶測に過ぎないけど、ここから起きる出来事は俺たちの想像以上に恐ろしい方向に運んでしまった。


「あぁん……ど、土具魔さまぁ! よくぞお越しくださいましたわぁ~ん♥」

 なんと先ほど立ち上がった赤目少女は、急にあのイカレ野郎の前でひれ伏しやがった! さっきより艶めかしさが一層強まったその艶やかな声を聞いていると、反感によって鳥肌が立ちそうだ。


「へっ、(みだれ)じゃねえか。すげえ格好だなぁ」

 同じチームの仲間にもかかわらず、イカレ野郎は目の前にいる赤目少女を蔑んだ目付きで彼女を見下ろしている。

 どうせこいつタイプの奴は、他人を(こま)のように弄んでいるだろうな。赤目少女のその一途な思いが、なんだかバカバカしく見えてきたぜ。

「え、ええ、左様でございます土具魔さま、あそこにいやがる不埒者のせいでこのような姿に……どうか懲罰を与えてくださいませ!」

 呂律が回らないほどの早いスピードで自分の現状を説明している赤目少女のその瞳には、本物か偽物か分からないほどの涙が溢れている。さっき自分の部屋で見ていたあの「臭い芝居」を思い出すと、更なる憎悪感が胸の奥に走る。


「何なんだよあいつら……ふざけやがって」

 この世にいるような人間とは思えない者たちの行動を目にすると、俺は心底にある怒りを押さえ切れずにこの言葉を漏らした。

「世界にはまだ君の知らない人間がたくさんいるってことさ、秀和。ここからは大変な戦いになりそうだね」

 突然何の前触れもなく、後ろから俺の肩の上に手を置いた哲也。俺は何て答えればいいか分からないまま、ただ苦笑で返すしかなかった。

 そしてこんなやりとりをしている間に、恋蛇団(ウロボロス)の連中が一人ずつ渦巻きの中から姿を現し、俺たちの領域に足を踏み入れやがった。

 やれやれ、まだまだ新しい顔が増えたな。前回の山ガールと爆弾魔の姿こそ見当たらないが、多分まだアジトの中で楽しんでるだろうな。


「家族を滅ぼす輩がどこにいるのだ!? 大人しくこのオレに倒されるがいい!」

 背中に五本の大きな刀を帯びている、プロレスラーを彷彿させるようなゴリラ大男が凄まじい勢いで前に出て、俺たちをぶっ倒しそうと血相を変えている。

 隆起した黒い筋肉に浮かび上がるのは、今にも爆裂しそうな青筋だ。こんなゴツい体をしている奴は高校生なのか!?

 そしてその傍らにはゴリラ大男とは正反対の、まるで萎えたモヤシのような弱々しい男子がいる。怯えているのか、彼は頭を抱えながら情けなく体を震わせている。


「ボクに近寄っちゃダメだ……ボクに近寄っちゃダメだ……」

 こんなビビリ君なら問題なく勝てると俺は思っていたが、その意味深な呟きが俺に警戒心を抱かせる。

「ウザい、ウザい、チョーウザい……誰でもいいから今すぐアタシに殴らせろォ!」

 ロリーポップをくわえているモーブ色のショートカットをしている暴れ者の女子が、物凄く不機嫌そうに喧嘩を売ろうとしている。

 こんな女子力皆無の奴は、「絶対に結婚したくない相手」ランキングのトップに入るに違いねえ。


「さーて、今日はどんなネタを探そうかしらね~まあ、これだけ人がいれば、容易いことだけど」

 もう一人の女子は片手に少し大きめのスマホを持っていて、ギザギザした髪の上に大きな黄色の「番長」の文字が書かれた黒い学生帽を被っている。さっきの不機嫌ガールより少し背が高いが、その陰険な笑顔にはただならぬ負のオーラが漂う。

 動く彼女の視線はある方向に止まると、何故かそのただでさえ不気味な笑みが更に怪しく見える。俺はその視線の先を見ると、そこには慌てふためきながら恐怖の表情を浮かべている千紗がいる。

「ひっ! ふえええぇぇ……」

「うふふっ、いいネタみっけ~」

 まったく意味を持たない呻き声を上げる千紗に対して、長身番長はニヤリと微笑んでいる。一体どういうことなんだ?

 しかし突然割り込んできた空気の読まない声が、早くも俺の思考を妨害する。


「ちょっと~、男がいるなんて聞いてないんですけどぉ~」

 気の抜けた声に少し苛立ちつつ、俺は再び敵にいる方角を向く。そこにいるのは、じっと携帯の画面を見つめて、こっちに見向きさえしないギャルだった。

 ヒョウ柄のファー付きコート、ヒョウ柄のビキニトップ、ヒョウ柄のミニスカート、ヒョウ柄のブーツ……もう両目は豹の斑点に埋め尽くされそうだ。

 他の恋蛇団(ウロボロス)のメンバーたちとは一線を画するような格好に、俺はツッコミの言葉すら見つからずただ白い目で見るしかなかった。

 しかしその挑発的な衣装が、好色漢である直己の視線を釘付けにした。彼は性懲りもなく、前に出てギャルにナンパしようとする。

「お~い、そこのカワイ子ちゃん! よかったらおれとお茶でもしよ……あいてっ!」

「もう、本当にあんたってやつは……! もう少し状況や場所を弁えなさいよ!」

 そしていつのもように、名雪のハリセンは容赦なく直己の頭部に襲いかかる。もう何回目だよ、それ。


「あ~あ、男ってマジ面倒。どうせアタシの顔や体が目当てっしょ。キモすぎて笑えないんですけどー」

 ギャルは直己を一瞥すると、すぐさま視線を携帯に戻し、ボタンを押し続けている。どんだけ男性を見たくないんだよ、こいつ。

 心の中でそんなツッコミをしている間に、あのプライドの高い男が黙っていられず動き出した。

「おい、貴様。それは聞き捨てにならんぞ。全ての男性は、貴様が思っているような下劣な生き物だと思わないことだ」

「うっわ、マジレス? 『自分だけが他人と違う』的な? マジウケるわ~っていうかそういうの、彼女いない系っぽくな~い?」

「日本語もまともに喋れないのか、こいつ」

 あまりにもフレッシュすぎる若者言葉の前に、さすがに真面目な広多もお手上げか。


「おい、なんでそんなこと言うんだよ! オレたちは一体何をしたってんだ!」

 ずっと側で見ていた聡も苛立ちを抑えきれず、大声を出して真相を問いただそうとする。

 いつもの聡なら、広多に馬鹿にされてきた恨みをここぞとばかりに晴らしてもおかしくないのに、やっぱ根はいい奴なんだよな。

「はぁ? そんな分かり切ったことを、聞くまでもないっしょ。男って臭いし、汚いし、すぐかっとなって暴力を振るうし、欲望を満たすために手段を選ばないし……」

 うわぁ、ひっでえ言われようだ。こいつ一体どういう人生を送ってきたのか。

 あまりにも辛辣な批判を耳にして、俺は溜まっている怒りを極力溢れないようにしているが、ある一言が俺の理性を徹底的に狂わす。


「……なぁ、コイツ殴っていいか?」

 発言したのは壊時だった。いつもと違って声こそ低いものの、その中に秘めている憤怒は俺の心に伝わる。

 本来ならリーダーである俺は冷静になってこれを阻止するべきだったが、何の酔狂か俺はこう答えた。

「ああ、やっちまえ! どっちが上か教えてやろうじゃねえか!」

 奴らは一度ならず、二度も俺たちの領域に侵入してきやがった。さっきは弱かったせいで劣勢になったけど、特訓をした以上負けるはずはねえ!

 そろそろ奴らをボッコボコにしてやって、その泣き面をたっぷりかかせてやろうじゃねえか! ふははははは!

 そうと決まれば即行動だ。興奮している俺はバッジを時計に設置し、武器を手にして颯爽(さっそう)と前進する。

 他の奴なんざ興味はねえ。潰すのはただ一人、あのイカレ野郎だけだぁ!


「さあ、覚悟しやがれ! 今度こそ叩き潰してやる、このイカレ野郎め!」

「へっ、どこまで強くなったの゛か、楽しま゛せてもらおうじゃねえ゛か、イナズマ野郎!!」

 おいおい、今の俺はひと味違うぜ? またさっきみたいに簡単に避けられると思ったら大間違いだぜ! まあ、お望み通りに満足させてやるよ!

聡「おいおい、こんなヤベーヤツがいるなんて聞いてねーぜ! どうすんだよこれ!」

広多「ふんっ、怖気付いたのか。恐れていては、ここから先の戦いに勝つことが出来んぞ」

直己「まあ、前向きに考えようぜ! 何とかなるからさ」

哲也「数の方はこっちが上だけど、どれも強そうだな……あんまり油断しないほうがよさそうだ」

菜摘「大丈夫だって! うちには強い秀和くんがいるんだから、きっと勝てる違いないよ!」

秀和「おいおい、あんまりプレッシャーかけるなよ? 俺だって資質(カリスマ)を習得したばかりなんだぜ?」

千恵子「その通りですよ、菜摘さん。いくら秀和君が頼もしいとはいえ、全部一人に任せるのはよくないと思いますよ?」

菜摘「は、はーい……」


十守「そんじゃ、いっちょやるか! 久々に腕が鳴るわね~」

静琉「あらあら、腕が鳴るなんて、十守の腕にもお腹が付いてるのかしら?」

十守「ち、違うわよ! そもそも『腕が鳴る』ってそういう意味じゃないし!」


土具魔「おい貴様ら、いつまで待たせるつもりなんだよ! そっちが来ねえならこっちから行くぜぇぇぇーーー!!!」

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