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反逆正義(リベリオン・ジャスティス)Phase One——Ten days in heaven(or in hell)  作者: 九十九 零
第3章 兎蛇の戦編・激化する衝突
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リボルト#11 忍び寄る黒き霧 Part3 見せてやるぜ、チームワークってやつを!

溢流震動オーバーフロー・クェイク!」

 爽やかで力強い哲也の声と共に、周りの黒い霧が一気に消え去ることにより光が差し込んでくる。そのため空間が急に眩しく感じて、俺は思わず目を閉じた。

 しばらくすると、俺はようやく目を開いて周囲の状況を確認する。そばにいるのは、光る盾を持っている哲也だった。


「哲也! 無事だったか?」

「ああ、大丈夫さ。幸い僕はこの霧の攻略法を早く見つけられて、この不利な状況を長引かせずに済んだけどね」

「よくやったな。んで、どうやってこの霧を吹き飛ばしたんだ?」

「簡単なことさ。僕のP2(ピー・ツー)を盾に集めて拡散させて、周りのP2にぶつけただけだよ」

「そうか、この黒い霧もP2で出来ているのか!」

 哲也の解決策を聞いた俺は、マジックのタネを知った時のような爽快感(カタルシス)を感じて、思わず大声を出した。

「ああ、どう考えてもこの霧は自然現象とは思えないからね。それより、さっきは千恵子くんの悲鳴が聞こえたんだけど……」

 哲也の言葉を聞いて、俺ははっと我に返る。


 そうだ、千恵子はどこだ? 異状はないか? 彼女の安否ばかりを考えて、俺は哲也との会話を続けることを忘れた。千恵子のいる方向に向かって、俺は夢中で走り続ける。

「う、ううう……」

「千恵子ちゃん!? 大丈夫? しっかりして!」

 地面に座り込みながら頭を抱えている千恵子の傍らにいるのは、彼女を介抱している菜摘だった。その様子からだと、どうやらただごとじゃなさそうだな。


「千恵子! 大丈夫か!?」

 急いで駆けつけた俺は、体を低くして千恵子の耳元に声を掛ける。しかし千恵子の精神状態は極めて不安定のようで、頭を横に振りながら声にならない声で応答した。

「これはひどいな……一体どういうことなんだ」

 後からやってきた哲也も、絶望の満ちた千恵子の表情を見つめながら疑問を口にする。その白い頬には、長い涙の跡が残っている。

 しかし返ってきたのは、邪悪な笑い声だった。


「ふふっ……ふふふふふふ……いいザマだわぁ……」

 ハイヒールが地面に叩く音と共に、憎き赤目少女が険悪な顔付きを浮かべながら俺たちの前に再び姿を現した。

「てめえ! 千恵子に何をした!」

 仲間の不幸を嗤う下劣な(クズ)を、俺は怒りに満ちた声で問い質す。

「さあ? ワタシはただ黒い霧を作っただけで、どうしてあんなことになったのかまでは分からないわぁ。まあ、どっちにしてもワタシには好都合なんだけど、うふふふっ」

「ふざけやがって! そんな言い訳が通用するとでも思ってるのか!」

 どう見ても言い逃れているようにしか見えないその不敵な態度が、俺を怒らせた。彼女を指している俺の人差し指が怒りに震えている。

「まあ、怒りで両目が曇っている今のアナタには、何を説明しても無理でしょうけどね」

 今まで自分勝手なことしか言っていなかった赤目少女は、この上ない正論を投げてきやがった。確かにその通りかもしれねえけど、あの時の俺にはそれを素直に認められなかった。


「うるせえ! てめえのような悪い敵は、この俺が成敗してやる!」

「いいわぁ、かかってきなさいよ」

 俺はゆっくりと立ち上がって、目の前にいる敵を見据える。このような奴は、一発殴らないと気が済まねえ。相手は女だからって、仲間を傷つける敵である以上容赦はしない。

「うっ……!」

 しかし千恵子の呻き声が、俺の戦意を喪失(そうしつ)させる。

「千恵子!」

 俺は急いで再び体を低くして、千恵子に寄り添う。

「怖い、怖い……お願い、もうどこにも行かないで……」

 苦しそうに震えながら、必死に何かを求める千恵子。そんな彼女を落ち着かせようと、俺は彼女の耳元で声を掛ける。

「ああ、ずっとそばにいる! どこにも行かないから、落ち着いてくれ!」

 俺の真摯な声が千恵子の心に響いたのか、彼女は徐々に乱れた呼吸を整えて、調子を取り戻した。


 そして恐怖から解放されたことにより安堵したのか、彼女の全身の力が抜けて、頭を俺の胸に埋める。突然の近距離での接触が、まだ思春期である俺の心臓を刺激する。

「ありがとう、秀和君……貴方のその心強い声が、とても暖かいわ……もう、大丈夫だから」

 嬉しさのあまりに、千恵子はいつもの丁寧な振る舞いを忘れ、二人っきりのプライベートモードに移行した。そんな普段ではなかなか見られない彼女の可憐な一面が、その魅力を余すところなく発揮する。

 そう、嫌なことを全部忘れるほど……のはずだった。


「ちょっと……ワタシの存在を無視してイチャついてんじゃないわよ!」

 赤目少女の甲高いかつやかましい声が、再びこの心が温まるようないい雰囲気を破りやがる。

 そういえば、さっきはこいつをぶん殴るつもりだったな。千恵子を案じてそれどころじゃなかったけど、今度こそ容赦しねえぞ。

 俺はゆっくりと立ち上がって、後ろを振り向くとそう言った。

「千恵子、ちょっと行ってくるぜ。君を苦しめるあの忌々しい奴を、たっぷり懲らしめてやらねえとな」

「ええ、気を付けて、秀和君」

「ああ、分かってる。菜摘、千恵子は任せたぞ」

「うん、任せて! 思いっきりコテンパンにやっつけちゃって、秀和くん!」

 菜摘の元気な応答のおかげで、俺は心置きなく目の前にいるこの「敵」との戦いに集中することができる。

 狙いを定めている俺の脳内がフル稼働し、奴を倒す方法が100通りぐらい思い浮かぶ。さて、どう料理してやるか……


「狛幸くん!」

 後方から俺の名前を呼ぶ声が聞こえる。振り返ってみると、そこには友美佳と、彼女の追いかけてやってくる他の仲間たちだった。

「あたしたちにも戦わせて! こんな友達を笑うような奴を、そう簡単に許さないんだから!」

 一連の出来事を目撃したのか、友美佳は片手を握り締め、真剣な表情を浮かべている。さすがは友情に厚いだけのことはあるな。

「ああ、そうだ! チームワークの力ってヤツを、見せてやろうじゃねーか!」

 熱い闘志を燃やしている聡も、片手の拳をもう片方の手のひらで包み込み、いかにもやる気満々そうな顔をしている。


 この時、一つの新しいアイデアがまたしても俺の脳内で誕生する。一人で決めるより、みんなで一緒に格好良くぶっ倒したほうがいいんじゃないかと。

 多人数で一人を攻撃するのはある意味いじめと思われがちだが、今は状況が違う。何しろ俺たちが置かれている状況は普通じゃない上に、先にちょっかいを出してきたのはそっちだから。しかも二回も、二回もな!

 よし、そうと決まれば即行動だぜ!


「オッケー、みんな俺についてこい! そこの身の程知らずに、新しい力を身に付けた俺たちの実力を思い知らせてやろうぜ!」

「よっしゃー! カッチョーイイ合体技、いっくぜぇぇー!!!」

 俺の承諾を聞いたテンション高めの聡は、両腕を得意げに上げると高らかに叫んだ。

「女を殴るのはおれのセオリーに反するけど……まあ、顔じゃなけりゃいいかな。たまにはセオリーを変える必要もあるしさ」

 女好きな直己も、うずうずしながら指の関節を鳴らしている。どうやら彼にも、色欲よりもっと大事なものを持っているようだな。

 俺たちは構えてこの憎たらしい敵を片付けようとするが、何故か俺たちの隙間から広多が前に出て姿を現した。


「広多? まさかお前も……」

「勘違いするな。別にお前たちを助けるわけではあるまい。ただ一刻も早くここから出るために、一人でも敵を減らしておこうと思っただけだ」

 広多は両手をコートのポケットの中に突っ込んだままで、依然として刺々しい態度で突き放している。

 だが彼と一緒にいる俺たちも、だんだん彼への扱いに慣れてきた。


「おいおい、利害が一致してるから、それは俺たちを助けることになるんだぜ?」

「やれやれ、広多も相変わらずだな~まあ、アイツはいつも格好付けてるから、秀和もあんまり本気にしないほうがいいぜ?」

 失笑した聡は、頭を横に振りながら広多を小馬鹿にしたような言い方をする。

「そんなことを言ってると、また広多にボコられるぞ?」

 いつもの展開がスライドみたいに勝手に浮かび上がり、俺は先読みして聡を注意する。

「まさか~御曹司なんだからさ、きっと(ふところ)が深いだろうなぁ~なあ、広多さんよ?」

 さん付けになっているが、馬鹿にしていることに変わりはない。なるほど、そうやって先にイメージを付けることで、広多の行動を制限するわけか。考えたじゃねえか、聡。


「……何とでも言っていろ。それより、そこの女を始末しなくてもいいのか?」

 広多の指差す先を見ると、そこには無視されることによって既に気が気じゃない赤目少女がいる。怒り狂ったそれが、周りから禍々しい黒い霧がまたしても放出されている。

「またさっきの技か……もう一度あれを出されたら一溜まりもないだろう」

 苦しそうに目を細めている俊介は、何か打つ手はないかと言わんばかりに、珍しく焦った顔をしている。

「ええい、考えてもしょうがねえ! やられる前にまずはやるに決まってるぜ!」

 脳筋派の壊時は俊介の言葉を乱暴に遮って、何も考えずに真っ先に時計を二つ投げた。そしてそれらが外れることなく赤目少女の体に命中した。


「きゃあっ!?」

 二つの時計がパンチのように赤目少女にダメージを与え、その体勢を崩した。そしてこの絶好のチャンスを逃さまいと、既に資質(カリスマ)を発動した聡は前に飛び出て攻撃を仕掛けようとする。

「よーしゃ、次はオレのターンだ! くらいやがれ、百撃閃光斬ハンドレッド・フラッシュ・スラッシュ!」

「ひゃああああああ!!??」

 相変わらず凄いセンスのネーミングの技を叫んだ聡は、十本の指から様々な鋭利な工具を伸ばして、電光石火の早さで目標に絶え間なく切りつける。

「これで終わりだと思うなよ! おれの魂の一撃を受けてみろ! 時雨(しぐれ)鉄槌(てっつい)!」

「がはっ!!??」

 高らかに叫んだ直己は鎖を巻いた二つの拳で赤目少女の無防備な腹に、凄まじいパンチを雨のように浴びせた。「一撃」とは何だったのかとつっこみたくもなるが、ここは言わぬが花だろう。

 おまけに赤目少女が着ているドレスの真ん中の部分は穴が大きく開いているため、(じき)で腹パンを受けていることになる。ひええ、見ているだけで痛そうだぜ。


 続いて攻撃を繋いだのは、友達思いの友美佳だった。何もなかったはずの彼女の後ろから、三本の尖った竹槍が現れ、赤目少女に向かって飛んでいく。

「仲間を傷つけるような下劣な奴、あたしは絶対に許さないわ! これでも受け取りなさい! 竹槍・三つ矢の陣!」

「あああああんん!!??」

 直己のパンチに飛ばされた赤目少女は、滞空(たいくう)したままで攻撃を回避することができず、マトモに友美佳の攻撃を喰らった。刃のような竹槍は無慈悲に彼女のドレスを切り裂き、柔らかい肌に赤い傷跡を残した。

 次の瞬間、空から降りてくる広多は手に持っている大きな鎌を振り下ろし、勇ましく赤目少女に攻撃を仕掛ける。

「ふん、手応えのある相手だと思っていたが、とんでもない見かけ倒しだな。さあ、歯を食い縛れ! 紫月千殺(しげつせんさつ)!」

「うっひゃあああああーーーー!!??」

 大鎌の動きと共に現れる紫色の閃光が、急所を掠りながら赤目少女の切り口に追撃を仕掛けた。見る見るそのか弱い体は、完膚(かんぷ)なきまで打ちのめされていく。


「さあ、トドメを刺しちゃいなさい、狛幸くん!」

「オッケー、任せろ!」

 振り返って俺の名前を呼ぶ友美佳に、俺は自信に満ちた笑顔を浮かべた。さて、そろそろこの茶番劇に終止符を打とうじゃねえか。

「千里の一本槍……空雷柱(スカイピラー)ぁぁぁ!!!」

 俺の声に呼応したかのように、空から大きくて眩しい稲妻の柱が落ちてきて、赤目少女に直撃した。光に包まれながら、彼女の体が不規則に震えている。

「あ、ああ、あああ……やああああああああああ!!!!!!!!」

 致命傷を受けた憎き赤目少女がついに強気な表情がなくなり、代わりに苦しんだ顔付きが露わになって、断末魔を上げた。その穴の多い服もボロボロになり、かなりきわどい感じに変化した。

 そして重力の作用により、赤目少女の華奢な体が地面に叩きつけられた。立ち上がろうとするも、その怪我じゃもはや微動すらできないだろう。

 勝ったな、こりゃ。そう確信しつつ、俺は口元を緩めるのを我慢できなかった。


 しかしその喜びも束の間に過ぎず、本当の地獄はこれからだということを瞬く間に思い知らされてしまう。

 それはどういう意味かというと、倒れている赤目少女の後ろに例の「黒い渦巻き」が暴れているのだ。

「ふふふふっ……増援が来たわぁ! これで安心できると思わないことねぇ!」

 狂気、いや狂喜で顔を歪めている赤目少女が、今までにない恐ろしい声を上げた。その表情はどことなくあのイカレ野郎・土具魔(どぐま)に似ている。

 見覚えのあるこの光景に、俺は思わず鳥肌が立った。どうやら俺はベッドに戻って休憩することは、不可能に近いだろう……

友美佳「くっ……も~う、キリがないわね!」

美穂「まあ、こっちは数が勝ってるから、別に大したことはないじゃないかしら?」

十守「油断は禁物よ! 相手は切り札を隠しているかもしれないし……」


聡「へっ、こうでなきゃ面白くねーぜ! なあ、広多?」

広多「ふんっ、誰が来ようが、この俺が容赦なく一人残らず倒してやる」

秀和「お前ら何ぼっーとしてんだよ! 早く今のうちに攻撃しようぜ!」

直己「おいおい、敵がまだ登場してないのに攻撃するのって、アニメのルールに反してるじゃないのか?」

秀和「知るかよそんなこと! 俺にはルールなんて通用しないんだぜ?」

哲也「君のその性格を反映したセリフは、ここで初めてかもしれないね。本編でも使われたことがないのに」

秀和「おいやめろ! 新年早々作者のメンタルに傷を負わせる気か!?」

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