リボルト#11 忍び寄る黒き霧 Part1 ジュエル・クインテット
アバン
聡「すげー不気味なタイトルだな……一体これから何が起きるってんだ?」
秀和「まあ、流れ的には恋蛇団の連中とまた戦うんじゃねえか? きっと読者のみんなもそれを期待してるはずだぜ」
土具魔「誰も貴様のどうでもいい憶測なんざ期待してねえ゛よ! この自意識過剰野郎がぁ゛!」
秀和「またてめえかよ、この中二病野郎! いい加減黙りやがれ!」
優奈「ちょっと、こんなところで喧嘩しないでよ! やるなら本編でやりなさいよ!」
秀和「てめえの腐った根性をここで叩き直してやる! 千里の一本槍!」
土具魔「じょーとーだぜ! 絶世の黒炎!」
千恵子「……全然聞いていませんね」
優奈「ああもう! 本当に男子って勝手なんだから!」
リボルト#11 忍び寄る黒き霧
The black mist is creeping up
「ゼツボウヲクレテヤル……!!」
生気のないモノクロ色をしている大きな怪獣が、自分の存在を誇示するかのように悍ましい咆哮を上げている。
口や指先から発射された黒と白の顔料らしき液体が、無残に街を飲み込んでいく。さっきまでキレイだったそれが、一瞬にして暗転する。
「イロガアルカラ、レッテルヲハラレテシマウノダ! イロサエナケレバ、カナシミモサベツモナクナル!」
声にならない声で、自分の言い分を訴える怪獣。どうやら何か深い事情があるみたいだな。
「サアキサマラ、ワタシトイッショニシアワセノアフレルセカイヲツクルノダ!」
悪いけど、こんな地獄絵図を見る限り、幸せどころか、小さなやすらぎの欠片もないな。
絶え間なく顔料に飲み込まれていくこの街は、破滅してしまうのはもはや時間の問題ではないかと思われた。
と、その時に。
「そこまでだよ! モノクローム・マドル!」
どこからともなく響く、明るく元気な声。醜い白黒の怪獣とは対照的に、それはまるで虹のように眩しかった。
続いて降り注いだのは、五つの光だった。そしてすぐさま光が消えて、その中から五人の少女が姿を現す。
「チッ、『ジュエル・クインテット』メ……!!」
正義の味方を目の当たりにして、悔しそうに顔を歪める怪獣。まあ、自分の侵略計画が阻止されるから、無理もないか。
「世界から色を消しちゃダメだよ! 色がなくなっちゃったら、世界はキレイじゃなくなって、面白いアニメや映画もつまらなくなるんだから!」
「うんうん! 絵も美術と呼べなくなるし、売値もすごく下がっちゃうんだから!」
「色が要らないんだったら、じゃあ信号も要らないってこと? もし交通事故が増えたら、アンタはどう責任を取るの?」
「こんなワガママなルールばかりを作ったら、友達をなくすよ?」
「自分が傷付いただけでもっと多くの人たちを傷付けていいとでも思ってるの? ……情けない人ね。ううん、そもそも人じゃないかしら」
少女たちは怪獣を熱く叱責するが、その内容はあまりにも辛辣すぎて、とても正義の味方がするような発言とは思えない。周りから聞こえる小さな笑い声も、それを物語っている。
「エエイ、ウルサーイ! ダマッテキイテイレバ、イイキニナリオッテ……!! イロデアジヲシメタキサマラニハ、ワガクルシミヲシルハズナドナイノダ!」
逆上した怪獣は目を見開き、コミカルな動き人差し指で何度も少女たちを指している。なぜか怪獣のほうが逆にかわいそうに見えるぜ。
しかしいくら吠えたところで、怪獣は悪役であることに変わりはない。すぐさま奴はその滑稽な仕草を止め、いかにも技を出すかのように両手を上げ始めた。
「イイダロウ、ナラバワタシガコノテデ、セカイヲモノクロニソメテヤルマデダ……!!」
おぞましい雄叫びを放った怪獣は、徐々に口を開いた。見る見るそのサイズが大きくなっていき、そこからドデカい白黒の球体が現れる。このままでは、街が破壊されるのも時間の問題だろう。
まあこの手の作品なら、きっと怪獣が攻撃する前に善の側である少女たちが勝つに違いないだろう。とはいえこれは最終決戦だそうだから、少なくともラスボスであるこの怪獣は一回ぐらい技を決めて、少女たちを絶望に陥れる流れになるはず、なのだが……
「よし、みんな! いつものアレをやるよ!」
「「「「うん!」」」」
リーダーらしき赤い少女の号令に従い、他の四人もポケットから宝石のようなものを取り出すとそれを振りかざす。すると先程登場した時より眩しい光が、五人を彩る。
「ウグッ! ナ、ナンダコレハ……!!」
そのあまりにも美しい光景を目の当たりにして、さすがに怪獣も動揺を隠しきれなかった。
「「「「「世界に希望をもたらす五つの光よ、私たちに導きを!」」」」」
勇ましい口上と共に、少女たちが身に包んでいる装束があちこち様々な宝石をちりばめられ、より一層華やかになる。その華麗さは、裸の白黒の怪獣を完全に圧倒する。
しかし、それだけではまだ怪獣の勢いを止めることはできない。そのことを分かっているかのように、五人の少女たちは怪獣を止めるように両手を開いて前に構えると、必殺技の名前を読み上げ始めた。
「シャイニング……」
「ファーーイブ……」
「レインボー……」
「ジュエル……」
「「「「「ミラクル・フラァァァァァッシューーーーー!!!!!」」」」」
大きな声が響く中、五人の少女たちの手のひらからまばゆい光線が放たれ、やがてそれらが一つの巨大な光の束となって、白黒の怪獣に浴びせる。
「ウヌヌヌヌ!! ナ、ナンダコレハ……! マサカコノヨニハ、コノヨウナオソロシイホドノアタタカイモノガソンザイスルトハ……! オ、オノレ、メガヒラケヌ……」
光の束に潜む絶大な力に怯む怪獣は、為す術もなく両手で目を塞いだ。さらに方向感覚を無くしたため、怪獣が溜めていた球体も空に向かって飛んでいた。
そしてついに、憎き怪獣の体は色んな色彩に染まるままで、少しずつ消えていく。
思ったより早く決着が付いたのは少し意外だったが、まあ結果オーライということで。さてと、怪獣はどんな捨て台詞を吐くのか楽しみだな。
少女たちに見守られている中、怪獣の恐ろしい姿はようやく完全に消え去った。
するとどうだろう。なんと怪獣の中から、人間の女性が出てきたぞ。おもむろに目を開けた彼女は、少女たちに囲まれているのに気付き、茫然としていた。しばらくすると彼女は泣き声を上げ、涙が止まらない滝のように流れ始めた。
うん、実に奥が深い話だな。アクション映画ほどの過激さがないものの、「色」という一見単純なテーマからあんなシリアスなストーリーを作れるのと、ヒロインたちの妙にリアルなセリフの使い回しがうまいな。とても朝8時に放送されるようなアニメとは思わないが、これはこれでありだな。作者の顔が見てみたいもんだぜ。
「いや、面白かった~何度見ても『魔法少女戦士 ジュエル・クインテット』は傑作だね!」
ソファーに座ってくつろいでいる菜摘は、子猫のように背伸びをする。どうやら彼女はずっと前からこのアニメにハマっているようだ。まあ、変身ものが好きな彼女なら、このアニメはドンピシャリなんじゃないかな。
「おやおや、さすがは菜摘さん、見る目ありますな~このワタシが奮発してブルーレイ全巻を買った甲斐がありましたねぇ~」
テレビの下にあるDVDプレイヤーを弄って、中にあるディスクを取り出している茉莉愛は菜摘の声に反応し、振り返って声を弾ませた。
「確かに全部17巻だったっけ? これはすごい出費になりそうだね……」
1巻目の箱を手に持って見ている哲也は、女子たちの会話を思い出しながら、茉莉愛のこの作品に対する情熱に思わず感服しているようだ。
「何のこれしき! 真のファンたるもの、お金の壁なんて目じゃありません! これも頑張ってこのステキな作品を作ってくれたスタッフさんたちに、最高のご褒美というわけですよ! もしかしたら、次回作も出してくれるかもしれませんし!」
ハイテンションの茉莉愛は、絶えることなくしゃべり続けている。よほどこの作品が好きなんだな。
「ところがどっこい。なんと次なる物語へと繋がる予言が、情報網に誕生されたらしいぞ」
左側のソファーに座っている宵夜は、物々しそうに腕を組みながら、何やら意味深なメッセージを言っている。
「えっ、ウソ!? もう制作が決まったの!?」
その重要な情報を耳にした菜摘は、くつろいでいた体勢を変え、ガタッと立ち上がった。
「ああ。さっき結界の中で探知の術式を使わせてもらったのさ」
「さっき隠れ家の中で、インターネットで検索したって意味だよ~]
宵夜の親友である愛名は、早くもその不可解な言葉の意味を理解し、俺たちにも分かるように通訳した。
「マジですか~これは一刻も早くここから出て、ブルーレイ全巻を買わなきゃですな!」
新たな目標を見つけた茉莉愛は、目を輝かせて背筋を伸ばすと、大きなガッツポーズをした。
「あっ、そのポーズはなんか朱美ちゃんみたい!」
「ふふん、気付きました? ファンたるもの、いついかなる時も愛する作品への尊敬を示すべし!」
茉莉愛の意気揚々した身振りを見た菜摘は、アニメに出ていた赤い衣装を身に包んだヒロイン1号の名前を口にする。確か先程の女子たちの会話によると、そのガッツポーズもそのヒロイン1号のトレードマークだそうだ。本当、芸が細かいんだよな。
思い返せば、俺も昔は哲也と好きなアクション映画やゲームの話とかで盛り上がったこともあったな。懐かしいぜ。
「それじゃ、1話から振り返って観ましょうか~?」
「あっ、それいいね! そうしようそうしよう~」
「もう、いい年してこんな子供っぽい番組に夢中するなんて、本当に情けない話ね」
一方、そんな彼女たち水を差すかのように、風紀委員の名雪は白目でこっちを見ながら言った。やはり真面目な人は価値観も違うか。
しかし、直己の一言が早くも名雪の立場を崩す。
「あれぇ~? さっきクライマックスのところで、目を離さずにドキドキしてたのは誰かなぁ~?」
その挑発的な口調から、名雪を小馬鹿にしているのは明らかだ。怒り心頭に発した彼女はすぐさま頬を赤く染め、いつものようにハリセンで直己を張り倒した。
さらにそのお約束シーンに連鎖して爆ぜる笑い声が、もはやうちの慣例だ。
「ふぁ……」
そしてこののんびりした雰囲気の中で、さっきの訓練で溜まった疲労があいまって俺は大きな欠伸をした。それも声がいやでも聞こえる程に。
「大丈夫ですか、秀和君? 無理しないでお部屋で休まれたらいかがでしょうか?」
疲れ切った俺の顔を見て、優しく声を掛けてくれた千恵子。自分が眠そうな目をしていることも知らずに。
「そうだな……正直今日は昨日より色々とキツかったぜ。ちょっと昼寝でもしてこようかな」
「ええ、いってらっしゃいませ」
みんなに挨拶をした後に重い体を起こした俺は、休みを取ろうとゆっくりと自分の部屋へと向かう。ロビーからは少し距離があったものの、何とかたどり着くことができた。
しかし扉を開けたその先には、俺の眠気を一気に覚ます出来事が起きてしまった。
それはどういうことかというと、俺のベッドの上には、何故か見知らぬ半裸の少女が寝転がっているのだ。
菜摘「ど、どういうことなの!? 私に黙って愛人を作るなんてひどいよぉ……しくしく」
茉莉愛「おおっと!? ついにラノベ恒例の修羅場クルー!?」
秀和「落ち着け菜摘。俺はこんな変態痴女に気があるわけがないだろう」
千恵子「その通りですよ、菜摘さん」
菜摘「千恵子ちゃん……うん、そうだよね」
千恵子「何しろヒロインの座は、このわたくしにあることに変わりがございませんので」
美穂「ちょっと、ヒロインがいきなりメタ発言をしたわよー!?」
愛名「作者さんはメタ発言が好きだからね、仕方ないね」
秀和「そんなことより、まずはこいつを何とかしなければな……」
千紗「どうするの? さすがに窓の外に放り出すわけにはいかないし……」
秀和「そうか、その手があったか! ありがとな千紗!」
千紗「ふええええぇぇ!? わたし、冗談で言ったのにぃ……」
優奈「あんた、見かけによらず案外怖いこと言うわね……」
千紗「ま、真に受けちゃだめだよ優奈ちゃーん!」




