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反逆正義(リベリオン・ジャスティス)Phase One——Ten days in heaven(or in hell)  作者: 九十九 零
第2章 ヘブンインヘル転学編・波紋を呼ぶ奇跡
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リボルト#10 轟く雷鳴、怒濤の嵐 Part7 未完成の作戦

 四方がガラスの壁に囲まれている広い空間の中で、土具魔が佇んでいる。その周りにいるのは、苦しみにのたうち回っている大勢だ。ざっと見ると約十六、七人ぐらいか。彼らは黒い炎に包まれて、その面容を確認することすらできない。

「うあああああああー!!!!」

「誰か、誰か助けてくれぇぇーー!!!」

「このままじゃ死んじまう! まだ、まだ死にたくねええええーー!!!!!」

 正体不明の連中は恐怖に襲われて声の限りに叫んでいるが、あまりにも人数が多すぎて声が混乱してしまい、もはやその内容は把握できなくなる。


 一方真ん中に突っ立っている土具魔は、苦しむ人たちの姿をじっくりと観賞していやがる。その顔に浮かぶ不気味な笑顔は、何度見ても鳥肌が立つ。

「ふはははははっ! 無駄だ、無駄だぜ! いくら声を出したところで、ここじゃ誰も聞こえやしねえぜぇ! 貴様らは大人しく、俺様の黒炎(こくえん)に焼かれて死ぬがいいぜ!」

 いかにも悪役らしいセリフを吐く土具魔はのその姿は、何とも憎らしい。

「何よあいつ!? いくらなんでもあれはやりすぎでしょう!」

 さすがにすぐ手を上げる癖を持つ十守先輩でも、この場面を目にして動揺を隠せなかった。

「ううっ! 怖いよぉ~!!」

 恐がり屋の千紗はしゃがむと、この恐ろしい光景から逃れようと片手で両目を隠し、もう片手で左耳を塞いだ。

「あの野郎、何の理由もなく他人の命を奪うとは……ふざけやがって!」

 怒りの炎に俺の正義感が燃やされ、思わず拳を握り締める。いますぐに奴の顔面に一発ぶん殴ってやりてえ。

 しかしそんな緊張感が漂う雰囲気の中で、いつも通りに振る舞う一人がいた。


「あらあら、みんな熱くなってるわね。どうりで部屋が熱いわけね」

「今はそんなことを言ってる場合じゃないでしょう、静琉先輩!」

 余裕そうにボケている静琉先輩を、碧が軽く窘める。

「ああもう、こんなの見てらんないわよ! 早く消しなさい!」

 苛立つ十守先輩は命令口調で言いながら、待ち切れずに自分でスイッチを切った。普通ならここはつっこむところだけど、さすがにこの空気じゃ無理があるよな。

 まるでホラー映画でも観ていたかのように、一部を除いてみんなは息を切らしている。よほど刺激が強すぎたのだろうか。まあ、急にあれだけたくさんの人が炎に包まれて悲鳴を上げるのを見たら、誰でもビビるよな。

 そしてムムとネネは、タイミングよくオペレータールームに入ってきた。なんかライトノベルではよくある展開だな、うん。


「お片付け、終わりました~あれ?」

「みんなどうしたの? なんかすごくやつれてるみたいだけど……」

 事情を知らない二人は、首を傾げてこっちを見つめている。

「ううん……な、何でもないわよ」

 さすがにあのような恐ろしい光景を純真な二人に見せるわけにはいかないからか、十守先輩は保護者精神を発揮し、何とか誤魔化そうとしている。

「でも、みなさんの顔がとても怖そうですけど……」

 しかし先ほどの一幕のインパクトはあまりにも強すぎたせいで、何でもないの一言じゃ到底済ますことはできないだろう。

 そこで機転を利かせたのは、やはり静琉先輩だった。


「あら、それはね、十守がまた変なことを言うから、ちょっと脅してみたの」

 そんないい加減な言い訳が通用するはずがないと俺は予想していたが、なんと二人は疑う素振りをまったく見せなかった。それどころか、二人は頷いて納得している。

「ああ~なるほど、そうなんですかぁ~そういうことなら仕方ないですねぇ」

「もーう、マスターったら相変わらず過激ですね」


 しかし飲み込みの悪い十守先輩は、静琉先輩を睨みつけながら小声で愚痴る。

「ちょっと静琉! あたしが何を言ったっているのよ!」

「もう、十守ったら鈍いわね。ここは少し空気を読んでほしいところよ。あの子たちに、あんなたくさんの人が燃えてるのを見せるわけにはいかないでしょう?」

「あっ、そっか」

 耳打ちでのやりとりで、十守先輩はようやく事情を把握した。


「さて、一旦状況を整理しよう。このままだと混乱が治まらないからね」

 哲也はメガネを押し上げると、冷静な声で騒ぎ立てるみんなを落ち着かせようとする。さすがは哲也、こんな時も動じないんだな。

「ああ、そうだな。ムカつくあいつらのことを考えるだけで、手の震えが止まる気がしねえ」

 気が付くと、いつの間にか俺の手が震え出している。これは悪への憎悪か、それとも死への恐怖か、今の俺には分からねえ。

 だけど、一つだけははっきりと分かっている。俺たちがこれから戦う敵は、想像以上手強い。中途半端な気持ちで挑むと、あっという間に葬り去られてしまうだろう。たとえ資質(カリスマ)を身に付けた今でも、油断するわけにはいかない。


「それでしたら、立ち話じゃなんですから、会議室に行きましょう~」

「案内するから、みんな付いてきて!」

 ムムとネネの優しい声に導かれ、俺たちは再び足を動かす。

 オペレータールームを出て、二つの部屋を通り越すとそこには少し大きめの扉があった。それを開くと広い空間が現れ、真ん中に大きな机とたくさんの椅子が並んでいる。白い明かりと青い壁が清潔感を引き立てている。

 しかし、そんなことはどうでもいい。今はもっと大事なことがあるからな。

 重い気持ちのままで黙々と着席する仲間たちは疲れているのか、みんな上の空になって目を泳がせている。まあ、その気持ちは分からなくもないけどさ。

 さてと、ここはリーダーとして話を進めないとな。


「ゴホン。えっと、みんなもう分かってると思うけど、俺たちの敵は増えることになっちまう。恋蛇団(ウロボロス)の連中は俺たちと同じ生徒だけど、奴らはある意味ブラック・オーダーより厄介な存在と言っても過言じゃねえだろう」

「…………」

 厳しい現実を聞かされ、それを直視しないといけないと思うと、精神的にはキツいだろう。みんなは何も言わず、ただ静かに溜め息を漏らす。

 だが、こんなことで絶望する俺じゃねえ。目の前に起きることだけじゃ、勝敗を決める要素とは限らないぜ。

「確かにこれは俺たちにとってかなり不利な状況かもしれないけど、現に俺たちも資質(カリスマ)が覚醒し、奴らの本拠地も分かった。あとはうまく戦術を考えて、あいつらを一網打尽すればいいだけの話だ」

 そうだ。何事もポジティブに考えれば、きっと打開策も自ずとやってくるはず。

 もちろん、現実はそう甘くはない。そんな俺の発言に異議を唱える人も必ずいる。


「ふん、簡単に言ってくれるな。今朝の戦いを忘れたのか? 危うく消し炭にされたところだったぞ」

 腕を組んでいる広多は、そっけない態度で容赦なく俺を注意してくる。

 けど俺は怒るつもりは毛頭ない。こんな的確な指摘をしてくれる味方も、とても心強い存在だ。むしろ遠慮してお世辞ばかり言うような奴は危ないからな。

 まあ、そもそも俺はあんなイカレた奴らと時間を費やしてまで戦いたいとは思わないけどな。


「言いたいことは分かるぜ。けど俺は別にあいつらみたいに、正面から戦いを挑めって言ってるわけじゃないぜ」

「ほう、面白い。ならば言ってみるがいい、お前のその作戦って奴を」

 おっ、まさかあの広多が食いつくとはな。これはワンチャンあるかもな。

「なに、簡単なことさ。あいつらが寝てる隙にビルの外で爆弾でも仕掛けて、あっという間にあいつらは地獄行きだぜ」

 俺は得意げに自分の恐ろしい計画を口にした。まあ、広多のことだから、どうせまた反論されるだろう。


「くっ、くくくく……」

 しかし予想外のことに、広多は珍しく笑い出した。一体どうしたというんだ?

「な、なんだよ……お前にそう笑われると、何だか気色悪いぜ」

「いや、何でもない。実にお前らしいごり押しの作戦だなと思っただけだ」

「そ、そうか……褒め言葉として受け取りたいところだが、お前のことだからきっと何か裏があると思うぜ」

「ああ、その通りだ。俺は別にお前の作戦を認めたわけじゃないからな」

「それじゃ聞かせてもらおうか、俺の作戦の穴ってやつを」

「一々お前の話に付き合っている義務はない。お前の眼鏡相棒にでも聞いたらどうなんだ?」

 やれやれ、そう来たか。相変わらずつれないことを言うな。


「へっ、さては何も考えないで適当に言っただけだろう! かっこわりーぜ、セレブ野郎!」

 広多の永遠のライバルである聡がは、こんな隙も逃さずに相手を挑発する。そしてプライドの高い広多は、恐ろしい両目を光らせるとこう言った。

「なんだと……? この会議が終わったら、絶対にお前を叩き潰してやる。覚悟することだな」

 さすがにこのままじゃ会議が中断しかねないので、俺は二人をたしなめる。

「おいおい、こんなところで仲間割れするなよ! これからあいつらと戦うというのに、こんなんじゃ笑われちまうぞ!」

 二人は争いを止め大人しくなったところで、俺は会議を進めるべく、哲也に声を掛けた。


「んで、哲也。広多は俺の作戦に意見があるみたいだけど、君はどう思う?」

「そうだね……論理的に考えれば、あれだけ高いビルだから、これはかなりの作業になりそうだね。それに爆弾を仕掛けている途中に恋蛇団(ウロボロス)の連中に気付かれたら、作戦も無駄になるしね」

「ああ……確かにそうだな」

 辛辣な皮肉を言う広多と違い、理性的な哲也の冷静かつ的確な指摘を聞いて、俺は思わず頷く。

「それ以前に爆弾がないんだよな~。作るとしても時間がかかるぜ」

 両手を頭の後ろに置いてのんびりと座っている聡も俺たちの会話に混ざる。ここでもゲーマーとしての勘を働かせているのか。

 男子ばかりが話しているのでつい女子の存在を忘れがちだが、どこからともなく元気と色気を兼ね備えている声が聞こえてくる。


「ねえ、いっそのこと中に侵入して、中枢(ちゅうすう)部を破壊するのってどうかしら?」

 提案したのは美穂だった。確かにそれなら爆弾をたくさん用意しなくても済むが、その分逆にリスクが大きくなる。あれだけ人が多いと、一度バレるとリンチされかねないし、失敗すれば防衛も固くなるだろう。それに今朝の戦いで、俺たちの顔も割れているはず。一体どうすれば……

「美穂ちゃんは、ただナンパしたいだけでしょう」

「ちょっと菜摘! それは言わない約束でしょう!?」

 菜摘の容赦ないツッコミに、慌てふためく美穂。相変わらずいいコンビだな、この二人は。

 ……いや、待てよ。この中のメンバーの一部に陽動作戦を任せると、もしかしたら成功しやすいかもしれねえ。

 しかし、それは仲間を危険に晒させることになる。もし万が一誰かが危ない目に遭えば、言うまでもなく俺は責任を問われるだろう。

 どうする? 本当にこれでいいのか?

 いつもの俺なら、「派手に暴れてやろうじゃねえかー!」と意気込むところだったが、今は状況が違う。なにしろこれはゲームじゃないから、無闇に他人の命を無駄にするわけにはいかない。

 強い責任感で俺の心が重苦しくなり、頭に浮かんだ作戦を俺は飲み込もうとしている。そのときの自分はどんな顔をしていたのか、鏡で見てみたいものだ。

 その時に俺の背中を押してくれたのは、またしてもみんなの言葉だった。


「何を迷っているんだい? 君はこの中の一員なんだから、躊躇わずに君の考えを口にすればいい」

「そうだよ、秀和くん! そのためにみんながここに集まっているんじゃない!」

「勝ち取りましょう、わたくしたちの自由を!」

「みんな……」

 思わず周りを見渡す。仲間たちの真摯な眼差しは、俺の心を暖かくする。

 ……ったく、何ビビってんだよ俺は。みんなはこんな強い決意をしてるのに、リーダーである俺が迷ってどうすんだよ。

 よーし、もう俺は迷わねえぜ。こうなったらさっき考えた作戦を相談してみようじゃねえか。


「ええ~~??? アタシと優奈が二人で色仕掛けをして中の連中の油断を誘う?」

 さきほど提案した美穂は、何故か甲高い声で叫んだ。

「ああ、そうだ。こういうの得意なんだろう?」

「まあ、それはそうだけど……何だかわざとらしくてイヤなんだよね……」

 勝ち気な優奈も、やや引き気味だった。

「気持ちは分かるけど、これは自由を勝ち取るための作戦だ。それに、奴らが隙を見せたら広多と俊介が気絶させてやるから」

「いや、違うな」

「えっ、どこがだ?」

 広多の冷ややかな言葉に、俺は無意識に冷や汗をかく。ここまで来て、まさかまた反論するんじゃないだろうな?


「『気絶させてやる』ではなく、『息の根を止めてやる』だ」

「あっ、そういうことか」

 いつもより過激さを増す発言をする広多を目の当たりにした俺は動揺を隠し切れなかったが、協力の姿勢を見せている彼には一安心だ。

 俺は視線の方向を変え、作戦の説明を続けた。

恋蛇団(ウロボロス)の連中の注意がそっちに逸らされてる隙に、俺は中枢部の破壊へと向かう。ただおそらくそこには頑丈な防犯系統セキュリティ・システムがあるかもしれないから、機械に詳しい聡と碧は俺と同行してくれ」

「おうよ、任せろ! へへっ、ついにオレが活躍する場が来たぜ!」

「了解です。不束者(ふつつかもの)ですが、どうぞよろしくお願いします」

 ありがたいことに、俺に指名された二人はとても嬉しそうに役割を引き受けてくれた。


「ねえねえ、私たちは何をすればいいの?」

 ハイテンションの菜摘は、自分にはまだやることがなくてうずうずしている。

「いい質問だ。菜摘と哲也と千恵子は、もし俺たちが中枢部を破壊している途中で敵がやってきたら、奴らの足止めをしてくれ。いいな?」

「オッケー! 敵をボッコボコにしちゃおうね、哲也くん!」

「ああ、分かった。期待を裏切らないように努力するよ。千恵子くんもそれで問題ないかい?」

「畏まりました。精一杯頑張りますね」

 親友の三人は予想通りに快く頷き、迷うことなく俺の決断に同意した。

 そして突然、予想外の人物が口を開く。


「あーあ、みんなちゃんと役割を持ってていいな~おれもなんかやりてーぜ! こうどばーんとした感じ!」

 前屈みで机に伏せている直己は大きな欠伸ををして、退屈そうに文句を言う。

 よし、それじゃお望み通りに、このプレイボーイにぴったりの役割を与えてやろうじゃねえか。

「そう焦るな、直己。こういこともあろうかと、お前にはもってこいの任務(ミッション)を用意しておいたぜ」

「おっ、マジで? なんだなんだ?」

 いい情報を耳にして、早速身を起こす直己。やれやれ、せっかちな奴だな。

「時間を稼げ。喋っても殴ってもいいから、方法はお前に任せる。何でもいいからとにかく時間を稼げ」

「えっ、それだけ?」

 思ったの違ったのか、直己は拍子抜けした顔を浮かべる。

「侮っちゃいけないぜ。お前の頑張り次第で、この作戦が成功するかどうかに大きく関わるんだぜ」

 この役割の重要性を伝えるために、俺はギロリと直己を凝視しながら、人差し指の爪で机を突いて音を立てる。

「ちょっ、そんな大げさな……」

「大げさじゃねえ。俺は本気で言ってるんだ」

「ま、マジか……そこまで言われたら、頑張らないわけにはいかねーよな!」

「よし、その意気だ。頼んだぞ、直己!」

「ああ、任せとけ……がはっ!」

 やる気が湧いたのか、直己は勢いよく自分の胸を叩いたが、調子に乗ったその力があまりにも強すぎたせいで、直己は苦しそうに喘息している。

「もう、このおバカ! 戦う前にへばってどうすんのよ!」

 そしていつものように名雪は直己をたしなめたが、心配のあまりに彼女は立ち上がると直己を支える。


「あの、ちょっといいかな?」

 ずっと黙っていた千紗は、突然手を上げて何やら質問をしようとしているようだ。

「ん? どうした、千紗」

 俺は彼女に声を掛けて、その内容を確かめる。

「ここからはあのビルまで結構遠いよね? どうやってあそこに行くのかな?」

「あっ……」

 そういえばそうだった。奴らのいるビルに行くには、まずはあの広い荒野を渡らなければならない。だがあそこにはたくさんのネガコレがうろついているため、歩行はまず無理だろう。あんなのと戦っているうちに、戦力も劣っていくしな。

「『あっ』って……まさか考えてなかったのかよ!?」

 俺の失言に思わず大きく退く聡。まあ、さっきまでは順調だったから、まさかこんな流れになるとは思わなかっただろう。

 解決策が見つからないまま、賑やかな会議室も一気に沈黙に包まれてしまう。おまけにみんなから投げてくる期待の目線が地味に痛い。ああ、穴があれば今すぐ入りてえ。

 黙り込むこと3分。この痛いほどの静けさを何とかしないといけないと思い、ついに俺はこの結論に至った。


「よし、決めた」

「おっ、なにかいいアイデアでもあるのか?」

「いや、悪いけど何もねえよ。とりあえず今日は休もうぜ」

 俺は席を立つと、ゆっくりと扉へと近付く。会議室はまたしても短い間の静寂に満たされたが、早くもそれが大きな絶叫に変わる。

「「「「「「「えええええええええええーーー!!???」」」」」」」

 まあ、やっぱそうなるよな。


「ちょっとちょっと! 作戦を考えたらすぐ行動するんじゃなかったの!? 私はずっとその線で考えてたのに!」

 予想外の展開に取り乱す菜摘は、後ろから追いかけて俺を呼び止める。

「あれ、俺そんなこと言ってたっけ? 菜摘の勘違いだぜ。それにさ、みんなも訓練で疲れてるだろうと思うし、さすがに今日は無理だろう」

「そ、それはそうだけど……秀和くん、結構やる気だったから」

「やる気があるのは本当だぜ。でもな、今は問題が出来ちまったから、とりあえず一旦保留しておこうと思ってるんだ」

「じゃあ、あのビルに行く方法は……」

「考えてもしょうがないだろう。まあ、そのうちは何とかなるだろうしさ」

「な、何とかなるって……楽天家だね、秀和くんは」

「ありがとうな、菜摘。まあ、そういうことで今日は解散するぜ。以上」

 これ以上長引いてもどうしようもないと判断し、俺は気分転換しようとさっさと扉を開けて会議室を出る。


 顔こそ見ていなかったけど、きっと今頃みんなは俺を責めるような表情をしているだろう。

 だけど勘違いしないで欲しい。俺は別に逃げるわけじゃないし、ここから出たい気持ちはみんなと同じなんだ。

 ただ同じ問題でずっと悩み続けていても、疲れるだけだ。俺はそういう面倒くさいことは苦手だし、今朝のような突然の戦闘まで響いたら元も子もない。

 とりあえず今はゆっくり休んで、明日もいつも通りに元気に頑張ればいいんだ。

 しかしこの時の俺は、この後とんでもない危機(ピンチ)が襲いかかってくることを、予想だにしなかった……

次回予告


秀和「自分の部屋に帰ると、そこには正体不明の半裸少女がいた!?」

哲也「問答無用で襲い掛かる半裸少女。その恐るべき資質(カリスマ)は!?」

千恵子「戦況はこちらに有利でしたが、半裸少女は独りではありませんでした! 恋蛇団(ウロボロス)の強力な増援により、脱兎組(ランニング・ラビット)は危機一髪!」

菜摘「そして空から落ちてくる巨大バス! 果たして敵か味方か!?」

秀和「次回、『忍び寄る黒き霧』! 乞うご期待!……よし、決まったぜ!」


哲也(よく考えてみると、まともな次回予告をしたのは、これで初めてかもしれないね……)


???(半裸少女半裸少女ってうるさいわね……見てなさい、絶対に痛い目に遭わせてあげるわ……)

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