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反逆正義(リベリオン・ジャスティス)Phase One——Ten days in heaven(or in hell)  作者: 九十九 零
第2章 ヘブンインヘル転学編・波紋を呼ぶ奇跡
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リボルト#10 轟く雷鳴、怒濤の嵐 Part6 ゴールデン・オアシス

※このパートに「危ない内容」が含まれております。ご注意ください。

 オペレーター室に入ると、先ほどの意味不明の文字列がいつの間にかはっきりとした映像に変わった。まだ見ぬ荒れ果てた大地を映しているそれが、俺たちの心を苦しめる。

 しかしそんな余裕すら与えずに、砂塵(さじん)の中に微かに見える柱のようなものが早くも俺の注意を引く。

「ん? 何だあれは……」

 同じく異状に気付いた哲也は、その柱らしき影を究明しようとメガネを押し上げる。

「きっとあいつらの本拠地に違いないわね! 碧ちゃん、拡大をお願いするわ!」

「了解しました」

 十守先輩の指示に従い、碧は席に戻っていつも通りに鍵盤(キーボード)熟練(じゅくれん)に操作する。映像に映っている柱が徐々に近付いてきて、その正体が明らかになる。

 すると、そこにあるのは俺たちの想像を絶するものだった。


「な……なんじゃこりゃああああ!!!」

「おいおい、マジかよ!?」

 真っ先に叫んだのは聡と直己だった。普通ならここで他のメンバーたちにうるさいと注意されるところだったが、絶句している彼らにとってもはやそれどころじゃなかった。

 さて、そろそろ本題に入ろう。一体何を見たのかというと、そこにはなんと都市らしき場所があった。そして柱のようなものは、そびえる金色に輝くビルだ。それも三つ、三つもだぜ!

 あんな荒野の中で、まさかそんなすげえところがあるとは……まるでオアシスじゃねえか!

 もちろん俺たちのいるここは寮やショッピングモールがあるから、決して人が住めない場所じゃないけど、こうして一目で比べるとどうしても見劣りがしちまう。


「これはとんでもないことを見つけたわね……ねえ碧ちゃん、もう少し中の様子を映してもらえないかしら?」

「はい、任せてください。1階の玄関(エントランス)でいいですか?」

「ええ、それでいいわよ」

「了解しました」

 十守先輩と碧の会話が続く中で、気持ちが高ぶる俺たちは瞬きもせずにただスクリーンをじっと見つめる。

 そして、さっきの金色のビルはただの序の口に過ぎないことを思い知らされちまった。


 「GOLDEN OASIS」と書かれている大きな看板が飾られている入り口の近くには、広いロビーで騒ぐ大勢が集まっている。その数はうちの寮にいる人の何百倍もありそうだ。彼らの周りにあるのは、優雅かつ豪華な雰囲気を醸している様々な高級品だ。

 一方机にはいかにも珍貴(ちんき)そうな食材がずらりと並んでいやがる。おそらく料理に詳しい千恵子でも、名前が知らないものがほとんどだろう。

「すげー! まるでホテルみてーな場所だな、おい! なんか色々楽しそうだしよ!」

「ここよりずっと豪華じゃんか! こんなステキな場所があると分かってれば、あそこに住めばいいのになぁ~」

 ハイテンションな二人は、未だに興奮が抑えきれないようだ。気持ちは分からなくもないけど、少しは言いすぎじゃないか?

 案の定、この光景を見ている千恵子は冷ややか視線を二人に浴びせる。


「あら、わたくしの作った『すだち寮』に文句ををつけるおつもりですか?」

「「ぎくっ!」」

 反射的に肩を竦める聡と直己。その情けない姿は、まるでお菓子をつまみ食いをしてるのがバレた子供みたいだ。

 もちろん、この男も黙らずにいられなかった。


「ふんっ、こんな下劣(げれつ)酒池肉林(しゅちにくりん)に溺れてるとは、所詮は俗物の発想だな」

「くっそ……コイツだけには言われたくねーぜ……」

 ライバルにこんな風に蔑まれると、さすがにいつも強気な聡も凹んだ。

「もういいですか? そろそろカメラを動かしますよ」

「ええ、頼んだわよ」

 あまりの見苦しさに痺れを切らしたのか、碧はジト目でこっちに視線を向けてくる。十守先輩は心ここあらずの状態でスクリーンを睨みつけながら、適当に碧に返答した。

 その時、十守先輩は何やら呟いてるようだ。


「何よ、このヨダレが出そうなセレブ生活……一日だけでもいいから、あたしもあそこに住んでみたいわ……」

 どうやら、「俗物」はまた一人増えたみたいだな。

「えっ? 十守、今なんて……」

 さすがに静琉先輩も予想しなかったのか、彼女は目を丸くして十守先輩を見据えた。

「ん? な、なんでもないわよ! 空耳よ空耳!」

 いつも静琉先輩に翻弄されて恐怖心が動いたのか、十守先輩は先輩としての威厳がなく、ただ狼狽えて誤魔化す。

「は、はぁ……別にそんなに焦らなくてもいいのに……あっ、さては……」

 最初は少し戸惑った静琉先輩だったが、早くも十守先輩の真意を見破ったのか、またしても意味深な笑みを浮かべた。

「お、お願いだからやめて! あとでチョコを奢るから何も言わないで!」

「ふふっ、さすがは十守、飲み込みが早いわね。約束よ?」

「うんうん、約束よ! 破ったら好きにしてもいいから!」

「あらあら、そうなの? それなら逆に破ってくれたほうが嬉しいかも」

「静琉ーー!!!」

 ……まったくこの二人は恐ろしいぜ。気付かないうちに話を別の方向に持っていきやがる。漫才でもやってるつもりか! おかげでさっきの緊張感も一気に吹っ飛んだし。

 さて、そんな二人を置いといて、俺はスクリーンに集中するとするか。


 再び画面に集中すると、そこに映っているのはロビーの少し奥にある、ブランド品が揃う店だった。大勢が好き放題に商品を奪い合い、前に教室を覗いた時の光景が蘇る。もちろん店員らしき人がいるわけもなく、レジなんて置かれるはずもない。どうやらここも「無料大放出サービス」が行われているようだ。

 しかしその無法地帯では、欲しい商品を手に入れるのは容易いことじゃなさそうだ。貪欲(どんよく)に支配されている彼らは、手中に収まっている武器を振りかざして邪魔する相手を容赦なく痛めつける。

 これはひどい。あまりのひどさに、俺は思わず言葉を失う。その代わりに口数の少ない広多は、一言でこの恐ろしい状況をまとめた。

「何だこれは……正に地獄絵図だな」

「ああ、確かにその通りだぜ」

 いつも広多に反論を唱えている聡も、この場合でもさすがに同意せざるを得なかったみたいだ。

 そして次の瞬間に、ただでさえ反吐が出そうなこの光景が、更なる衝撃的な方向へ展開する。


「どきなさいよあなたたち! ここにあるものは全部私のものだから!」

「……!! この声は……」

 聞き覚えのある声に反応して、友美佳は無意識に縮み上がる。俺は何となく、その声の持ち主が分かるような気がした。

 霹靂(へきれき)のような大声に驚いたのか、さっきまでやかましかった店内が一気に静まり返った。続いて画面の下から、例の山ガールはデカい金棒と共に姿を現す。やっぱりこいつか。

 床の上で引きずられる金棒が発するゴロゴロとした音は、無言の威圧感を放っている。そして山ガールは金棒を床に立てひびを入れると、得意げに言い放った。


「さあ、命が惜しければさっさとここを去りなさい。そしたら見逃してあげる」

 もちろんそんな乱暴な物言いに屈するような連中は、そこにいるはずはなかった。彼らは顰め面をして、山ガールを睨みつける。

「ああん、なんだテメェ? ここはテメェの店じゃねぇくせに、威張ってんじゃねぇよ!」

「そうよ! 何を取ろうとあたしの自由じゃない! あんたこそ消えなさいよ!」

 彼らの反発が山ガールの神経を逆撫でにしたか、彼女の表情は一瞬にして暗くなり、負のオーラが漂う。次の瞬間に彼女が顔を上げた時は、怒りで突出したその血眼はもはや人間のものとは思えない。


「あっ、そうなの。ならいいわ。私がこの手であなたたちをあの世に送ってあげるしかなさそうね」

 冷たい言葉を投げつけると、山ガールは周りを威圧するかのように大きな金棒を振り回している。野獣の咆哮を彷彿させる空を切る音を聞くと、思わず鳥肌が立つ。

 苛立ちに支配されて駆け出す山ガールは、一番近くにいる標的(ターゲット)を目がけてトゲ付きの凶器を振り下ろす。あまりの早さに、名前も知らない狙われたあいつは赤い液体と共に吹き飛んだ。

 この衝撃的な瞬間を見て動揺したのか、他の連中は武器を出して応戦しようとするが、深い執念を持つ山ガールに勝つことは到底できなかった。

 なぜなら彼女の一振りで生み出した風圧が強すぎて、それに襲われる連中は身動きが取れなかったからだ。その隙に彼女が思うままに攻撃を仕掛けることが可能となり、連中は反抗する術もなくあっけなくやられてしまう。


 ようやく「邪魔者」がいなくなり、山ガールはおもむろに商品が陳列されている棚に近付く。彼女は様々な宝石がちりばめられているネックレスを首に付けると、両手にいかにも高そうなハンドバッグを手にしている。

 興奮しているのか、彼女の顔付きがだんだんおかしくなっていき、まるでヤクでもやっているかのような狂気っぷりだった。

「すごい……すごすぎるわこれ……やはりこういう贅沢リッチ生活は、私にお似合いだわ……!! ヘブンインヘル、サイコー!」

 そんな人間離れした彼女の言動を見て、俺たちはもはやツッコミの言葉すら見つからない。先ほど彼女があれだけお金持ちへの憎悪を示していたのに、自らお金持ちが過ごしているような人生を求めているとは思わなかったぜ。

 いや、待てよ。これってもしかして、お金持ちへの憧れの裏返しとでも言うべきか。ブドウを食べたいけどそれに届かなかったキツネも、ブドウが酸っぱいと負け惜しみを言ってたしな。きっとこいつも、あのキツネに似ているような見栄っ張りなんだろうな。かわいそうに。


 そしてこの一連の出来事を目撃した友美佳は、すっかり放心状態になって、瞳の光が消えかけている。

「真寿司……ウソよ、こんなのあたしが知っている真寿司じゃないわ! きっとあのろくでなしの先生たちが、あの子を洗脳したに違いないわ!」

 山ガールがイカレてることが明らかな事実にもかかわらず、友美佳はまたしても真寿司を庇う。

 しかし彼女を嘲笑う冷ややかな声が、後ろから響いてくる。

「ふん、またそんなことを言うか。現実逃避したい気持ちは分かるが、いい加減受け入れろ。彼女の歴とした敵だ、その顔を見れば一目瞭然だ。そんな奴には同情心をかける必要はあるまい」

 自分の友達があんなひどいことを言われると、いい気分でいられるはずがない。案の定友美佳は怒り心頭に発して、広多の批判を反発しようとする。

「な、何よあんた! あんたは真寿司の何が分かるというのよ!」

「そのセリフ、そのままそっくり返してやろう」

「……っ!? ど、どういう意味よ?」

「無論、言葉通りの意味だ。そういうお前こそ、奴の何が分かると言うのだ? 久しぶりの出会いに彼女にあんなことを言われたり、先程のあれであんなに動揺したり……本当は最初から、お前は彼女の何も分かってないのではないだろうか」

「うっ! そ、それは……」

 ズバリと痛いところを突かれた友美佳は、片手で胸を抑えながら後ろへ下がった。握り締めたもう片方の拳は震えが止まらない。

 このまま熾烈な弁論へ展開するのかと思われるような雰囲気だったが、突然の空気を読まない笑い声が俺たちの注意を逸らした。


「ヒャーハッハッハッハッハァァーー!!!」

「な、なんだ? なんかどこかで聞いたことがあるようなキチ……じゃなくて狂った声だぞ! これってまさか……」

 あまりにも攻撃的な声に反応したのか、直己はあやうく放送禁止用語を口にしかけたものの、すぐさま自分の失態に気付いて言い直した。

 まあ、わざわざ言わなくてもその声の持ち主はすぐ分かると思うけどな。

 どうせあの爆弾魔はまた変な爆弾でも作ってそのちっぽけな喜びに()()れてるだろうと思っていた俺だったが、カメラが捉えた予想外の衝撃的な映像が俺たちの目を眩ませる。


 それは一体どんな内容かと言えば、爆弾魔が黒いブーメランパンツ一丁の姿で、ベッドの上で竹夫人(ダッチワイフ)のようなものと戯れているというとんでもない光景だ。

 まだ性に(うと)い高校生である俺たちには、これはかなりの赤面ものだ。若い可奈子と碧はおろか、俺たちより年上の十守先輩と静琉先輩まで驚きを隠しきれずに目を見開いた。

「こ、これはなかなかスゴいですね……」

 いつも落ち着いて眠そうな目付きをしている碧は、さすがにこのような刺激の強い映像の前では取り乱してしまうよな。

「きゃあー! 過激であります! 未成年禁止であります! こんなの見てられないであります!」

 一方可奈子は両手で顔を覆ったが、指の隙間が大きく空いていて、見る気満々なんじゃないかってツッコミたくなってしまう。

 そんな二人を見かねる十守先輩は、慌てて手のひらで彼女たちの目を遮る。


「こ~らぁぁぁー!! 子供が見るものじゃないから、さっさと目を閉じなさい!」

「「はーい」」

 「お楽しみ」がなくなったからか、二人は興ざめた声を漏らす。まったく、とんだおませさんだな。

 それはそうと、あの爆弾魔が一体なにをやってるか、もう少し確かめるとするか。こんなイカレた奴がこんなイカレたことをするのを観察するのが、まったくもって不本意だけどな。


「ウッホー! すんげー気持ちいいぜぇ! なあ、マナミもそう思うだろう!」

「あぁん♥ もう、目立くんって激しすぎっ♥ でも、こういうのって嫌いじゃないわぁ~♥」

 ベッドの上に爆弾魔しかいないはずなのに、何故か女性の声が聞こえる。よく見ると、あいつが抱いている竹夫人(ダッチワイフ)の端っこに何やらスクリーンらしきものが縛られていて、そこには女の子の顔が映っている。タブレットかな?

「やれやれ、あれだけ騒いでたのに、結局自分も恋人が欲しいじゃん! 痛いやつだなぁ~」

 さっき爆弾を投げられてよほど根に持っているのか、爆弾魔の弱みを握った直己は物凄く得意げに言う。


「覗きをしてるあんたが人のことを言えないでしょうが」

「うがっ!」

 そしていつものように直己は名雪にツッコまれて、心に大きなダメージを負った。


 ……そういえば、土具魔(あいつ)はどうしてるんだ? イヤな予感しかしないけど、相手の情報を収集するためにはここは我慢するしかねえ。

「碧、この辺りにある一番強いP2(ピー・ツー)反応がある場所を探し出してくれ」

「そうしたいのは山々ですが、今私の目が十守先輩に押さえられていて何も見えません」

 どうしようもないと言わんばかりに、碧は両手を上に向ける。確かにそのままじゃ何も出来そうにないな。

「十守先輩、そろそろ手をどかしてもいいんじゃないですか」

 まだ必死に手で二人の目を遮る十守先輩を見て、俺は恐る恐る声をかける。

「わ、分かったわよ! 早く済ませなさいよ、碧ちゃん!」

「言われなくてもそうするつもりです」

 頬の赤みがまだ消えないまま、碧はいつになく慌ただしい動きでキーボードを操作し、一番強いP2(ピー・ツー)の発生源を探している。

 恥じらいが働いたからか、思ったより早く碧は目標の場所を見つけてくれた。


「強大なP2(げん)発見。地下室です」

「よし、カメラに繋いで映像を出力するのよ!」

「了解です!」

 柄にもなく熱くなった碧は、これ以上にない熟練な手捌きでキーボードを動かす。

 すると、世にも恐ろしいあいつの存在が、再び俺たちの目の前で現れる。

秀和「……ハッ!! こ、これは……」

千恵子「嘘でしょう……こんなことが……」

哲也「いくらなんでも、これは非常識だぞ!」

菜摘「うわ~~今すぐここから出たいよ!」


碧「さすがに私も、これは驚きますよ……」

可奈子「な、なんでありますか? 全然見えないでありますよ!」


十守「明日から一週間、アトムモール全商品が100パーセントオフセールですって……!!」

静琉「あらあら~それって無料なんじゃないの~でもここから出られないのは残念ね~」


壊時「くそっ! こんなの不公平だろう! 一体どうすりゃいいんだよこれ!」

俊介「諦めろ。そんなことより早く映像に集中しよう」


聡(マジレスだ、コイツ……)

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