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反逆正義(リベリオン・ジャスティス)Phase One——Ten days in heaven(or in hell)  作者: 九十九 零
第2章 ヘブンインヘル転学編・波紋を呼ぶ奇跡
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リボルト#10 轟く雷鳴、怒濤の嵐 Part2 千変万化の一本槍

 すべてのP2(ピー・ツー)を、目の前の空間に凝縮させる。俺の思いに応えたのか、早くも稲妻に包まれている玉が3、4つ現れた。

 よし、準備はできたぜ。あとはこいつらを一気に発射するだけ……!

「……(シュート)!!」

 俺は手を振って、玉を発射する合図を送る。すると玉が一斉に前進し、壊時が投げてきた時計たちをことごとく粉砕した。

「んなっ!? 弾道(パターン)が変わりやがった!?」

 予想外のことに、壊時は大声で叫んだ。

「やはりな……道理でP2の反応が違うわけだ。それにあの様子だと、どうやら彼は咄嗟(とっさ)にその技を考えたらしいな」

 一方俊介は、自分の予想が当たったものの、突然の出来事の前にはさすがに驚きは隠せない。


 だが一番興奮しているのは恐らく俺本人かもしれないな。新たな可能性を見出した俺は、熱い血液が滾って身体が火照っているのが感じるぜ。

 まあ、確かに俊介の言う通り、この派生(アレンジ)は急に思い付いたものだ。やはり極限状況(ピンチ)になると、新しい力も覚醒しやすくなるな。


「うわっ、何今の!? この前の槍とまったく違うね!」

「おおー、すげーじゃねーか! またしても新しい技が出せたな!」

「これなら、簡単にかわせそうにないな。やはり君は大したやつだよ、秀和」

 続け様に響いてくる菜摘、聡と哲也の三人の声が、この場の熱い空気を更に盛り上げる。

「へー、なかなかやるじゃないの! ほら、あたしの言った通りでしょう? やっておいて損しないって」

 俺にこの模擬戦をやらせた張本人の十守先輩は、誇らしげに声を弾ませた。願ってもない成果を目の当たりにして、喜んでいるのだろうか。

 だが模擬戦はまだ終わっていない。むしろまだ始まったばかり、とでも言うべきか。たった一つの派生技だけで恋蛇団(ウロボロス)に勝とうとするなんて、夢のような話だ。もっと努力して、新しい技を考えないとな。


「さあ、そろそろ続けようぜ!」

 全身の血液が沸騰(ふっとう)している俺は、二人を挑発しようと親指以外の四本の指を繰り返して折って、「かかってこい」のメッセージを送っている。

「このやろう~! ちょっと技を変えただけでいい気になるんじゃねーぜ!」

「ああ、その通りだ。何しろそれができるのは君一人だけじゃないからな」

 そう言った二人は、またしても体勢を整えて仕掛けようとする。ふん、とことん付き合ってやるぜ。


 先頭を切ったのはまたしても壊時だった。彼は股をカニのように大きく開き、力士を彷彿とさせるポーズで力を込めて再び地面に踏みつけた。

 どうせまた見かけ倒しの時計を落とすだけだろう? そんなもん、俺が新しい技で……うわっ!

 空を見上げた俺の目に映るのは、今まで以上にドデカい直方体だった。それが重力の作用で素早く落ちていき、地面に触れた時に耳が壊れそうな大きな物音が響く。

 俺は早く耳を塞いで、何とかその耳障りな音による耳へのダメージを軽減させると、地面に落ちた直方体の正体を確認する。なんとそれはどこにでもある自販機だった。

 「武器」の用意ができた壊時は、自販機に向かって走っていく。その側に着くやいなや、すぐさま両手でそれを抱えて持ち上げようとする。


「ふんぬ……!! おりゃあああ!!」

 必死に自販機を持ち上げている壊時。その声から彼の本気が窺える。

 ……あの技が決まったらまずいぜ。何とかして阻止しねえと!

「千里の一本槍!」

 壊時さえ止められれば、次の攻撃が来るまでに作戦を練る時間が稼げる。ここは破壊力の強いオリジナルで行こう。


 しかし、相手は一人だけじゃなかった。

「させるか!」

 何の前触れもなく発した俊介の声が、俺に冷や汗をかかせた。

 気付けば彼は二つの球体を、壊時の前に動かしている。その二つの球体が止まると、そこからいくつかの光線を放ち、互いを繋ぐ。すると鏡らしき平面が出現し、壊時の前にある空間を覆っていく。

 そしてちょうどその時に、俺の稲妻がそこに当たってしまう。俊介のサポートを受けた壊時は、びくともせず自販機を持ち上げ続けている。

 なるほど、さっき俺の攻撃が通らなかったのもそのためか。俺は全力を出せばあんなシールドはまったく目じゃないけど、まあ模擬戦だし、下手したら相手を病院送りにしちまうかもしれないからな。ここはちゃんと力加減をコントロールしないと。


 だが、この予想外の展開により、俺は壊時の攻撃を許すことになってしまう。

「とおおおおーーーりゃああああーーー!!!」

 高校生とは思えない超人的なパワーを駆使し、壊時は成人男性の高さもある自販機を持ち上げてこっちに投げてきやがった。

 もちろんそんなものをマトモに喰らうわけにはいかねえ。俺は飛んでくる自販機を見据え、そいつが落ちてくるタイミングを見計らい、後ろへとジャンプして回避する。

 だがさっきの二人の戦術を体験した俺には分かる。もうすぐ次の攻撃がやってくることを。

 俺の予想通りに、今度は球体の力を借りて空を飛ぶ俊介は、別の球体でレーザーを雨のようにこっちに発射してくる。

 位置に有利なため、俊介は確実に攻撃を俺に浴びせている。俺は反撃に転じるも、P2(ピー・ツー)のチャージに時間がかかるため、絶え間なく落ちてくるレーザーをかわすのに精一杯だ。

 さらに壊時のやつもまたしてもデカい自販機を落として、こっちに投げてくる。しかも今度は片手に缶を持ちながら余裕そうにドリンクを飲んでいやがる。


 上空にはレーザーの雨。前方にはデカい自販機。凄まじいスピードで迫ってくる二つの攻撃を回避するには極めて難しい。一体どうすれば……

 って、考えても仕方ねえ。とりあえず自分の体に任せるしかない!

「千里の一本槍……」

 右腕にP2(ピー・ツー)をチャージしたところで、俺は深いことを考えずに早速それを放出させる。

 こんな多くの対象を、一気に破壊する方法は……よし、これだ!

「……(アサルト)!」

 俺の声が止まる瞬間に、目の前にはたくさんのミサイルの形をした稲妻が出現し、一斉に前進する。

 ミサイルはさっきの玉と違いただ前進するのではなく、ちゃんと俺の考えている通りに動く。するとミサイルは俊介のレーザーと相殺(そうさい)し、壊時の自販機を貫いて破壊した。


「おいおい!? 今度はミサイルになっちまったぞ!?」

 目まぐるしい俺の技の変化に追い付けない壊時は、再び大声で驚きを示した。

「なるほど、そう来たか……こんな短い時間に対策を考えて、しかも次々と新しい技を……実に面白いな」

 一方俊介は、目を見開いて俺が出た行動に感心した。まあ、これぐらいできないと、後々の戦いで勝ち目はないしな。

 もちろん驚くのは壊時と俊介の二人だけじゃなかった。天井からは、スピーカーを通じて仲間たちの熱い声援が聞こえる。よほど俺が新技を出すのを期待してるみたいだな。

 気持ちは嬉しいけど、今は模擬戦に集中しないとな。


「くっそー……こうなったら!」

 なかなか攻撃が思い通りに決まらないからか、壊時の苛立ちが募る一方だ。飛び道具での遠距離攻撃を止め、袖をめくるとこっちに走ってくる。

 ははー、そういうことか。さては近距離の格闘攻撃で俺の稲妻を封じようとする気だな。そして俺は気が取られている隙に、俊介は遠距離攻撃で俺を倒す作戦か。その臨機応変の思考は実に素晴らしいけど、あいにくこっちにはお見通しだぜ。

 ……と、そう思っていた自分だったが、現実は違った。

 少し走った壊時は、何故か急に動きを止め、突然しゃがんだ。一体なにをするつもりだ?

「ぬ……ぬうううううう……!!!」

 俺の存在を忘れたかのように、壊時は夢中に地面を引っ張り始めた。あっ、これってもしかして……

 壊時の怪力に驚く俺は、あまりの迫力に彼の動きを止めることさえ忘れてしまった。

 そして一枚の肉を口に入れてからそれを飲み込むまでの間が過ぎると、壊時は地面の一部を持ち上げ、こっちに投げてきやがった。

 この光景を見て大声を上げた人も少なくないが、別に慌てる必要はない。大きさこそは尋常じゃないが、横に走れば何とか避けられるはず……


「やれ、俊介!」

「ああ、分かった!」

 二人はまたしても息の合った声で合図を送ると、俊介はすぐにレーザーを発射し、壊時が投げた岩を細かく割った。

 小さな岩が、まるで流星雨のように降りかかってくる。思わずあの土具魔が出した忌まわしい技を思い出す。

 あいつのことが俺の闘争心を燃やし、心の中でこう自分に言い聞かせた。「ここで逃げるわけにはいかない」と。

 俺の予感からすれば、恋蛇団(ウロボロス)と再び戦う時は、いつか必ずやってくるはず。リーダーとして、やつらから仲間を守るのも俺の義務だ。

 そうと決まれば即行動だ。片腕の分のP2(ピー・ツー)だけじゃ足りないみたいだし、こうなったら両腕でチャージしないと!


 重力の作用により、石の雨は素早いスピードでこっちに落ちてくる。早くしねえと蜂の巣にされちまう。

「はああああーー!! 千里の一本槍……霊魂気砲(スピリッツバスター)!!」

 両腕に溢れ出る力を感じた俺は、空の石に向かってパンチの素振りを素早く連続で繰り出す。すると無数の電気を帯びた弾が真っ直ぐに飛んでいき、石を砕いた。


「ひょえええええー!?? ど、どんだけ考えてんだよコイツは!?」

 三度も俺の千変万化する技を目撃した壊時は、予定通りに奇声を上げてとんでもない表情になった。

 だが俺はそんなことに構っている暇はない。まだ降りかかってくる石を徹底的に消すために、勢いに任せた俺は攻撃を止められない。


 一つ、そしてもう一つ、石が消えていく。あっという間に向こう側の俊介が見えてくる。

「な、何という底力(そこぢから)だ……むっ!」

 俺が発揮した本領を目の当たりにし、さすがに俊介も取り乱したようだ。そして何かを感じたのか、彼は目を見開いて厳粛(がんしゅく)な顔付きを浮かべている。

 よく見ると、俺が出した気砲はほとんどの石を砕いたため、夢中に攻撃していた俺の攻撃は俊介に当たりそうだ。


 やばいヤバいヤバイ! ちょっとやりすぎたぜ! 今更攻撃を取り消すこともできないし、どうすりゃいいんだこれ……!

 打開策が見つからない俺は、ただ頭を抱えて焦るしかできなかった。

 気砲が外れてくれればとでも願った俺だったが、光速で飛んでいくそれは、外れることなく俊介に当たっちまった。それもドーンと大きな音に伴って。

 立ちこめる煙に包まれている俊介の様子を、俺は確認することができない。

 頼むから、無事でいてくれよ、俊介……

壊時「おいおいおいおい! なんてことをしてくれるんだよお前は! もし万が一俊介がやられちまったどうすんだよ、このルーキーが!」

秀和「わ、わりぃ! まさかそこまで威力があるとは思わなかったぜ……」

十守「あら、でもこれはこれでいいじゃない。ここまで技を増やしたら、ある程度あの生意気な先生たちや蛇っ子たちに対等に対抗できるわ」

静琉「う、うぷぷぷぷ……」

十守「な、なにがおかしいのよ静琉!?」

静琉「『たいとう』に『たいこう』……今年一番面白いダジャレを聞いたわ! うぷっ」

十守「ちょ、ちょっと! あたしは別にそんなつもりじゃないわよ! てか発音が若干違ってるじゃない!」

静琉「でも私がウケたということは、これは面白いダジャレということなの」

十守「あっ、そう……」

可奈子「あの先輩、水城先輩のことは大丈夫でありますか!?」

十守「それなら大丈夫わよ。あたしが任せた有力な戦力なんだから、こんなのでやられたりはしないわ」

可奈子「そ、そうでありますか……なら一安心でありますね」

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