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反逆正義(リベリオン・ジャスティス)Phase One——Ten days in heaven(or in hell)  作者: 九十九 零
第2章 ヘブンインヘル転学編・波紋を呼ぶ奇跡
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リボルト#09 十人十色、適材適所 Part6 二つ目の模擬戦の直前、空気はすでに熱い!

「おっ、早速来たわね、俊介くん」

 進入してきた少年の気配に気付いた十守先輩は、横目使いで彼を見やると、身体の向きをそっちに変えて挨拶をした。

 まだ見ぬ新たな仲間の存在を、俺たちは気になって観察する。

 彼は俺たちと近い世代で、見た目は十六、七歳ぐらいかな。身長も伸びていて、俺とあんまり変わってない。もっさりとした白い髪が凛々しさを引き立てているが、その爽やかな笑顔がどことなく親近感を感じさせてくれてる。


「はい、部屋で(くつろ)いでいただけなので、呼ばれてすぐ駆け付けました。ところで、この人たちは?」

 俊介と呼ばれた白髪の少年は、(ほが)らかな声で返事をした後に、初対面の俺たちのほうに視線を向けてきた。

「ああ、彼らは例の脱兎組(ランニング・ラビット)よ。あたしたちと同じ、ここから出るためにブラック・オーダーに対抗してるのよ」

 テンションの高い十守先輩は、とても嬉しそうに俊介の質問に答えた。そして先輩は、人差し指で俺を指す。


「そこの赤い髪の彼は、リーダーの秀和くんよ。二人とも仲良くしてね」

 やれやれ、リーダーとはいえ、取り分けて紹介されると何だか恐縮だぜ。まあ、悪い気はしないけど。

「そうなんですか。では、簡単に自己紹介を」

 笑顔を浮かべた俊介は、体制を整えると俺に近付いてくる。

「はじめまして。俺は真実の標(トゥルース・ルーペ)のメンバー、水城(みずしろ) 俊介(しゅんすけ)というんだ。これからもよろしくな、リーダー」

 そういうと、俊介は手を出してきて、親睦(しんぼく)の意を示そうと手を出してきた。

 もちろんその好意を無駄にするわけにはいかないので、俺も手を出して彼の手を握った。


「ああ、よろしくな、俊介。さっき十守先輩が言ってた通り、俺は脱兎組(ランニング・ラビット)のリーダーの狛幸 秀和だ。まあ、そういう堅苦しい間柄(かんけい)は気にせず、普通に『秀和』って呼んでくれればいいぜ」

「そうなのか。じゃ、お言葉に甘えさせてもらうよ、秀和」

 俺の言葉の情熱を感じ取ったのか、俊介の手の温度はさっきより熱く、トーンも一段と明るくなった。

 ふーん、あの十守先輩のことだから、てっきりまた変わったやつが出てくるかと思いきや、案外感じのいいやつじゃないか。いい友達になれそうだぜ。


 しかしその時、そんな俺の思惑が十守先輩の声に遮られた。

「ところで、壊時(かいじ)くんは? 姿が見当たらないんだけど」

「さあ……またモタモタしてるんじゃないでしょうか」

「でしょうね。まあ、いつものことだけど」

 十守先輩と俊介の会話に、新たな人物が浮かび上がる。二人は困っている顔をしているけど、どうやらその「壊時」という人は遅れているようだ。


「ったくしょうがない、もう一度呼んでみるわね」

 苛立つ十守先輩は、いやいやヘッドホンを手に取ると連絡しようとする。

 と、その時。

 たったったと慌ただしい足音と共に、もう一人の男子がおぼつかない足取りでトレーニングルームに入ってくる。うわ、今にも転びそうだ。


「壊時くん! もう、遅いわよ! 今まで何してたの?」

 そんな彼の狼狽(ろうばい)をよそに、十守先輩は眉間にしわを寄せて壊時をたしなめた。

「えっ、本を読んでただけっすけど……」

 壊時と呼ばれた栗色の髪の男子は目を見開いて、不思議そうに十守先輩を見つめている。まるで自分が怒られるのがおかしい、とでも言いそうな顔だ。


「本を読むだけでそんなに時間がかかるの!? すぐに机の上に置いて来ればいいじゃない!」

 案の定十守先輩はそんな理由で納得するはずもなく、机をバンバンと叩きながら壊時を叱る声のトーンを上げた。

 しかし壊時も負けじと大声を上げ、自分の意見を出張した。


「だってさ、オレはちょうどいいところを読んでるのに、勝手に呼び出してるそっちがわりぃじゃんか! それに、2分しか経ってねーじゃねーかバーカ!」

 ……登場早々インパクトの強い発言だな、おい。そのとてつもなく自分勝手な理由とあいまって。

 俺たちはもちろん、十守先輩まで驚きのあまりに目を丸くした。だがすぐさま先輩は調子を取り戻して、机にある置き時計を取ると壊時に見せた。

「あんたの体内時計は一体どんな仕組みをしてるのよ!? もう8分も経ってるわよ、8分も!」

 数字だらけの液晶画面が、壊時に反論の余地をさせないと「正確な時間」を示している。

 これでもう言うことはないでしょう、と十守先輩の表情から勝利宣言が聞こえそうだ。が、しかし……


「だあああああああああー!!! うざってんだよこういうの!」

 怒りに任せた壊時は、なんと十守先輩の置き時計を奪い取ると凄まじい勢いでそれを壁に投げつけやがった!

 銃弾のようなスピードで壁に向かって飛んでいく置き時計は、あっという間に大きな物音と共に殉職(じゅんしょく)しちまった。

「はっ、いい気味だぜ!」

 何の後ろめたさも感じない壊時は、腕を組みながら誇らしげにそう言い放った。

 一方十守先輩は、呆気に取られながら(から)になった自分の手を呆然(ぼうぜん)と見ている。そしてついに十守先輩も、憤怒を抑えきれずに暴走した。


「ちょっと、なんてことをしてくれるのよぉぉー!! この時計いくらするか分かってるの!?」

 価格こそ口にしなかったものの、十守先輩のその反応を見ると、いかにも高いのは目に見える。

「るせぇ! 時計を出したそっちが悪いんだよ!」

 それでも壊時は決して動じず、時計への強い憎しみを表している。しかし、それはただの始まりにすぎなかった。

「大体さ、なんで時間ってくだらないもんがあるんだよ! 形も音もないから、存在しないのと同じじゃん!」

 突然熱い演説を始めた壊時は、咳払いをするとまた話を続ける。


「それなのに、昔の人たちは勝手にありもしねえものを作り出して、くだらねえルールを作ってオレたちを苦しめてやがる! おかげさまでオレは昔から『遅刻常習犯』ってかっちょーわりぃ称号で呼ばれてる始末だぜ、マジムカつく!」

 なるほど、時間管理がルーズなやつか。それにしても、随分とうまいこと言ってるじゃねえか。一時言い訳をしてることを忘れそうだぜ。

 同じくルールを嫌う同士として、こいつとはいいメシが食えそうだな、こりゃ。


「それはあんたの自業自得じゃない」

 しかしそんな壊時の熱い演説も、十守先輩の冷たい視線で返された。

「ぬぐぐ……! いや、ぜってー違う! 時間さえなけりゃ、オレの人生はもっとラクになれたはずなのに……!!」

 壊時は少し動揺したものの、またしても強気な発言を言い続けた。よほど時間が嫌いなんだな。


「壊時先輩、同じ部署で一緒に戦う仲間として、時間をないがしろにするのはいかがなものかと思うのであります!」

 何の前触れもなく、突然可奈子のピュアな声が響き渡る。

「ぐはっ!」

 心に傷を負ってしまったのか、壊時は胸元を押さえながら二歩下がった。

「確かにその通りですね。もしかして先輩はデートする時も彼女を放置して、何時間も待たせるような人ですか? そうでしたら最低ですね」

「ぎくっ!」

 次につっこんだのは碧だった。あまりにもリアルな話で、壊時はまたしても顔を歪めて情けない声を漏らした。


「あらあら、そうなの。もちろん壊時君って、そんなクズがするようなことはしないわよね?」

 静琉先輩は片手で頬杖をついて、穏やかな笑顔を浮かべながらさりげなく恐ろしいことを言った。

「そ、それは……」

「しないわよね?」

 言いよどむ壊時に、見えないプレッシャーをかけてくる静琉先輩。

「し、しません……」

「うふふ、いい子ね」

 ついに強気な壊時も、心が折れて屈服(くっぷく)した。そのチャンスを逃さまいと、十守先輩は早くも話を続けた。


「さ~て、(ほとぼ)りも冷めたところで、そろそろ本題に入りましょう。二人とも、今から彼の模擬戦の相手をしてきなさい」

「誰だ、コイツ?」

 十守先輩の指令に、首を傾げる壊時。出会い頭にこいつ呼ばわりかよ。

「例の脱兎組(ランニング・ラビット)のリーダー、秀和くんよ。資質(カリスマ)が覚醒してるけど、まだまだ改善の余地がありそうね。彼の能力や行動パターンを見ておきたいから、あたしの代わりに頼んだわよ」

「だったらP2(ピー・ツー)で適当に敵を作りゃいいんじゃないすか? オレは忙しいんだよ」

「そんな中途半端なもので、秀和くんの本当の実力が試せないわよ。実戦と同じレベルのシチュエーションを作らないと」

 おいおい、ずいぶんと俺の腕を買ってるじゃないか。少し買い被られてる気がするけど、まあこの方が俺にとって嬉しいしな。


「へー、そうなんすか。まあ、久しぶりに暴れられるし、ここは快く引き受けてやろうじゃねーか。さっきの鬱憤(うっぷん)晴らしも兼ねてな!」

 壊時は嬉々(きき)として指を鳴らし、不気味そうに微笑んでいる。

「まだ根に持っているのか、壊時」

 そんな彼を見て、俊介は思わず苦笑する。

「ああ、そうだぜ! そしてそこのお前、よく聞いとけよ! どこの誰かは知らねーが、今オレの機嫌がサイコーにわりぃぜ! わりぃけど、ここはオレのサンドバッグになってもらうぜ!」

 傍若無人な態度を取る壊時は、自信満々に俺に宣戦布告を口にした。

 ふん、勢いが強いのはいいけど、ブラック・オーダーのやつをも倒せた俺には、こんな相手じゃ不足があるぜ!


「へー、そうか? 悪いな、そういうわけにはいかねえぜ。こっちは遊びで戦ってるわけじゃないからな。まあ、まずはウォーミングアップと行こうじゃねえか」

 闘争心を燃やした俺は、両手をズボンのポケットの中につっこんだままで壊時に言い返した。

「くぅー! コイツ、かっこー付けやがって! ますます気に入ったぜ!」

 予想外のことに、壊時は怒るどころか、かえって興奮している。こりゃ熱い戦いが期待できそうだ。


「やれやれ、きな臭い空気が漂ってきたな」

 まだ模擬戦も始まってもいないのに、すでに白熱状態の俺たちを見守っている俊介は頭を横に振りながら、訓練ブースの扉を開けて中に入る。俺と壊時はその跡を追う。


「さあ、準備はいいかしら? それじゃ、いよいよ模擬戦が始まるわよ! 3つ数えたら思う存分戦っちゃいなさい、いい戦いを期待してるわよ~」

「ったく、ここでも時間に絡むのかよ! あったまくるぜー」

 時間が大嫌いな壊時はまたしても愚痴を零すが、早くも黙って戦闘体勢に入った。


「1、2……」

 熱い炎に包まれる、六つの(まなこ)。勝利への欲望は増幅し、早速この場の空気を支配する。

「……3! バトルスタート!」

 十守先輩の合図と共に、俺と俊介と壊時の三人がほぼ同時に前に出た。


 ……己の強さを示すため? それとも、今まで(つちか)ってきた自分の力を塗り替えるため?

 いや、違う。今やるべきことは、ただ一つ。

 俺にはまだ知らない、この体に秘めている無限大の可能性を形にすることだ。

 この思いを胸に、俺は迷いなく前に突き進む。

 さあ、俺に見せてくれ。ここから先が起きる、未知の展開(シナリオ)を……!

次回予告


菜摘「やった! ついに秀和くんの戦いが始まるよ! このカメラで、しっかりと記録しなきゃ!」

千恵子「うふふっ、わたくしも何だかワクワクして参りました」

哲也「まあ、秀和のことだから期待はできそうだけど、あまりやりすぎてブースを壊さなければいいんだけどね」

聡「がんばれよ秀和! オレがまだ見たことのない超かっけー技を見せてくれよ!」

広多「まあ、期待はしないが……とりあえず観察することにしよう」

ユーシア「フレー! フレー! マスター!」


秀和(……やべえな、声援が気になって戦いに全然集中できねえ! とはいえみんなの好意を拒絶するわけにはいかないし……ジレンマだぜ!)

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