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反逆正義(リベリオン・ジャスティス)Phase One——Ten days in heaven(or in hell)  作者: 九十九 零
第2章 ヘブンインヘル転学編・波紋を呼ぶ奇跡
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リボルト#09 十人十色、適材適所 Part5 燃え上がる闘志

 しばらくして、大きなポットの中に入っているスープが、この大勢に飲み干された。あまりの美味しさに、ある人は唇を舐め回し、ある人はポットのスープがなくなることに気付かず、おかわりを要求した。


「ふぅ~、生き返るぜ! ライオンの肉って、思ってた以上にうめーな」

 手の甲で口元を拭いている直己は、元気そうにニヤリと笑う。本当はライオンの肉かどうかは分からないけど、ここは空気を読んで黙っとこう。

「やはり激しい運動をした後は、食事が捗るな」

 さっきまで完全に引いてたのに、俺がスープを飲んで無事なのを見て安心したのか、スープを全部飲んだ哲也も満足そうに言った。


「全く、一時の快楽(かいらく)に溺れていると、すぐ苦渋(くじゅう)忘却(ぼうきゃく)する……呆れて言葉に出ない」

 そんな彼らを見て、広多は思わず目を閉じながら頭を横に振る。広多は多分みんなに気を抜かないよう頑張って欲しいと言いたいだろうが、聞き慣れない言葉とその冷たい態度が誤解を招く。


 そして当たり前のように、再びこの男が動く。もはや連鎖反応チェーン・リアクションと言っても過言じゃないな。


「よく言うぜ! そういうおまえもおいしいそうに飲んでいるじゃねーか?」

 いつも通りに、聡は大声でつっこむ。彼の指差す先には、広多の手に持っている空っぽの茶碗だった。

 そういえばあいつ、マフラーで顔が隠れてるのに、よくそれを汚さずに飲めたな。まさかあの時、マフラーを解いたのか……どんな顔か気になるぜ。


「ふん、勘違いするな。できればこのような余計なことはしたくなかったが、人間は水を飲まなければ死んでしまうからな。全く不便なものだ」

 素っ気なく目線を逸らした広多は、何とかして言い訳を考えた。確かに一理はあるけど、それなら普通に水を飲めばいいんじゃねえって返されそうだな。この辺りに自販機とかはないかな?


「おいおい、相変わらず素直じゃねーな。委員長が苦労して作ってくれたもんだぜ、少し褒めてやれば本人も喜ぶと思うぞ?」

 仲間の存在を意識し始めたおかげか、聡はいつになくかっこいいことを言うようになった。

「そ、そこまで気を遣わなくても……」

「いいや、遣うさ! オレたちはもうチームなんだろう?」

「ま、まあ……それもそうですね。素敵なお言葉に感謝致します、氷室さん」

「へへっ、いいってことさ!」

 千恵子の言葉に気をよくしたのか、聡はニヤリと笑いながら指で鼻を擦っている。


 まじかよ。あの聡がここまでコミュ力を上げてたとは思わなかったぜ……いや、上げたというより、今まで潜んでいたコミュ力を発揮できるようになったというべきか。ただ初対面の時はゲームに夢中だったせいで、俺は聡への評価を見誤っていたんだ。

 ふん、やればできるじゃねえか。

 俺はそう彼を褒めようとしたが、突然優奈が発した言葉がせっかくのいい雰囲気に水を差す。


「うわー、なかなかくさいセリフを言うわね、聡。どこかのゲームでそれを知ったのかしら?」

「えっ?」

 もちろんその不意打ちを喰らった聡は、ただ驚いて何も返答できない。


 そしてそんな聡に追い打ちをするかのように、美穂まで口を挟んできた。

「しかもよりによってあの千恵子ね……ヤキモチしてる秀和くんにボコボコされても知らないわよ?」

「しねえよ。いくら何でも、俺はそんな気が小さいやつじゃなえぜ」

 美穂のふざけた発言に、俺は我慢できずに反論した。

「冗談よ冗談! もう、こういう話になるとすぐムキになっちゃうんだから、男子って」

 焦りのあまりに手を振ってごまかそうとする美穂は、苦笑を浮かべている。だったら最初からそう言うなよ。


「はいはい、痴話喧嘩はそれぐらいにしときなさい。そろそろ次行くわよ、次」

 その時、俺たちの会話を中止しようと、十守先輩は手を叩きながら話に割り込んできた。って、今の痴話喧嘩に見えるのか!?


 ……そうツッコミたいのは山々だけど、相手は十守先輩だし、下手したら何されるかは分からないからな。ここは一旦大人しく黙っておくか。

 そんなことより、十守先輩が言ってる「次」の意味を確かめないとな。


「なんですか、『次』って? もうみんなは模擬戦を済ましてきたじゃないですか」

 俺はそう尋ねたが、早くも十守先輩にこう返された。

「まだ君の分が残ってるわよ、秀和くん?」

「あっ、確かにそうですね。でも俺は、もう資質(カリスマ)が覚醒したんですよ? わざわざ模擬戦をやる必要が……」

 当たり前のようにこう返事した俺だったが、何故か十守先輩は急に舌打ちをした。何かまずいことでも言ったのか、俺?

「あんたね……それで満足してるつもり? もう少し資質(カリスマ)を強化しようと、そう思わないの?」

「はっ……!!」

 十守先輩の叱責(しっせき)が、俺の潜在意識を刺激する。しかし先輩の話はそれだけで終わりじゃなかった。


「あんたの資質(カリスマ)はまだ見てないから何ともいえないけど、あたしたちの敵は普通の人間じゃないのよ! 何の罪もない生徒たちを、平然と危険に晒しているようなサイコパスなのよ! こうしてる間にも、やつらは自分の能力を鍛えてるはずよ! それなのにあんたは、『自分は資質(カリスマ)を習得したから大丈夫です』とか、よくこんな気楽なことが言えたわね!」

 いきりたつ十守先輩は、いつになく激しい言葉を俺に浴びせてくる。こんな彼女は初めて見た。

「十守……」

 さすがに静琉先輩も驚いたか、いつもおっとりしている彼女はただ十守先輩の名前を呼ぶことしかできなかった。


 俺は別に、そういうつもりで答えたわけじゃないけどな……でもまあ、元々こんなイカレた環境だし、長くここにいるせいでストレスがたまっているのかもしれないな。ここは熱くなって反論するより、先輩の気持ちを考えてやったほうがよさそうだな。


「……もう一度聞くわ。やるの、やらないの?」

 十守先輩は普段の軽い態度を改め、真剣な目付きとなって俺を見つめる。

 

 ったく、こんなの答えるまでもねえだろう。


 さっきの恋蛇団(ウロボロス)の連中との戦いを思い出せば、あの腹立つ気持ちがこみ上げてきやがるぜ。

 もし俺はこのまま満足して何の努力もしなけりゃ、またあの時の失敗を繰り返しちまうだけじゃねえか! あいつらを見返してやるためにも、このチャンスを手放すわけにはいかねえ!


「ああ、やってやるぜ! 俺をコケにしたやつらを後悔させてやる! そして俺の大切な仲間たちをあいつらから守るためにもな!」

 熱い思いを胸に、俺はそう叫んだ。目の前に立っているのが自分の先輩であることを忘れて。


「ふん、そうこうなくちゃ面白くないわね! やはりあたしの目には狂いがなかったようね!」

 理想の答えを聞いて気をよくしたのか、十守先輩は険しい表情をいつもの笑顔に戻し、格好を付けるように髪を掻き上げた。

 だが俺の情熱はこれで尽きることはない。もっと大事な情報を知ろうと、俺は先輩に質問した。

「んで、俺の対戦相手は誰ですか? もしかして先輩だったりして……」


 もし相手は先輩だとしたら、きっと熾烈(しれつ)な戦いが望めるだろう。だが事実は違った。

「あんたがあたしと戦う? はははっ、後輩のくせに生意気よ! あんたがあたしと戦うなんて、百億万光年早いわよ!」

 豪快に笑う十守先輩は、何の前触れもなく俺の背中を強く叩きやがった。いってえな、おい。


「十守、光年は長さの単位なのよ」

 そして静琉先輩もいつもの調子に戻り、十守先輩をからかい始めた。

「わ、分かってるわよ! 今のはわざとボケて場を和ませただけ!」

 いや、どう考えてもガチで間違えただろう、今のは。その大きな声と赤い顔が物語ってるぜ。

「ふふふっ、相変わらず十守は分かりやすいわね」

「う、うるさい! ゴホン、そんなことよりさっさと本番に入るわよ」

 咳払いをして話をはぐらかした十守先輩は、再びマイク付きのヘッドホンを装着して誰かと通信を始めたようだ。


「あんたたち、今すぐ隠れ家(セーフハウス)の練習ブースに来なさい。模擬戦の練習相手だから、久しぶりに暴れられるわよ」

 本人が戦うわけでもないのに、何故か凄く上機嫌な十守先輩。連絡を終えてヘッドホンを外すと、先輩は再び俺の元にやってきて、左手を俺の肩に置くとそう言った。


「あたしを満足させる戦い、期待してるわよ。あんたならきっとできると信じてるから」

 やれやれ、そこまで見込まれてるのか、俺は。それならちゃんと応えてやらねえとな。

「心配無用ですよ。俺も今、ワクワクが止まらないですから」

「ふふっ、そう答えてくれると思ってたわ」

 ご満悦の十守先輩の声が、さっきより一段と明るくなった。


 そして早速隠れ家(セーフハウス)の扉が開いた音が響き、人影が動いてこっちに近付いてくる。

秀和「ふぅ~、ご馳走様。それにしても、まさかあのいつも軽そうな十守先輩があんなに怒るとは思わなかったぜ」

静琉「まあ、こう見えても十守は、やる時はやるのよ。ただ普段はストレスで疲れるからふざけてるだけよ」

十守「その通り! あんたもよく分かってるじゃない、静琉」

静琉「あらあら、私たちは友達なのよ? 当たり前のことじゃない」

十守「友達ね……あんたにとっての友達は、からかうための存在かしらね」

静琉「あら、そんなことを言うなんて心外ね。これも親しみを表す方法の一つよ」

十守「もう少しマシな方法はないのかしら……」

静琉「いっぱいあるわよ。たとえば、ムチを振って……よいしょっと」

十守「ストップストッーープ!! どうしてそうなるのよ!?」

静琉「あら、『愛のムチ』って言葉を知らないの? 十守が愛を感じたいから、わざわざ出してあげたのに」

十守「あんたは一体なにを考えてるのよ……静琉、恐ろしい子!」

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