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反逆正義(リベリオン・ジャスティス)Phase One——Ten days in heaven(or in hell)  作者: 九十九 零
第2章 ヘブンインヘル転学編・波紋を呼ぶ奇跡
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リボルト#09 十人十色、適材適所 Part1 才能の開花期

アバン


宵夜「くっくっくっ……ついに長く我が体に眠りし禁断なる術を、この世に降臨する(とき)が来たようじゃな……!」

愛名「ふふっ、宵夜ちゃん、張り切ってるね」

宵夜「左様……我が術は禁断なる故に、使用することは禁じられていたが、今こそこの自由を束縛する(おきて)の鎖を砕き、新たな力がもたらす人生をこの身に刻もうではないか……!!」

愛名「そうだね、もういい加減身勝手な大人たちに下されたルールに従うのは飽きてきたよー。私たちは、私たちらしく生きてかないとね!」

宵夜「くっくっく……さすがは我が生涯(しょうがい)の友よ、よく分かっているのではないか!」

愛名「そりゃ、宵夜ちゃんとは『生死の(ちぎ)り』を結んだ大切な友達だからね」


千恵子(あのお二方の会話、まったく理解できません……新しい言葉か何かでしょうか……??)

リボルト#09 十人十色、適材適所

There are many kinds of man,and a man has his right place to work


「よーし、みんなちゃんと入ったかしら? 聞こえてる人は手を挙げてちょうだい」

 訓練用ブースに入っているみんなが映っているモニターを眺めながら、台座付きのマイクを手にしている十守先輩は大声で質問した。するとみんなは一斉に挙手して合図を送った。


 ちなみに俺は既に資質(カリスマ)覚醒済みなので、十守先輩の指示で真実の標(トゥルース・ルーペ)のみんなと一緒にモニターで中の様子を見ることになった。


「それじゃ碧ちゃん、訓練用ダミーの生成をお願いね」

「はい、了解です」

 碧は熟練な手付きで、宙に浮いているキーボードを打ち始めた。するとそれぞれのブースに、マネキンのようなものが現れる。青色に光っているそれが、生命力の感じない棒立ちをしている。


「君たちの戦い方を知りたいから、まずはこのダミーで自由に戦ってね」

「いきなり戦えって言われても、どうすればいいんすか? 相手はまったく動かない雑魚だし」

 十守先輩の自由度の高い課題に、どうすればいいか戸惑う聡。ゲームで数え切れない敵を始末してきた彼でも、いざ本番(リアル)となると、さすがに無理はあるか。


 そして、突然刃物のような音がした。モニターを一瞥(いちべつ)すると、一つだけ異様に明るいやつがあった。そこに映っているのは、大鎌を振り下ろしてダミーを真っ二つに切り裂く広多だった。

「ふん、簡単極まりないことだ。そいつを憎い(やから)にイメージして、容赦なく止めを刺せばいい。それぐらいもできないとは、お前はまだまだ甘いな、初心者(ルーキー)風情が」

 相変わらず上から目線で聡を小馬鹿にしている広多は、その声には何故か少し情熱がこもっているようだ。


 もちろんそんなことを聡は気付くはずもなく、まんまとその挑発に乗せられて熱くなった。

「んだとー! おまえはいっつも、そうやって人をバカにしやがって……!! もうアタマキタぜぇぇー!!!」

 怒りに満ちた聡は、素早くスマホを出して、緑色の丸いカッターを作り出すとそれをダミーを目掛けて飛ばした。カッターが見事にダミーの頭部に命中し、青い粒子が大量に漏れて、タンポポのようにゆっくりと浮き始める。


「よっしゃー、やったぜー! へっ、今の見たか、このセレブ野郎!」

「ふん、やれば出来るじゃないか」

 はしゃぐ聡の大きな声を聞いて、広多はただ淡々と励ました。どうやらあいつも心から聡のことを思ってるんだよな。


「おい、もう少し悔しそうにしてろよ! こんなんじゃ達成感がねーじゃねーか!」

「それぐらいではまだ足りんぞ。本気で俺を悔やませるつもりなら、もう少し本気を出してみたらどうなんだ」

「くっそー、なんて生意気なヤツだー! 見てろ、もっとすげー技を出してみせてやる!」

「ふん、そうでなくては面白くあるまい。まあ、期待はしていないがな」

「言ったなぁ!? ぜってー後悔させてやる!」

 聡のやつ、完全に広多の策にハマったな。まあ、二人がああやって成長に繋がることができたら、それはそれでいいんだけどさ。


 さて、他のみんなはどうしてるかな……あれ?


 適当にモニターを見やると、何故か哲也は盾を構えたままで、まったく動いていないぞ!

「おーい、何してるんだ哲也? もう敵は目の前にいるぞ?」

 俺は哲也が上の空なんじゃないかと心配しつつ、大きな声で叫んで彼を注意した。


「ああ、確かにそうだけど、僕の役目はあくまで敵の攻撃を防ぐことだからね。下手に動いてると体力が持たないだろう?」

 なるほど、相手が動くまで待機するタイプか。確かに哲也のような守備重視の作戦だとそれが一番だけど、身を守るばかりじゃ相手を倒せないのはネックだな。どうしようかな……


「先輩、そのダミーを動かすことはできないんですか?」

「もちろんできるわよ。その哲也くんという、盾を持っている少年のやつでいいかしら?」

「はい、お願いします」

「よし、分かったわ。碧ちゃん、お願いね」

「了解です」

 碧がまたしてもキーボードを弄ると、哲也のブースにあるダミーが動き出した。タタタと足を往復に動かして、哲也に向かって突進していく。


「おっ、やっと本格的になってきたね……それじゃ、僕も少し本気を出してみるか」

 そう言いつつ、哲也は少し盾の位置を調整する。そしてダミーが哲也に接近した瞬間に、哲也は盾を装着している腕を勢いよく横に振るった。するとダミーはバランスを失い、そのまま前に倒れ込む。


 絶好のチャンスを手にした哲也は、ダミーが立ち上がる前に盾を高く振り上げ、その頭を狙って叩きつけた。普段おとなしそうな彼とは思えない、とてもワイルドな作戦だ。

「まあ、こんなところかな」

 力尽きたダミーの残骸を見下ろしている哲也は、爽やかな顔でメガネを押し上げながらそう言った。先ほどダミーにトドメを刺した時の険しい顔がまるで嘘かのようだ。


「おー、グッジョブだぜ、哲也。よくそんな技を考えたな」

「まあね。一応君の影響を受けたおかげでもあるけど」

「おいおい、マジかよ」

 哲也のその話を聞いて、俺は思わず鳥肌が立つ。昔の黒歴史が蘇りそうだぜ。


 さて、哲也は置いといて、菜摘はどうなんだ……うん!?

 何故か菜摘は地面に座り込んで、頭を上げている。そして彼女はこう言い放った。


「こんなの地味すぎてつまんないよ~! もっとこう、ドカーンと、ババーンと派手にやりたいよ!」

 俺は彼女のいるブースの様子を確認すると、片手にボウガンを握っている彼女の傍らには、頭に矢が刺さっているダミーだった。あんまりにも味気ない戦いに、菜摘は退屈しているようだ。


「おいおい、これはこれからの戦いに備えるための練習で、遊びじゃないんだぜ?」

「だって~、宵夜ちゃんと愛名ちゃんは凄く楽しそうなんだからー!」

 俺の注意をスルーして、菜摘はダダを捏ねた。やれやれだぜ。


 楽しそう? 一体何のことだ……あっ。


「ふっふっふ……我が聖域(サンクチュアリ)に侵入した不埒(ふらち)者どもが、我の赤き薔薇(ばら)に浄化されるがいいわ! さあ、とくとご覧あれ! 銀朱の花園ヴァーミリオン・ガーデン!」


 宵夜は両手を上げて意味不明な言葉を呟くと、なんと彼女の周りに無数の薔薇の花びらが出現し、ダーツのようにダミーに向かって飛んでいき、その体を貫いた。そして毒に侵されたのか、青かったダミーが少しずつ紫色へと変わり、徐々に弱まっていく。


「えっ、もしかしてこれって……」

「巨大な精神粒子サイキック・パーティクル反応を感知……間違いないであります、これは資質(カリスマ)であります!」

「うえええ!? もう覚醒済みかよ!?」

 とんでもない情報を耳にした俺は、思わず奇声を上げた。


「ほほーう、これはなかなかの逸材(いつざい)じゃない……どうやらあの()は、相当強い『思い』の持ち主みたいだわ」

 自分の奇妙な能力に無我夢中の宵夜を見て、十守先輩は手をあごに当てながらじっくりと観察している。その顔に浮かぶ笑みは、まるで何やら大きな発見を遂げた科学者みたいだ。


 んで、愛名のほうはどうなんだ?

 モニターをのぞき込むと、そこにはダミーを余所に何やら絵を描き始めている愛名の姿が映っている。一体何のつもりだ?


「よーし、できた! さあ、出ておいで、ペガサス号!」

 絵描きを終えた愛名は、スケッチブックを地面に置いた。すると何もなかったはずの空間から、なんと戦車らしき乗り物が浮かび上がった!


「おおー、本当に出てきたー! 一度やってみたっかったんだ、これ! 長年の願いが、やっと叶ったよー!」

 夢を成し遂げた愛名は、子供のように欣喜雀躍(きんきじゃくやく)している。まあ、普通ならこんなことが起きるはずもないし、無理もないか。


「それじゃ、早速しゅっぱーつ!」

 そして愛名は戦車に操縦し、容赦なくダミーを()いてやった。さっきの無邪気な笑顔は一体なんだったのか。


「また強大な精神粒子サイキック・パーティクル反応が……やはりこの先輩方は、ただものではありませんね」

 今までずっと眠そうな顔をしていた碧も、この不思議な現象を見てさすがに驚きを隠せないようだ。


「あらあら、私たちはこの資質(カリスマ)を身に付けるのに、あれほど苦労をしてたのに……本当に最近の若い子は、凄い力を持ってるわね」

 資質(カリスマ)を上手に操る二人を見守る静琉先輩は、片手を頬に当てながら、いつもの大人びた笑顔を浮かべている。


「ええ~二人ともずるいよ~! 私も早くあんな凄い資質(カリスマ)を使えるようになりたーい!」

 なかなか思う通りにいかず、菜摘は苛立ちが募る一方だ。自分の不満を示すために、菜摘は両手をブンブンと上下に動かしている。その仕草は子供っぽかったが、とてつもなく可愛らしいので思わず見入ってしまう。


「『為せば成る』のだ、菜摘! 強い願いを込めればきっと夢が叶えるはず!」

「そうだよ、なつみん! なつみんはモデルになるのが夢でしょう? だったら、そのための努力と情熱も忘れないで!」

「夢……モデル……はっ、そっか!」

 宵夜と愛名に励まされて、突然何かを思い出した菜摘。その言葉の力を借りて、ずっと座り込んでいた彼女はやっと立ち上がって、ポーズを取り始めた。

 菜摘は一体、どんな奇跡を起こしてくれるのだろうか。密かに結果を期待している俺は、モニターの画面をじっと見つめる。

 

 突然一筋のまばゆい光が、俺たちの視界を奪う。それが収まった時に、俺は目をゆっくりと開いて状況を確認する。

 そこで俺が目撃した光景に、目を見開かずにいられなかった。

美穂「うわっ!? 菜摘どうしたの!? って、あなたは雑誌に出てるモデルさんじゃないですか!? どうしてここに……」

モデル「落ち着いてよ美穂ちゃん! 私だよ、菜摘だよ~」

美穂「えっ、菜摘なの? もしかしてアンタ……変身した!?」

菜摘「そうみたいだよ~。ふふっ、モデルとしては嬉しい能力だね、これ! どう、凄いでしょう?」

美穂「確かに凄いわね……スタイルも完璧に再現してるし……これで好きなだけ色んな菜摘を可愛がってあげられるわぁー!!!」(モミモミ)

菜摘「きゃあっ!? もう美穂ちゃんって、すぐこれなんだから~」

美穂「これからは一日一回、アタシのリクエストで変身してくれない?」

菜摘「さ、さすがにそれは無理だよ美穂ちゃんー!」

美穂「え~ケチ! どうせ秀和くんに頼まれたらすぐやってくれるくせに~」

菜摘「もう、変なこと言わないのー!」

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