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反逆正義(リベリオン・ジャスティス)Phase One——Ten days in heaven(or in hell)  作者: 九十九 零
第2章 ヘブンインヘル転学編・波紋を呼ぶ奇跡
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リボルト#07 闇を切り裂く稲妻 Part14 10年前の記憶

 その後、二次会まで開かれ、気が付いたらもう深夜になった。何も考えずに、ただ楽しむことに夢中になることは、正に今の高校生だよな。しかしここでは、もはや一種の贅沢(ぜいたく)となってしまう。数時間前に俺たちは別の場所で生死(せいし)に関わる戦いをしていたと言ったら、一体何人が信じるだろうか。

 だが、相変わらずルールに厳しい千恵子は、夜更かしして日常生活に支障をきたすことを心配しているのか、寮に帰るようみんなを促した。戦った後の疲れも出て、みんなは欠伸(あくび)をしている。というわけで、俺たちはカラオケボックスから出て、就寝(しゅうしん)するために寮に戻る。

 部屋に戻った俺は、もう一度シャワーを浴びて寝間着(ねまき)に着替えた。そして疲れ切った体を癒そうと、ベッドに体を投げ出して寝転がる。

 両腕を頭の下に交差させると、暗闇の空間の中で俺は目を閉じる。やがて今日中の出来事が映像のように、一つずつ浮かんでいく。たった一日だけで、記念すべき瞬間がこんなにたくさんあるとはな。

 ……ダメだ、どうしても眠れない。新鮮な空気でも吸いにいくか。ついでに自販機で何か買って飲むとするか。

 ベッドから降りてスリッパを履くと、俺は廊下に出て自販機のほうへ歩く。するとそよ風と共に、窓側から誰かの鼻歌が聞こえる。

 俺はそれに惹かれて声の持ち主を確認したら、寮の裏側には千恵子が階段に座っている。新歓パーティの時と違って、彼女はとても上機嫌そうな笑顔を浮かべている。

 そして、距離が遠いためよく見えなかったが、左手が何かを撫でているようだ。一体何だろう?

 それを知るために、俺は飲み物を買うことを忘れて、体が勝手に下への段階へと向かう。

 夜は昼に比べて静かだからか、俺の足音はいつもより大きく聞こえる。それが千恵子の耳に伝わったのか、彼女は早くも俺の気配に気付いて振り向いてきた。

「あら、秀和君じゃない。どうかしたの?」

 二人っきりのこの場所で、千恵子はいつもより積極的かつ大胆になる。丁寧語ではなくタメ口を利いているのは、俺への信頼の表れということか。それはそれで嬉しいけど、どうも慣れないんだよな、これが。

「いや、眠れないから、ちょっと新鮮な空気を吸おうと思ったら、千恵子の歌声が聞こえてさ。千恵子も眠れないのか?」

「ええ、そうよ。だって、今日はたくさんの思い出が出来たもの」

 千恵子は両手を合わせながら、満天の星空を見上げて眺めている。そういえば、彼女は前からずっと寂しい思いをしていたんだっけ。大勢で一緒にピザを食べたり、カラオケを歌ったりするという楽しい初体験を遂げたことだし、さぞ嬉しいだろうな。

「それはよかったな。千恵子も、初対面の時と見違える程に明るくなったしさ」

「えっ、そうなの?」

「ああ。だって最初に出会った時は、ずっと溜め息ばっかついてたからな。まあ、今ならその理由は分からなくもないけどな」

「まあ、これはお恥ずかしいところを……でも今の私は、あの頃とはひと味違うから」

「そうだな。これからも君の成長が、楽しみだな」

「うふふ、これからもよろしく頼むわね、秀和君」

 息の合った会話が進んでいく中で、俺と千恵子は思わず笑い声を漏らす。そして、聞き忘れたことを思い出した俺は、ついに千恵子にあのことについて質問する。

「そういえば、さっき千恵子が何かを撫でてるのが見えたけど……」

「あら、気になるの?」

「まあ、気になるんだけど……言いづらいなら別に無理はしなくてもいいぜ」

「ううん、大丈夫よ。秀和君、今日無人島で武器を準備をした時のこと、覚えてる?」

 突然予想外の話題を持ち出す千恵子。その真摯な眼差しには、何か裏がありそうだ。

「ああ、もちろん覚えてるぜ。確かあの時千恵子は少し驚いたっけ。そこも少し気になるな」

「ええ、何故か分かる?」

「うーん……わりぃ、よく分からない」

「いいのよ。今からその理由を教えてあげるわ」

 そう言いつつ、千恵子は右側の袖をめくって、その下に隠れているものを露わにする。その右腕には、何故か俺と哲也、そして菜摘が付けていた友情の証であるリストバンドと同じものがある。こいつは実に興味深いぜ。

「どうしたんだ、それ?」

 あまりの偶然に様々な思惑が俺の脳裏によぎるが、やはり本人から直接聞き出すほうが一番手っ取り早いな。

「話せば長くなるわ。実は私、10年前に誘拐されたことがあるの」

 とんでもない話が、千恵子の口から淡々と飛び出る。いきなり何の話だ!?

「見知らない男にいきなり持ち上げられて、トランクに閉じこめられたわ。あの時は物凄く怖くて、このままどこかに売り飛ばされるんじゃないかって思っていたわ」

 仰天している俺をお構いなしに、千恵子は自分の恐ろしい経験を語り続けている。

「でも、途中で車が止まって、その隙にある男の子に助けられたの。車輪の付いた板の上に乗って、とてもスリリングだったわ。それで、男の子と分かれた時に、このリストバンドをもらったの」

 千恵子の簡潔(かんけつ)な説明のおかげで、それを聞いた俺も何となく事情が飲み込めてきた。

「それで、その男の子は俺って言いたいわけか?」

 そう言った俺は、無意識に10年前の記憶をたどってみる。そのらしきシーンがぼんやりと浮かんできているが、何せ10年前のことだし、さすがに完全に思い出すことは難しいな。でも確か、長い黒髪でおっとりしていて、正に今の千恵子みたいな……

「どうかしらね……確かにあの男の子は貴方に似ているようなやんちゃな子だったけれど、生憎(あいにく)肝心な顔が思い出せないわ」

「なんじゃそりゃ。そこまで覚えてるなら、顔も覚えてるはずなんだけどな……」

「そうね……記憶って、本当に不思議なことね。でも、こうして出会えるのも、何かの縁かしら。貴方に出会ってから、こうして私も変わり始めたことだし。もしかしたら、このリストバンドが10年間に渡って、私たちを繋いでくれたかもしれないわね。まるで赤い糸みたい」

「ははっ、ロマンチックだな。それにしても、とてつもない奇跡だな、こいつは」

「ふふっ、確かにその通りね」

 俺たちは静かに空を見上げて、その美しさにうっとりする。なんてキレイな夜空だ。

「ねえ、秀和君」

「どうした、千恵子」

 千恵子の甘いボイスに聞き惚れて、俺も優しく彼女の呼び掛けに返答する。

「絶対に、絶対に、生き残って帰りましょうね」

 千恵子の視線に勘付いて、俺も彼女の顔を見つめる。優美(ゆうび)な瞳から放つ彼女の眼差しは、その美しさと裏腹でとてもしっかりしている。それは普通の少女では感じられない、決意の強さだ。

 そんな彼女に感化された俺は、引けを取らない程度に強い意志を込めて返事した。

「ああ、そうだな。みんなでこんなバカげたところから抜け出して、自由を取り戻そうぜ!」

 向き合う俺たちは、お互いを信じて明日への希望をこの胸に抱く。

 だが、すぐさま新たな(あらし)が、無情にも俺たちを襲いかかる……

次回予告


秀和「ふう、やっと第7話も一段落ついたか。長かったぜ」

哲也「そうだな。ここまでやってこれた作者さんの根気も大したものだね」

???「ククク……根気だってよ! そんなくだらねぇことより、まずはこの俺様と戦えよ!」

秀和「だ、誰だ!?」

???「ああん? この俺様も知らねぇってんのかよ!? まったく、俺様もなめられたもんだな! いいか、よーく聞け! 俺様は『ピー』……」

聡「あいよ、ネタバレ禁止」

???「おい、せっかく俺様の出番なのに、なんだその扱いの悪さは! ぶっ殺してやる!」

直己「ぎゃっー! サイコパスだこいつー!」

広多「ふんっ、血の気の多い奴ばかりだな。なんという嘆かわしいことだ」

???「なんだ、ビビッてんのか? このチキンが!」

広多「なんだと!? そのような無礼な口を叩くとは、いい度胸だな……必ず後悔させてやる!」

名雪「ちょっとあなたたち、いい加減にしなさーい!」

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