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反逆正義(リベリオン・ジャスティス)Phase One——Ten days in heaven(or in hell)  作者: 九十九 零
第2章 ヘブンインヘル転学編・波紋を呼ぶ奇跡
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リボルト#07 闇を切り裂く稲妻 Part13 打ち上げ会

「みんな~、お待たせ! 出来立てのアツアツモッツァレラチーズピザ、出来上がりだよ!」

「たくさん用意してありますので、どうぞご遠慮なく食べてくださいね~」

 この二人は、ショッピングモールの店員を務めているネネとムムだ。細長いポニーテールを後ろに束ね、青色調(しきちょう)のファーストフードの制服を着ている元気な子はネネで、ストレートロングの上に二本の触角が生えたような髪型をしていて、ピンク色調のメイド服を身に包み、ゆったりした口調で喋る子はムムだ。

 とてもシンプルで覚えやすい名前だが、どう聞いても日本人の名前じゃないようだ。最初は外国人なんじゃないかと疑問を抱えていたのだが、その流暢(りゅうちょう)なしゃべり方からすれば、そうでもないらしい。まあ、少なくとも俺たちの敵じゃないってことは確かのようだ。

「よう、二人ともお疲れさん。朝からずっと頑張ってたんだろう? わりぃな、手間かけさせちまって」

 二人にピザ作りを頼んだのは、今朝ここで朝ご飯を食べた時だった。深い意義を持っているこの初戦を、盛大に飾るために。もちろん、勝つことを前提として。

「いいっていいって! どうせ毎日やることないし、何か頼まれたほうが精が出るしね!」

「そうですよ! やっぱりこういうの、やりがいがあるって感じです~ちょっと疲れましたけど、とっても楽しかったですよ~」

 俺のお詫びに対して、二人は気にせず笑って返す。働くことを心から楽しんでいるようだ。

「それにしても、よく生きて帰ってきたねー。もし帰ってこなかったら、このままピザが腐っちゃうのかって思っちゃったよ」

「おいおい、冗談キツいぜ」

 思わず苦笑を零す俺。心配してくれるのは嬉しいけど、ピザと比べられると何故かギャグに聞こえてしまう。

「うふふ、それでは後で武勇伝を聞かせてくださいね。ささ、パーティ会場はこちらです」

 無邪気な笑顔を浮かべているムムは、トレーを抱えながら俺たちを案内してくれる。

 距離はそれほど遠くないため、あっという間に俺たちはパーティ会場であるフードコートに到着した。俺たち以外誰もいないので、ただでさえ広いフードコートは更に広く見える。正に貸し切り状態だ。

 たくさん並んでいる机の上に、ピザが乗っている皿や大きなサイズのドリンクのペットボトルがある。そして天井には、カラフルの紙で作られた「脱兎組初戦勝利記念」の文字が入った飾りが、灯りに照らされて輝いている。しかし何より、この空間で漂うチーズの芳しい香りは、俺たちの胃袋を震わせる。

「わあ、いいにおい~もうお腹ペコペコだよ~」

 甘美な芳香に酔った菜摘は、両手で腹を押さえながら、ふらついた足取りでピザへと近付こうとする。

 しかし食事といえば千恵子。彼女はこの小さな隙も見逃さず、ガシッと菜摘の頭を掴んでその動きを止めた。

「つまみ食いは駄目ですよ、菜摘さん。あと手を洗っておいてください。もしばい菌がお腹に入ったら、後で大変なことになりますよ」

「は、はーい……もう、千恵子ちゃんにはかなわないなぁ」

 いつも通りに振る舞う二人は、何故か新歓パーティの時と違って、今回はまるで姉妹のように見える。どうやら近付いた二人の友情が、俺が彼女たちへの見方を変えさせてくれたようだ。

「そんじゃ、みんな適当に座って、飲み物を注いで乾杯の用意でもしようぜ」 

 俺の声に応じて、仲間たちは次々と動き出した。彼らは机の周りに並んでいる椅子に座って、好きな飲み物のペットボトルを手に取るとふたを外し、紙コップに注いだ。俺もジンジャーエールを紙コップに注ぐと、立ったままで発言を始めた。

「みんな、今日はお疲れ! とても初戦とは思えない活躍だったぜ。見ての通り、今回俺たち脱兎組は、全員無事に生き残れた。まだ完璧とは言えないけど、チームワークをちゃんと活かせたおかげで、ここまでやってこれたんだ。まずはみんなに、礼を言っておかないとな」

「はい皆さん、盛大な拍手を!」

 場の雰囲気を盛り上げるのに定評のある冴香は、しれっと一言を口に出した。そしてそれがきっかけとなって、静かなフードコートは一気に賑やかな拍手音に包まれる。

「いやいや、謙遜しすぎだよ秀和くん! 秀和くんが上手に指揮してくれたから、うまくいったんだよ!」

「そうだね。あんな一連の緊急事態で、状況を分析して作戦を冷静に練るのは、なかなか難しいことだと思うぞ」

「そうか? いつも通りにやってると思うんだけどなぁ……」

 ベタ褒めしてくれる二人の親友の優しい言葉に、俺は戸惑った。そんなに大したことじゃないのにな……

「ここは素直に喜んでも良いのでは、秀和君? リーダーらしく胸を張っていいんですよ」

 千恵子は両手を合わせ、笑顔を浮かべながらこっちに見ている。まさか彼女に励まされるとは、思いもしなかったぜ。

 千恵子が俺への呼び方が変わったことに驚いたのか、他のみんなは目を見開いて顔を見合わせている。だが、せっかくのいい雰囲気を台無しにするのは野暮だと思っているのだろうか、みんなはただ黙って何も言わなかった。

 さすがにこのままじゃまずいから、俺はみんなのテンションが下がらないよう話を続けた。

「まあ、そこまで言われたら、俺もその気持ちを素直に受け取るか。確かに俺の指揮や作戦も凄いけど、俺一人じゃ絶対に生き残れないことも事実だ。さっきあの先生にやられそうになった時は、もうダメかと思ってたぜ」

「そうそう、あの時のイナズマはすごかったな! ヒューって空を飛んで、あのクソ先生のうるさい残像を一つ残らずに消していって、最後はグサッと心臓を貫いてやったぜ! いやー、かっこよかったなぁ~」

 未だに俺が出した稲妻の凄まじい迫力で余韻を味わっている聡は、誇張した身振りであの時のシーンを再現しようとする。

「そうだったんですか!? さすが脱兎組(ランニング・ラビット)のリーダーさん、凄いですね!」

「へー、急に稲妻を出せるようになったんだ~。こりゃ正しく奇跡だね」

 戦いに参加しなかったムムとネネの二人も、聡の分かりやすく親切な解説を聞いて思わず驚く。

「まったくだぜ。あの時俺は、ふと広多の言葉を思い出したんだ。『勇気と無謀の違いも知らないのか』って……今考えて見れば、確かにお前の言う通りだな、広多」

 悔しいけど、広多の言葉は正しかった。気合いさえ入れれば、きっと何とかなるという甘い考えを持っていた自分はいかに愚かなのか、よく理解できた。今回は運よく奇跡に救われたんだけど、次もこんなことがあるとは限らないよな。

「ああ、お前は実に馬鹿だな」

 広多は相変わらずマフラーの下に隠れている口を動かし、腕を組んだままで俺にそう言った。そしてまるでリハーサルでもしておいたかのように、聡はガタッと立ち上がり、怒りのこもった目付きで広多を睨みつけている。

「おい、何を言い出すかと思えば、またそんないい加減なことを……少しはリーダーに敬意を払えよ!」

 おいおい、またこの展開かよ。せっかくの打ち上げ会だぜ、台無しにするなよ!

 しかし、御曹司と呼ばれている広多は、それなりに経験を積んできたはず。決して軽い意味でその言葉を放ったとは思えない。

「そう興奮するな。サイダーでも飲んで頭を冷やしたらどうだ? 俺の話はまだ終わっていないぞ」

「わ、わりぃ……」

 俺の予想通りに、広多はまだ言い残してることがあるみたいだな。状況を飲み込めた聡は、いつもの刺々しい態度も収まり、大人しく座った。

「狛幸、確かにお前は馬鹿だが、いい意味での馬鹿と言っている。もしお前が皆と一緒に教師達に抗議を持ちかけなければ、状況もここまで大きく動かないだろう。お前が出した稲妻はさておき、現に敵の忌々しいコマが一つ敗れた。つまり、勝機が俺達の方に回ってきているということだ。ずっと希望を拒み続けてきた俺には、やっと光明(こうみょう)が見えてきた」

「広多……」

 いつもキツいことを口にしている広多とは思えない、暖かい言葉が俺の耳に入る。そのためか、俺の心がいつになく打たれる気がした。なるほど、これがギャップの威力が。

「正直、他人に礼を言うのは性に合わんが、今回ばかりは言っておいてやろう。ありがとう、狛幸秀和」

「ふん、気にすんなって。こっちこそ、俺たちに協力してくれてありがとうな、広多」

 感謝の言葉と共に、紙コップを持っている手を前に出す広多。俺はそんな彼の気持ちを応えるべく、紙コップを手に持って乾杯をした。

「おいおい、マジかよ……あの広多が『ありがとう』って言ったぞ! そんじゃ、オレもちゃんと祝わねえとな! カンパイ!」

 勢いに乗って、聡は俺たちの間に割り込んで乾杯してきた。そして他のみんなも、一斉に紙コップを寄せてきて、フードコートをパーティムードにした。

「それじゃ、改めて初戦の勝利を飾るために、盛大に乾杯しようぜ!」

「「「「「「「「「かんぱーい!!!!!」」」」」」」」」

 大きな歓声をあげ、脳裏に最高の記憶を刻む。これほど楽しい学園生活はないだろう。

「あっ、美穂ちゃんずるい! あんな大きなピースを独り占めしようとするなんて!」

「ふふん、先に取ったもの勝ちよ。どんな超能力を使っても、この万年不変の真理を変えられないんだから」

「もう、まだたくさんありますから、そんなに取り合わなくてもいいんじゃないですか。もし床に落ちてしまったら、作ってくれた二人にも申し訳ないでしょう?」

 ……普段ならうるさい騒ぎ声も、いつの間にこんなに愛おしく聞こえる。本当に、これほど嬉しいことはねえな。

 この大切な瞬間を何度も見直せるよう、俺はポケットからスマホを取り出して、こっそりと写真を撮った。カメラ目線を意識せず、自然な笑顔のままで。

聡「まさかあの広多があんなことを言うとはね……ドッキリか何かじゃねーよな?」

広多「まだ疑っているのか。その様子だと、『(しゅ)(まじ)われば赤くなる』という(ことわざ)も知らないようだな」

聡「しゅにまじわれば、あ、あかく……ああったく、意味わかんねーよ!」

広多「やはりな。幼稚園から勉強し直したらどうだ?」

聡「オマエの標準とオレのを一緒にすんじゃねーよ! せっかく見直してやったってんのに、結局人間ってそう簡単に変わらないものか~」

広多「その言葉、そのままそっくり返してやろう」

聡「んだとぉ……!」(ゴゴゴゴゴ)

広多「何だ、やる気か?」(ゴゴゴゴゴ)

秀和「おい、早く食べないと冷めちまうぞ」

広多「仕方ない、ここは一時休戦だ」

聡「ああ、賛成だな」

秀和「切り替え早えな、お前ら」

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