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反逆正義(リベリオン・ジャスティス)Phase One——Ten days in heaven(or in hell)  作者: 九十九 零
第2章 ヘブンインヘル転学編・波紋を呼ぶ奇跡
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リボルト#07 闇を切り裂く稲妻 Part6 片腕のゴーレム

※このパートに残虐描写が含まれております。ご注意ください。

 だが、現実はそう甘くはない。しばらく前に進むと、俺たちはまたしても衝撃的な光景をこの目に焼き付けてしまった。

 今度は、片腕を失っている生徒たちが、うなり声を上げながら転がっている。さっきの死の静寂と打って変わって、死ぬ寸前(すんぜん)の苦痛と絶望感がこの空に(むな)しく響いている。

 もちろんそれを見ている仲間たちは、黙るはずがなかった。


「ひ、ひどい……」

「何という阿鼻叫喚(あびきょうかん)だ……実に(むご)い仕打ちだ」

「ま、またあんな怖い化け物と戦わないといけないの……どうしよう」

 みんなは心配そうに狼狽(うろた)えているが、今は冷静に周りの状況を分析しねえとな。

 敵の姿はない。ということは、やつらはまだこっちに気付いていないかもしれねえ。それじゃ、さっきと同じく、まずは様子見だな。


「まだ俺たちの姿はバレてねえ。ひとまず隠れて様子を見ようぜ」

「ああ、その方が賢明だな。ファイルで敵のデータを照合して、対応策を考えるのも一手だぞ、秀和」

 哲也は落ち着いて、俺に的確(てきかく)なアドバイスをしてくれた。俺は隠れた場所を確保すると、手に持っているファイルを適当にめくり始めた。

 約2、3分が経つと、突然ドンドンと大きくて重い足音が聞こえる。敵が接近していることを知っているものの、具体的な位置は把握できない。

 何か近くの様子が見れるアイテムがあれば……そうだ、「アレ」があるじゃないか。


「聡、『例のアレ』を持っているか?」

「『例のアレ』? ああ、『プライベート・サーチャー』のことか! もちろん持ってるぜ!」

「よし、この近くにいる敵を探し出してくれ」

「おう、任せろ!」

 ようやく自分が活躍(かつやく)できるチャンスが(おとず)れて喜んでいるのか、聡は「待ってました」と言わんばかりに、素早い動きでリュックを漁る。そしていつもの慣れた手付きで、プロペラ付きのビデオカメラを操作し始めた。


「ふん、まさかまたこの奇妙なガラクタを見れるとはな」

「ガラクタとは失礼な! これはオレが三ヶ月間もかけて作った大切な宝物だぞ!」

 あーあ、また始まったぜ。聡と広多、本当この二人は相性がいいんだな。まあ、こんなことを言ったら、きっと二人は必死に否定するだろうな。

「それにしても、敵はどこにいるんだ? しゃがんだままじゃ何も見えねーし、闇雲(やみくも)に探しても意味ねーよな」

「震動源は東北方向、およそ30メートルだ」

「すげー! 地面を触るだけで分かるのかよ!?」

「これぐらいは普通だろう。機械に頼りすぎて感覚が(なま)ったのではないか、機械マニア」

「ちょ、おま! じゃあおまえにはこの機械を作れるとでも言うのか!」

「ふん、暗元財閥(ざいばつ)の力を持ってすれば、これぐらいは造作もないことだ」

「ちぇ、結局自分で作ったわけじゃねーじゃん」

 聡と広多の言い争いは、だんだんエスカレートしていく。声もかなり大きくなって、いつ敵にバレてもおかしくないぐらいだ。俺はそんな光景を見かねて、二人を軽く注意した。

「お前ら、喧嘩はそれぐらいにして、さっさと敵を見つけてくれよ」

「ふん、仕方ない、一時休戦(いちじきゅうせん)だ。この勝負は預ける」

「ああ、賛成だ。後でケリをつけてやるぜ」

 あれ、意外と素直なんだな。てっきり反発されるかと思った。まあ、その方もリーダーである俺にとって助かるしな。


 気を取り直した聡はコントローラーを手にして、プライベート・サーチャーを広多の指示通りに動かす。早くも彼の腕に装着されているモニターに、敵らしき姿が映り出した。

 そこには、2メートルもある背の高い石巨人(ゴーレム)が、尻餅(しりもち)をついている一人の男子に迫る。しかしよく見ると、石巨人は片腕を失っている。あの男子がやったのか?


「ワガウデハドコニアル?」

 石巨人はぎこちなく口を動かし、震えている男子に質問した。エコーのかかったその声は、無駄に威厳(いげん)感を増している。

「そ、そんなの知らねえよ! どっかいけよ!」

 怖がる男子は、足が(すく)んで動けず、逃げることができない。ただ吐き捨てるように、石巨人の質問を乱暴に答えた。そうすればきっと石巨人はどこかに行ってくれると願っていただろうが、残念ながらブラック・オーダー(ばけもの)どもの作った化け物はそんな優しくなかった。

「ウム? ヨクミルト、キサマノウデハワレノトニテイルナ。イタダクトシヨウ」

 なんと石巨人は、とんでもねえことを口走った後に、残っている左腕をおもむろに動かせ、男子の右腕をもぎ取ろうとしていやがる。

「や、やめろ! そんなことされたら……はっ!」

 恐怖に襲われる男子は、言いたいことがまだ終わっていないうちに、彼の右腕は既に体から離れちまった。そしてあっという間に彼の肩から、赤い液体が噴水のように一気に飛び散った。

「うわあああああああああああああああああーー!!!」

 片腕を失った男子は、凄まじい悲鳴を上げた。拡大する瞳孔と大きく開いた口が、言葉にならない痛ましい光景を作り上げている。それを見ていた俺たちは、ただ黙って息を飲むしかなかった。

 だが、次の瞬間に起きた出来事が、更に俺たちの度肝を抜いた。


 石巨人は無表情のままで、血塗(ちまみ)れの男子の右腕を自分の右肩にはめようとしたが、サイズが明らかに違ったため、はまるはずがない。すると、石巨人はそう言い放った。

「コノウデモチガウ……ベツノヲサガソウ」

 ようやく自分の腕じゃないことに気付いた石頭の石巨人が、なんとその男子の腕をぞんざいに投げ捨てやがった!

 重傷を負いつつも何とか意識が保っている男子が石巨人の非常識な行動を見て、悲しみが一気に怒りへと変わって、彼は立ち上がって石巨人に向かって走り出した。

「ふざけんじゃねえよ! 人の腕を勝手に奪いやがったくせに、違うと思ったら勝手に捨てやがって! 人の命を、なんだと思ってんだよーーー!!!」

 怒りに満ちた男子は、この上ない正論を大声で叫んだ。しかしそんな正論が化け物である石巨人には通じることがなく、かえってやつの反発を買った。

 石巨人は男子の身長の高さもある拳を振るい、攻撃を繰り出した。生身の人間は到底防げるはずがなく、男子の体は衝撃を受けて、そのまま飛んでいっちまった。その後、静かな空気に僅かな水音が聞こえて、彼の人生の壮絶(そうぜつ)な最期を物語った。

 それに対して、石巨人は極めてワガママかつ無責任な言葉を口にしやがった。


「ウルサイ。ワレハタダジブンノウデヲトリモドシタイ、タダソレダケダ」

 何だと? 腕を取り戻したいからって、他人を傷付けていいってわけかよ! 超ムカつくぜ、こいつ!

 俺は力を入れて、あの石巨人の弱点を探すために素早くファイルをめくる。

 あった。こいつは「グリード」っていうのか。わざわざ片腕だけがなくなっている形で作られて、その失った片腕を取り戻すために手段を選ばない。弱点は背中にある(コア)のようなものだが、敵を見つけると決して背中を見せないらしい。

 ブラック・オーダーのやつめ、ずいぶんと凝った設定を考えたじゃねえか。失った片腕を探せばこいつは大人しくなるかもしれねえけど、あいつらのことだ、絶対用意していないに違いねえ。こうなったら、こいつを始末(ターミネート)する方法は一つだけだ。

 作戦を練った俺は、しゃがんでいたためとっくに痺れていた足を伸ばし、石巨人に向かって近付く。


「おい! 何する気だ?」

 そんな俺を見て、聡は思わず俺を呼び止めた。

「見れば分かるだろう。あのムカつくゴーレムをやっつけにいくに決まってるじゃねえか」

「無理すんなよ! あんなの勝てるわけねーって!」

 さっきの衝撃映像が聡の心にトラウマを植え付けたせいか、聡は俺の心配をしてくれた。だが、あいつを倒さなきゃ先に進めねえ。

「ふん、あいつのことだ。きっと何か策があるだろう。どのみち彼は、やつを倒しに行く決意が変えられまい」

 それに対して、広多は俺を阻止しようとしなかった。まだ少ししか話したことがない割には、俺のことをよく知ってるじゃねえか。

「そういうことだ。お前らは、あいつが背中の弱点を見せたら、攻撃する準備をしてくれ」

「お、おう……」

 気後れした聡はこれ以上何も言わずに、ただ俺の背中を見守っていた。

 愚かな石巨人を始末したい気持ちが勇気へと変わり、俺の背中を押していく。あいつとの距離が、少しずつ縮まっていく。ついにやつは俺の存在に気付き、さっきと同じ質問をしてきやがった。


「ワガウデハドコニアル?」

「てめえ、腕が欲しいのかよ? こっちは腕がねえんだよ、よく見てみろ!」

 俺は石巨人に接近している途中に、両方の腕を袖の中に隠しておいた。からっぽになった長いシャツの袖をぶら下げながら、俺はわざとらしく叫んだ。

 するとどうだろう。石巨人はこの事態を予想しなかったのか、何もできずにただ茫然としてやがる。

 へっ、やはりこの手は有効だな。この勢いでやっちまえ!

「てめえのそのでけえ腕は、俺にピッタリだぜ! 俺に譲れ!」

 俺は凄まじい殺気を発しながら、早い足取りでやつに接近する。やつは攻撃してくるだろうし、一応避ける準備はできているけど、やつはなんと背中をこっちに向けて、逃げていったぞ!


「コ……コトワル! ワレノタイセツナウデハ、ダレニモワタサヌ!」

 てめえ、よく言うぜ! 散々無実な生徒たちの腕を奪い取ったくせに!

 だが、これでチャンスができた。石巨人の背中にある弱点の核が、赤く光っている。やるなら今しかねえ!


「おい、あいつが弱点を出してるぞ! 早くやれ!」

 俺は後ろを振り向いて、仲間たちが聞こえるように大声で叫んだ。

「よし、その言葉を待っていたぜ! 行くぞ、広多!」

「ふん、言われなくてもそのつもりだ」

 聡と広多は、息の合ったタイミングで、同時に攻撃を仕掛けてきた。回転しながら前進する緑色のリングと紫色の鎌の刃が、石巨人の弱点に命中した。赤かった核も、その光が少しずつ弱まっていき、やがて黒くなる。力の(みなもと)を失った憎き石巨人も、足がふらついて倒れた。そして他の化け物と同じく、黒い霧となって散っていった。


「ふん、ざっとこんなものだな。他愛もない」

「ふー、思ったよりよえーな、こいつ。てっきりみんなここでやられるのかと思ってたぜ」

 石巨人を倒した二人は、余裕の感想を述べた。

「お前ら、ずいぶんと仲良くなったじゃねえか。初対面とは大違いだぜ」

 俺が少し冗談半分で二人をからかってみると、二人は同じタイミングで同じ返事をしてきた。

「「ふざけるな! 誰がこんなやつと……あっ」」

 まるでテレパシーでもしていたかのように、聡と広多はお互いを指さしながらそう言ったが、気まずさのあまりに二人は急に黙った。

「ははっ、ごまかしても無駄だぜ。まあ、それはさておき、そろそろゴールも近いし、気を引き締めていこうぜ」

 俺は袖に隠していた腕を外に出しながら、場の空気を和ませようとそう言った。

「そうですね。目標に近いからこそ、尚更注意を払うべきです。みなさん、くれぐれも油断はしないでください」

「うん! みんなで協力して、ここから生きて帰るんだもんね!」

 俺の意見に、賛成の意見を示す千恵子と菜摘。いつものことだけど、やはりこういう光景は心が暖まるんだな。

 そして俺たちは最後のステージに向かうべく、再び足を動かして前に進み始めた。

秀和「それにしても不思議だな。まさかここまで二人が仲良くなったとはな……絆の力ってすげえな」

哲也「そうだな。まるで君と僕みたいな関係じゃないか。喧嘩ばかりしているところを除いてさ」

千恵子「喧嘩しているのに、仲良しとおっしゃるのですか?」

秀和「『喧嘩するほど仲がいい』って言い方もあるじゃん」

菜摘「うんうん、確かに言えてる! 私の場合は、美穂ちゃんにセクハラされてるけどね~」(苦笑)

美穂「ちょっと菜摘、あんまり余計なことを言ってるとアタシ怒るわよ?」

菜摘「ひっ! だ、だって事実だもん!」

美穂「超能力で風を起して、菜摘のスカートを……」

菜摘「やめてやめて! 謝るからそれだけはやめてよ!」

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