紅緋
「暇だ」
若くして研究所の長となった、佐々木修二は退屈していた。研究所という名前にはなっているが、二世代前の定義とは全く異なっていた。二世代前の研究は、新しい事を発見・発明する特別な場所であった。このような特別な場所という意味では現代と二世代前の研究所は同意義に見えるがそうではない。現代の研究所とは、現在の世界が正しくない事を証明する要素を発見する唯一の場所となっている。そういう意味で特別だ。
「世界は完成した。」
これはの1世代前の世界の常識になっていた。しかしそれは間違いだった。たった一つのほころびが世界を侵食してゆき世界は滅びかけた。そして一世代前の
現代に戦争はなく、経済的な不安もない。そもそも経済の根幹にあった金というものがなくなった。
社会主義になったわけではない。
人類の英知はついに科学を不変の物へするに至った。
物理学では4つの力の統一理論が完成した。
タイムマシンや反重力なる物は実現しえないことが証明された。
夢がない?しかしこれが現実だ。深いため息を電話の呼び鈴がかき消す。
「研究所所長 佐々木修二、現時点より東京第2研究所は、国の管理下に置かれることが決定しました。この決定に一切の否定が許可されていません。否定を選択した場合、その時点を持ってあなたの役職を剥奪し、東京第2研究所内での研究活動を禁止します。ご了承ください。また所長の上に東京研究所総長(以下、総長)を新設し、総長の東京第2研究所到着後、総長の指示にすべてしたがってもらいます。ただし、自己の生命を著しく脅かす命令にはこの限りではありません。」
なんだなんだいきなり。しかし全く気にする素振りもなく電話の向こうの声は続ける。
「東京第2研究所のすべての所員には、3日前に発見され、先ほど回収が完了し現在運搬中の物体の解析を行ってもらいます。すでに人体への影響があると思われる報告が上がっています。慎重に解析を進めてください。健闘を祈ります。」
電話が切れてから30秒くらい呆気にとられていた。次の瞬間部屋の扉が開き、堅のいい40代の男が入ってきた。
「東京研究所総長の武田克己です。これから行われる解析は極秘の物です。故に東京第2研究所のすべての所員を効率的に監視する必要があります。そのために、この部屋を総長室兼所長室とします。次に研究所のすべての部屋に監視カメラを設置します。必要とされるモニターはこの部屋に設置します。また、モニターの盗撮を防ぐため窓をすべてコンクリートで塗り固め、外壁にも磁気シールド等を施します。以上が総長としての最初の命令です。意見はありますか。」
ありません、というしかないだろう。と思いながらも返事をする。
武田は続けた
「それでは次にこれから行う解析の諸注意を決めます。まずはじめに、これから解析を行う物体を、物体Xまたは単にXと呼びます。次に解析実験は24時間を3交代せいで行います。解析実験中は外出を一切禁止します。すべての生活をこの研究所にて行ってもらいます。実験報告は交代時毎に提出する事、以上です。なにか意見はありますか」
佐々木はただありませんと返事をした。
その日の内に研究所の大改装は終了した。
実験1
物体Xの表面についている物質の解析
実験使用器具
無菌室において作られた、摩擦を最小限にした人口繊維の用いた刷毛;ハッピネス
無菌室において作られた、ガラス製の特殊容器;ノア
手順
物体Xの各表面を20に分割する。
その一部分をハッピネスを使っての物体X表面についた土をとる。
土をよく混ぜ、さらに100分割する。
100個の平均をとり、その値をそ一部分の値とする
結果
微生物は平均的なものしか発見されず。
土の成分は発見された場所の土だった。
実験2
実験1では取り除けなかったものの解析
結果
木の化石は
「現在までで分かったことは、物体Xは投棄されたものではないこと」
実験3
表面の切削
使用器具
ヤスリ
ノア
結果
金属よりもろく岩よりかたい、
この実験中、幻覚をみるものが続出。検討の結果、マスクでは防ぎきれなかった微細な物体Xの粉塵が体内に入ったためか。幻覚症状はいずれも軽度ですぐに回復。幻覚症状につての実験が必要
実験4
モルモットを使っての実験
物体Xを混ぜた餌を投与
時間に違いはあれど、すべてのモルモットが消失。本当に消えてなくなる
物体Xを混ぜた餌の投与を感覚を開ける
消失にかかる時間の増加
消失したモルモットの再出。
数日後部屋の外から発見される。
移動した者が見当たらないことから、モルモット自身が移動した。
DNA検査から消失したモルモット本人だと確認
物体Xが消失が関係している可能性
フンが見当たらないため、
実験5
サルを使っての実験
混乱するサルが続出
怪我をするサル
重傷をおうさる
実験6
物体Xの携帯実験
物体Xから10グラムの破片を作成。
それを
結果携帯した被検体のすべてが同じような風景みた
東京第2研究所の所員全員が理解した。
「互いに干渉しあわない別の世界が確かに存在する。」
総長のその一言が所員たちの科学者魂に火をつけた。私もまたその一人だ。