終電間際の解像度
掲載日:2026/09/02
記憶のレンズが絞られる瞬間
世界がどれほど騒がしくても、去り際のほんの数秒だけ、特定の存在だけが恐ろしいほどの鮮明さを持って胸に迫ることがあります。群青色に染まるホーム、言葉を飲んだ喉の奥、そして二人の間にだけ流れる静寂。あの日、終電のベルが鳴り響く中で確かに感じた「解像度」の記録です。
終電間際の解像度
黄色の線を踏み越えないように立ち尽くす
きみの吐く息だけが 白く、鮮明だった
居酒屋のぬるい熱気も
改札を抜ける雑多な靴音も
すべてが急に遠のいていく
「じゃあね」の一言を告げる唇の小ささ
夜風に揺れた髪の香らせる静けさ
あの群青のホームで
どうして僕たちは
世界に二人きりみたいに輪郭を深めてしまうのだろう
明かりの落ちた電車の窓に
重なる横顔をぼんやり見つめる
本当は抱きしめたいこと
明日も会いたいと言えないこと
終電のベルが叫ぶたび
言葉にできなかった想いばかりが
やけに鮮やかに、僕の胸を刺す
作品をお読みいただき、ありがとうございます。
終電間際の独特な静寂や、世界から取り残されたような二人だけの空気感を描きたくて筆をとりました。言えなかった言葉や揺れる感情の「解像度」が、少しでも届いていれば幸いです。




