閑話 RAVEN’S NEST
RAVEN’S NESTは国内トップクラスの人気を誇るプロゲーミングチームであり、競技シーンだけでなく配信や動画投稿、イベント出演など幅広い活動を行う巨大チームとして知られていた。所属メンバーの多くが人気配信者でもあり、ゲーム業界では「選手をスターにするチーム」として高い知名度を持っている。
大会終了から一時間後。
東京都内にあるRAVEN’S NEST本部。
会議室の大型モニターには、先ほどまで行われていた決勝戦の録画が映し出されていた。
映像の中では神谷蓮が桐生蒼真との最終セットを戦っている。
部屋にはオーナーの鷹宮蓮司をはじめ、格闘ゲーム部門エースの九条迅、人気配信者の夜月ハル、小鳥遊ひまりらが集まっていた。
録画が終わる。
しばらく沈黙。
最初に口を開いたのは夜月だった。
「何回見ても意味分かんねぇな」
「なんで二敗から勝つんだよ」
小鳥遊も頷く。
「しかも最後だけ急に攻めるんだもん」
「絶対面白い人だって」
九条は腕を組んだままモニターを見ていた。
「急じゃない」
「決勝中ずっと準備してたんだろ」
短い一言だったが、部屋の全員が納得してしまう。
実際にそう見えた。
試合をするたびに相手を理解し、最後に全てをぶつけたような戦い方だった。
その時。
マネージャーが資料を持って入ってくる。
「神谷蓮の情報、ある程度まとまりました」
「高校二年生、無所属、配信活動ほぼなし、大会実績もほぼありません」
夜月が吹き出した。
「そんなことある?」
小鳥遊も笑う。
「逆に怖いんだけど」
鷹宮は資料を受け取りながら言った。
「だから価値がある」
全員の視線が集まる。
オーナーは神谷蓮のプロフィールを見つめたまま続けた。
「強いだけじゃない」
「人を惹きつける」
「こういう選手はそう簡単に出てこない」
そして資料を閉じる。
「連絡を取ろう」
即答だった。
九条が小さく笑う。
「本気ですね」
鷹宮も笑った。
「当たり前だろ」
「今年一番欲しい選手なんだから」
会議室のモニターには、優勝インタビューを受ける神谷蓮の姿が映っていた。
まだ本人は知らない。
大会優勝によって、自分を取り巻く環境が大きく動き始めていることを。
そしてその中心にいるのが――RAVEN’S NESTだった。




