第7話 女王と王者
PHOENIX 10-10 NOVA。
開幕戦の勝敗は大将戦へ委ねられた。
大型モニターに映し出される二人の名前。
皇恒一。
黒瀬詩音。
会場から今日一番の歓声が巻き起こる。
『きたあああああ!!』『開幕戦からこのカードかよ!』『黒瀬いけ!!』『皇負けるな!!』
両者がステージへ上がる。
皇は変わらず無表情。
黒瀬も静かだった。
互いに余計な言葉はない。
ヘッドセットを装着し、キャラクター選択が完了する。
会場の大型モニターに試合画面が映し出された。
「大将戦、BO5です!」
実況の声と共に試合開始。
一本目。
序盤は黒瀬が完全に主導権を握った。
長い武器による牽制。
絶妙な距離管理。
近付こうとする皇を何度も押し返す。
攻めるたびに迎撃される。
体力差は徐々に広がっていった。
最後は黒瀬が画面端で攻め切る。
KO。
『黒瀬先取!!』
『女王つえええ!!』
会場が沸く。
しかし皇は表情を変えない。
二本目。
ここから王者が対応を始めた。
無理に攻めない。
飛び込まない。
一歩ずつ距離を詰める。
黒瀬の癖。
タイミング。
技の振り方。
全てを観察する。
そして一度触る。
そこから流れが変わった。
差し返し。
コンボ。
起き攻め。
再び差し返し。
黒瀬の体力が一気に消し飛ぶ。
KO。
一対一。
『これが皇か……』
『対応力やばすぎる』
三本目。
試合はさらに高度な読み合いへ突入する。
黒瀬が牽制する。
皇が避ける。
黒瀬が置く。
皇が差し返す。
ほんの数フレームの攻防。
だが観客は誰も目を離せない。
互角のまま最終ラウンドへ。
残り体力は僅か。
そこで皇が前へ出た。
黒瀬も迎撃する。
だが皇はその行動を読んでいた。
技を空振らせる。
即座に反撃。
最大コンボ。
KO。
「皇選手王手です!!」
会場が揺れる。
『王者!!』『あと一本!!』
追い詰められた黒瀬だったが、ここで終わらない。
四本目。
今度は自ら前へ出た。
中距離戦だけでは勝てない。
そう判断した黒瀬は攻めを選択する。
読み合い。
暴れ潰し。
投げ。
コンボ。
全てが噛み合った。
皇も対応するが僅かに届かない。
KO。
二対二。
会場は総立ちだった。
「フルセットです!!」
実況の絶叫が響く。
開幕戦。
大将戦。
最終試合。
最高の舞台が完成していた。
そして運命の最終戦。
両者一歩も引かない。
体力は互角。
時間も残り僅か。
会場全体が息を呑む。
先に動いたのは黒瀬。
長いリーチを活かした牽制。
しかし皇は待っていた。
ほんの僅かな隙。
その一瞬を逃さない。
完璧な差し返し。
コンボ。
さらに起き攻め。
最後の読み合い。
黒瀬が投げを警戒する。
その瞬間。
皇の下段が通った。
KO。
勝者。
皇恒一。
PHOENIX。
会場を揺らす歓声が響き渡る。
『うおおおおおお!!』『王者だ!!』『黒瀬も強かった!!』『開幕戦から神試合!!』
PHOENIXが開幕戦を制した。
だが敗れた黒瀬にも惜しみない拍手が送られる。
「負けはしましたが黒瀬選手も素晴らしかったですね」
村瀬が静かに語る。
「ただ、それでも最後に勝つのが皇恒一です」
その言葉に観客もコメント欄も納得するしかなかった。




